アナログ人気を牽引したシンセの進化系「MiniBrute 2」。選りすぐられたパラメータとパッチングを駆使した音作りでシンセの真髄を味わう

昨今のモジュラーシンセサイザーの世界的大流行に端を発し、より柔軟でディープな音作りができるシンセの需要が高まっています。そのような需要に応えるべく、Artruriaからセミモジュラータイプのアナログシンセ、MiniBrute 2(鍵盤付きタイプ)と、MiniBrute 2S(モジュールタイプ)が発売されました。

前モデルのMiniBruteには搭載されていなかったシーケンサーや、大注目なパッチベイの搭載により、サウンドメイキングの柔軟性が向上しました。単体でのパッチングはもちろんのこと、外部のモジュラーシンセとより深いレベルで連動可能なMiniBrute 2は、音作りはもちろん、パフォーマンスの幅も格段に広がります。

ここでは、実際にいくつかのサウンドを作り上げる工程を紹介しながら、その機能を説明していきます。

ソリッドなリードをサウンドメイキング

まずはデフォルトの状態から、音作りを行います。デフォルトの位置を覚えて、いつもその状態から始めると、シンセサイズの上達にもつながります。ここでは、パッチベイを使わずにオーソドックスな手法で、シンプルなリードを作っていきます。

2機のVCO(オシレータ)を使い、FMやMetalizer(三角波に対して作用)などのパラメータを操作して、音の厚み・広がり・メタリック感を出していきます。最後に青く色付けされているパラメータのBrute Factorを調整しダーティーに仕上げてみます。

多くのパラメータはオーソドックスなものですが、MetalizerやBrute Factorなど他のシンセでは見られない特殊な機能も搭載されており、個性的なサウンドを作ることができます。サウンドの透明感や存在感は、やはりアナログならではです。

シーケンサーと組み合わせて即興フレーズ制作

1. ACID BASS

今度はパッチベイを使用して、いわゆるTB-303のサウンドを作っていきます。Cutoff・Resonance・FM・Att 1 > Cutoffの4つがサウンドを変化させる上で重要なパラメータです。アルペジエーターを使って再生させ、それらのパラメータをグリグリ動かし演奏してみます。

MiniBrute 2には、パラメータの設定やパッチングの例を画像で確認できる“CookBook”と呼ばれるレシピ本が同梱されています。この章では“CookBook”に掲載されている設定を元に解説を進めていきます。

パラメータの効き具合も劇的で、クリーミーなサウンドを作り出すことができます。曲作りの際には、上記の4つのパラメータを調整し演奏することで、無限の組み合わせが考えられます。

通常AD EnvelopeはAMPに作用しますが、ここではADSR EnvelopeをAMPにパッチングしてみました。このように柔軟に結線できるのが大きな特徴です。基本のレシピを元にさらなる結線を試して、ぜひオリジナルなサウンドを作り出してみてはいかがでしょうか。

2. GARAGE BASS

こちらも昔からあるクラシックなサウンドです。ADSR Envelopeのパッチングにより、特徴的なサウンドが作られる様子をご覧いただけます。シーケンサーをリアルタイム入力する方法も併せてご紹介します。

この動画では、KORG社のvolca beatsからビートを鳴らしています。MiniBruteパッチベイのシーケンサーセクションに装備されている”Sync Out”と、volca beatsの”Sync In”をパッチングすることで、動画のようにテンポや再生/停止の同期が可能になります。

フィルターの調整により、サウンドが大きく変化したことが、おわかりいただけたと思います。パネルの配置がスッキリとしているため、このような微妙なパラメータの調整も楽しく感覚的に行えます。また、シーケンサーのリアルタイム入力もとてもシンプルに行うことができます。

もしも演奏をミスした場合は、シーケンサーを走らせたまま”Tap / Rest”ボタンを押し続けることで、直前に入力したステップを消去できます。納得のいく演奏ができるまで、シーケンサーを止めることなく連続して録音ができるのも大きな魅力です。

3. Stab サウンド

クラシックなテクノでもよく用いられるStabサウンドを作っていきます。Stabは通常和音であるため、VCO 1に馴染むようVCO 2のTuneを調整して、気持ちの良いハーモニーを生み出すスポットを見つけることが重要です。ここではシーケンサーのステップ入力の方法も併せて紹介します。

パッチベイの”INVERTER”セクションを使用して、LFOの信号を反転しました。パッチングにより、通常のシンセでは実現できないことが可能となるので、柔軟な結線によるサウンドメイキングの可能性を感じます。

先ほどの動画とは異なり、今度はシーケンサーのステップ入力を行いました。途中で何度か”Tap / Rest”ボタンを押して休符の入力を行なっていますが、リアルタイム入力とは違うシーケンサーの楽しみを感じることができます。複雑なシーケンスパターンをリアルタイム演奏するのは容易ではありませんが、ステップ入力では1ステップごとに段階的な入力が行えるため、複雑なパターンも思い通りに作成することができます。

モジュラーとの組み合わせで広がるパフォーマンスの可能性

モジュラーシンセとの組み合わせにより、MiniBrute 2のポテンシャルを無限大に引き出すことができます。ここでは、同社のユーロラック規格のモジュラーラックRackBruteにモジュールをセットし、MiniBrute 2Sとのセットアップを構築してみました。これにより、RackBruteとMiniBrute 2をリンク対応ユニットとして組み合わせることが可能です。

MiniBrute 2Sは鍵盤の代わりに、同社のヒット商品BeatStep Proを彷彿とさせるシーケンサーが搭載されています。MiniBrute 2では1つのシーケンスのみ録音可能なのに対し、MiniBrute 2Sは最大3レイヤーまで入力できます。よって、3つのメロディーを同時に走らせることが可能なので、より緻密なシーケンスが構築できます。

なおRackBruteは、システムを折りたたんで持ち運ぶこともできるので、モバイル性が向上しとても便利です。

MiniBrute 2Sの”Sync Out”を外部のモジュラーシステムの”Gate In”に結線することで、BPMが完全にシンクし、MiniBrute 2Sを再生/停止すると、外部モジュラーも再生/停止します。ここでは、2つのシーケンス・パターンを切り替えながら、サウンドを効果的に可変できるパラメータを操作して、パフォーマンスに変化を加えてみます。

MiniBrute 2S単体でも十分な可能性を秘めていますが、外部のモジュラーシステムと組み合わせることで、さらにその可能性が広がります。

同社のBeatStep Proをベースにしたシーケンサーは、他では見当たらないほど強力です。例えば、SEQ1でピッチ、ゲート、ベロシティ、プレッシャーをコントロールしながら、SEQ2とSEQ3でその他のコントロール(ゲート、CV、ピッチ、LFO、エンベロープ)を行うことができたりと、世界中のモジュラーマニアがArturia社のシーケンサーに魅了される理由がわかります。

MiniBrute 2のフィロソフィー

最近の一般的なシンセサイザーでは、作成した音色の保存・管理が可能です。しかし、アナログ全盛の時代に作られたシンセにはそのような機能がなく、音色の保存はできませんでした。テクノロジーを用いて利便性の向上を追求する現代において、音色の保存機能を持たないMiniBrute 2は、シンセによる音作りの楽しさを原点に戻って楽しんでほしいという、Arturia社の強い意図が見えます。

昨今のモジュラーシンセ人気に伴ってモジュラーに興味を抱く人が増えてきたように感じます。ただ、始めてはみたいけど、どこから手をつけていいのかわからないという声もよく聞きます。パッチングが可能なMiniBrute 2ではモジュラーシンセ特有の知識も必要になるため、まずはMiniBrute 2からはじめて、理解が深まったら自分に必要なモジュールを買い足していくという流れは無駄がなく、賢明な選択となることでしょう。

同梱されている”CookBook”は、MiniBrute 2のパッチング例、約40が色付きで図解されており、シンセシスへの理解を深めるために大変役立ちます。基本の音作りを繰り返し練習して理解を深めていくことで、深みのある曲作りがきっとできるようになるでしょう。

モジュラーシンセをこれから始めてみたい方、すでにモジュラーシンセを始めている方、それらすべての方にオススメできるMiniBrute 2。シンセシスの無限の可能性をぜひ体験してみてください。

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