壮大なサウンドと多彩なエディット機能で一歩先を行くソフトシンセ『Nave』でポストダブステップを作ってみた

ドイツを代表する電子楽器ブランドWaldorfからリリースされたソフトシンセ「Nave」。ここ最近はハードウェアが話題に上ることの多い音源において久々に気になるソフトシンセ「Nave」でトラックを制作して、実際の制作にどのように活用できるかを紹介します。

ここでは音楽制作ソフト「FL Studio」の連載記事で作ったトラックのドラム以外の全てのサウンドをNaveに変えて、ポスト・ダブステップ風のトラックにリミックスしてみます。ちなみにポスト・ダブステップとは、ダブステップが誕生して以降にその他のクラブミュージックなどと融合した音楽のことで、代表的なアーティストとしてJames BlakeやMount Kimbieなどが挙げられます。彼らのクオリティには及びませんが、雰囲気を実感してもらえる程度のトラックには仕上げたいですね。

今回も製品の即戦力具合もお伝えするために、Naveインストール後すぐにトラックの制作に取り掛ります。使用機材は、新しいバージョンがリリースされたばかりのFL Studio 12、ドラム以外の音源にNave、そしてMIDIキーボードとオーディオインターフェイスの必要最低限の機材です。

リミックスを始める前に前回制作したトラックを聴いてみましょう。このやんちゃなトラックがNaveのサウンドでどのくらい変化するのか楽しみです。

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このトラックをビートだけにして、Naveのサウンドを加えてリミックスしていきます。

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丁寧に作り込まれた高級感あふれるサウンド

Naveの音質の特徴や自分の音楽との相性を理解するために搭載されているサウンドをサラッと聴いてみると、映画音楽などにも使える丁寧に作り込まれたサウンドが多い印象です。これらのサウンドからまずは、James Blake系のポスト・ダブステップの特徴ともいえる哀愁漂うピアノやエレピのサウンドとして、深いリバーブがかかったような「Nave Piano」をチョイス。

#hyperlapse Nave Piano

soundropeさん(@soundropecom)が投稿した動画 –

Nave Pianoだけではメインのサウンドとしてインパクトに欠けるので、エレピ風の「Dream Keys」を加えます。

#hyperlapse Nave-Dream Keyssoundropeさん(@soundropecom)が投稿した動画 –

これら2つのサウンドを加えたトラックがこちらです。トラックの前半はNave Pianoだけで、後半はNave PianoにDream Keysを加えています。この2つのサウンドだけでポスト・ダブステップ感が出て、基のトラックとは全く違った印象です。

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次にレコーディングしたピアノとエレピと相性が良さそうなサウンドを探します。レコーディングしたサウンドは周波数のレンジが広いので、その隙間を埋めるサウンドを選ぶ必要があります。ここではディストーションのようなエフェクトがかかったベルのサウンド「Thunder Gods」がしっくりきたので、こちらをチョイス。

#hyperlapse Nave-Thunder Gods

soundropeさん(@soundropecom)が投稿した動画 –

フィルターだけの簡単な調整でサウンドの鳴りが良くなる

現代的なソフトシンセの特徴でもある音域、定位のレンジを目一杯使った贅沢なサウンドをたくさん搭載したNaveでは、トラックを重ねていくことで以前のコラムで紹介した「こってり問題」が発生して、トラックに隙間がなくなり各サウンドが埋もれてしまいます。これを手軽に解消するためにフィルターで各サウンドの周波数帯をコントロールして重なり合う帯域を調整します。NaveのフィルターはXYパッドのようにコントロールできるので、サウンドのスウィートスポットを見つけるのがとても簡単です。

nave-ui

本来は制作の最終段階で詳細なミックスを行う必要はありますが、今回はそこまで作り込まないのでこの程度の調整で十分効果を発揮してくれます。これでベースを入れる隙間ができたので、ベースを加えます。

ポスト・ダブステップのトラックでは、いわゆるダブステップで使われるワブルベース(当コンテンツ上部のSoundcloudのトラック”FL Studio – Fixed”で使用しているベースのこと)といわれるベースはあまり使用されません。ポスト・ダブステップではベースを奥の方で鳴らしてトラック全体のグルーヴを生み出すといった感じで、分かり易いベースラインが存在しないのが特徴でもあります。

ここでは、ポスト・ダブステップのベースのマナーに準じたサウンドとして「OSC Bass」をチョイス。ベースを加えることでサウンド全体に厚みが増して、トラックが引き締った印象です。

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最後に作成した各サウンドのパターンをFL Studio上で並べてトラックを構成します。だいぶFL Studioでの作業も慣れてきました(笑)。

FL Studio 12

そして完成したトラックがこちら。リミックス前のトラックがこれだけ変わりました。

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一音でトラックを印象づけられるNave

Naveを初めて聴いたとき、丁寧に作り込まれた良い意味で難解なサウンドだなと感じました。とにかくサウンドの存在感が大きいなと。それならば、音数は少ないけど一つ一つのサウンドがしっかりと作り込まれているポスト・ダブステップのトラックで使うとハマるかもと考え制作してみましたが、Naveの存在感のあるサウンドのおかげで少しはそれっぽいトラックに仕上がりました。

トラックの制作時間は3時間程度で、各サウンドの作り込みは行っていません。フィルターの調整だけでこれだけのサウンドに仕上げられる手間いらずのNaveですが、他のシンセと同様にたくさんのパラメータが搭載されているので、サウンドの詳細な作り込みも可能です。しかも波形の情報はグラフィックで表示され、パラメータの調整で何が変わったのかが視覚的に分かるので、シンセに詳しくなくても音作りをけっこう楽しめます。

今回はポストダブステップのトラックへリミックスしたので、あまり派手なサウンドは使用していません。しかし、Waldorfの代名詞ともいえる音源方式「ウェーブテーブル」を採用したNaveには、この他にもたくさんのユニークで高級感あふれるサウンドが搭載されています。以下に挿入されているSoundcloudでNaveの代表的なサウンドを聴くことができるので、こちらも参考にしてみてください。

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Naveの豊潤なサウンドは、一音でトラックを印象づけられるサウンドが豊富に搭載されているので、アンビエントや映画音楽、よりテクニカルで雰囲気のあるクラブミュージックなどの制作に特にオススメです。

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また、NaveはiPadアプリバージョンもリリースされています。こちらもiOSアプリとは思えないほどのサウンドクオリティなので、ぜひチェックしてみてください。

Nave
カテゴリ: ミュージック
現在の価格: ¥2,400

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撮影機材:IK Multimedia / iKlip Grip