今回は実践編!Pioneer DJ『TORAIZ SP-16』を使ったトラックメイキングとパフォーマンス

DJ機器の老舗メーカーPioneer DJが初めて発売した楽器、TORAIZ SP-16(以下SP-16)。前回はSP-16でどんなことができるか紹介してきましたが、今回はSP-16を使って簡単なトラックの制作と演奏を取り上げます。SP-16の仕様や概要については前回の記事をご参照ください。また、こちらの特集ページでは、SP-16のチュートリアル的な内容を含んでいますので「とりあえず実際の演奏を見たい」という方はこちらの動画をご覧下さい。

ビートメイクとループの加工

それではさっそくトラックメイキングしていきましょう。…といっても、無音の状態から何をやっていいのか見当がつかないかも知れません。今回はiPadで鳴らしたシンセパッドをSP-16でサンプリングして、そこにビートやベースやらを足していきます。

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今回使用するサンプルは上の図のようになりました。iPadからサンプリングしたパッド・シンセを除き、全てSP-16にプリインストールされているLoopmaster社製のサンプルを使用しています。それでは始めてみましょう。

無音の状態からビートを打ち込むよりも、こうしてビートを入れるきっかけになるものを先に作っておいた方が、ビートを打ちやすくなるでしょう。四つ打ちのキックを入れてみると、途端に何かできそうな気がしてきましたね。

SPー16の特徴として上げられるのが、打ち込んだビート1音1音のパラメーターを細かく調節できるステップモジュレーション機能。この機能でフレーズサンプリングしたループも細かく加工することができます。

この動画ではドラムループを読み込んで1音毎にインサートしたフィルターエフェクトのかかりを調節。その気になれば鬼のように細かい作り込みも可能です。

メロディーを奏でる

さて、ビートが組めたら次は音階のある楽器を入れていきましょう。まずはビートにあわせながらベースを打ち込みます。この場合はフレーズを弾くと言うよりパーカッシブなノリを与えるようなベースラインにしました。SPー16で音階のあるフレーズを打ち込むには、パフォーマンスパッドのモードをSCALEにします。

打ち込んだベースは、ベースのサンプルを開き、トリガーシーケンスと呼ばれるエリアで確認します。このトリガーシーケンスは面白い機能を持っていて、1音だけを微調節したり打ち込んだフレーズ全体をずらしたりできます。

次は隠し味程度に、刻んだシンセのプレーズサンプリングを追加。パッドをSLICEモードにして再生開始位置を変えたり、パッドを押す時間を長くしたり短くしたりします。こうして2小節のループが完成しました。

展開を作る

さて、ここからは作成したパターンを複製してバリエーションを増やし、展開を作っていきます。こうしたエレクトロニックミュージックの場合、メロディーやコードを変化させて展開を付けるとポップスの出来損ないみたいになりがちです。そのため、これまでで作成したループを最大の音数として考え、そこから音数を減らしていく「音の引き算」をして展開を付けていきます。

この動画では、SLICEモードを使って最初にサンプリングしたシンセパッドをパフォーマンスパッドで細切れにしたり、ビートの符割を半分に減らしながら、最初作成したループに2つのパターンを追加します。

さて、こうして3つのパターンができましたが、再生しながらこれらのパターンを切り替えると、やや唐突な感じがあると思います。こういった違和感を解消する方法はいくつかありますが、この動画では一つのアプローチとして長めの効果音を入れる方法を解説しています。

次からはSP-16のアレンジメント機能を使ってパターンを再生順に並べていきます。タッチディスプレイ上部のアレンジャーアイコンをタップして、ARRANGEMENT機能で並び替えることで曲の展開を作れます。

このようにして作成したトラックがこちら。ただSP-16を再生したものを録音するのではなく、実際に演奏を加えたりしながら筆者宅のAbleton Liveに録音しました。本文中ではサンプリングしたシンセパッドをSLICEモードで打ち込んでいましたが、ここではその打ち込みは使用せず録音時にパッドを叩いて演奏しています。

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作成したトラックを使ったパフォーマンス

さて、これからはこの作ったパターンを使って実際にパフォーマンスしました。ここでもシンセパッドをSLICEモードにしてリアルタイムにパッドを叩いています。

また、SP-16は同期せずスタンドアローンで動作させていますが、こちらではパターンの切替などの展開は手動で行っています。アレンジャー機能を使うと決まった長さで展開が変わるので、どこか決め打ち感が出てしまいますが、手動でパターンを切り替えるとより自然な流れになりやすいです。

まとめ

さて、こうして2回にわたりSP-16を使い倒してきました。さすがDJ機器メーカーだけあってSP-16の操作感もレスポンスが良くなるべく再生を止めなくて済むので、リアルタイムの演奏がしやすい一台です。

操作していて一番面白かった部分は、1ステップ毎にサンプルやエフェクトのパラメーターを設定出来るステップモジュレーション。他の機材にはあまりないユニークな機能で、思った以上に様々な場面で役立ちます。

一方、Pioneer DJ初の楽器ということもありソフトウェア部分はまだ発展する余地があるように感じました。それはPioneer DJでも認識しているそうなので、今後のアップデートでどう進化していくか楽しみですね。

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