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アーティストが教える音楽制作術 Vol.1:『TORAIZ SP-16』と『AS-1』だけでテクノ・トラックの制作にチャレンジ

昨今の音楽制作の流れを見ていると、何でもかんでもDAWで作る!という訳でもない流れも出てきて、作り方の多様化を感じることも多いです。この記事はそうした流れもあるなか、PCを使わずにPioneer DJの楽曲制作機材=TORAIZシリーズだけを使ってテクノを作ってみよう、というメイキング企画です。

シーケンサー内蔵サンプラーの「SP-16」とアナログ・シンセサイザー「AS-1」については、これまでも取り上げてきましたが、今回はPCを使わない制作記事なので下記のレギュレーションが設定されています。

  • PCは使わず、SP-16とAS-1だけで制作する
  • SP-16・AS-1ともに内蔵プリセットを使用する
  • AS-1はプリセットに含まれたシーケンスを使用する

これはSP-16・AS-1ともに内蔵プリセットも出来が良いので、それらを活かしたトラックメイキングをしようというコンセプト。セットアップは下記の図のように至ってシンプルです。それでは動画と共にそのメイキングに迫ってみましょう。

SP-16で土台となるビートを作成

トラックを作る時に、どこのパートから手を付けるのか、なかなか難しい所です。僕も自分のイベントのAbleton Meetup Tokyoで「曲作り、どこから始める?」というパネルディスカッションをやりましたが、登壇者の皆さんはいい意味でバラバラでした。

ドラムループをサンプリングしてそこから肉付けしたり、プラグインやモジュラーで何となく出来た良い感じの音を発展させたりと、そういったループから作り始める方が多かったような気がします。

今回は、SP-16内蔵の”Demo 02 Dubstep Trap”プリセットを使用しました。このプリセットはサブベースの音がテクノに使えそうだったので、制作のスタートポイントを「BPM140のダブステップのプリセットをBPM125のテクノにする」所に設定しました。そのため、最初にキックとベースから作り始めています。

ここでは最初に基本となる1小節ループを作り、その後に4小節のループに伸ばしています。1小節ループだけだと単なる繰り返し感が強いので、4小節に伸ばしたループの4小節目のリズムパターンを変えたり、ベースやシンセのコードを2小節のループにしています。

また、トラックを作っていて「ループは出来たけどその先どうしよう…」と悩むことがあると思います。そういう時にさらに新しいパートを加えたり、全く違うビートを作ったりしていくと、段々と方向性を見失い完成が遠のいてしまう事もあるでしょう。

そういう時にオススメな手法が、音数を減らすことです。ここからは上部の動画で作った4小節ループを、最も音数の多いパターンとして、そこから音数を減らしたパターンを複製していきます。

とはいえ、ただ音数を減らしただけでは物足りないときもあると思います。そんな時に僕がよくやるやり方は「音数を減らした後にちょっとだけ足す」です。下部の動画では例として、別のキックを足したり、オープン・ハットを8分音符で鳴らしたりしています。

ファームウェアv1.4から、液晶ディスプレイにシーケンスの全景が表示されるようになり、シーケンスのエディットが以前より大幅に楽になりました。

AS-1のパッドシンセをサンプリングして加工

さて、基本的なビートが出来上がったので、ここからSP-16とAS-1を連携させて、AS-1のパッド・シンセをSP-16で加工していきましょう。この2台を連携させるには外部ミキサーは不要で、SP-16ではトラックを下の図のように設定しています。

AS-1のプリセットは、F2 P37 “PD SURVIVOR”を使用しています。このプリセットのシーケンスは4小節ループなのですが、キックが入っている箇所では最初の1小節をループさせ、内蔵エフェクトのフィルターを併用してミニマルなフレーズに加工します。

ここではステップシーケンサーの要領で、フィルターのCUTOFFパラメータを、1ステップ毎に変えて入力しています。入力後に、フィルターのGLIDEパラメータを変えることで、音の立ち上がりをフニャッとした感じに変化させています。

また、キックが鳴らないブレイク部分では、対照的にサンプリングした4小節ループをそのまま発音しています。

上部の動画では、SP-16のファームウェアv1.5から追加されたLive Samplingという機能を使用しています。これはいわゆるルーパーで、サンプリングすると自動的にサンプルがスライスされます。

SLICEモードでサンプルを、リアルタイムで大胆に加工出来るユニークな機能です。今回はその機能を使用していませんが、スタジオでもパフォーマンスでも活躍しそうな機能です。

AS-1のリード・シンセをリアルタイムに操作しながら録音

さて、ここまでできたらリード・シンセを入れます。ここで使うAS-1のプリセットはシーケンスがテクノっぽいF2 P27 “BA Terminator Seq”。

このリードシンセは、曲の展開に合わせて音色を変化させたいのですが、それを逐一SP-16にサンプリングするとテクノらしいフィジカルさがなくなってしまいます。

そのため、この動画ではあらかじめアレンジャーでトラックの構成を作ってから、リード・シンセのパートだけリアルタイムに操作して音色を変えながら録音しています。

あらかじめ構成を組んでおけば、録音したテイクがイマイチでも新たなテイクの録り直しが簡単です。

制作を終えて…

ここまでSP-16とAS-1だけでテクノを作ってみましたが、実際にやってみるとSP-16とAS-1のコンビネーションが良く、触っていて楽しいのが印象に残りました。特にAS-1は、プリセットを495種類内蔵=シーケンスも同数収録されている訳で、どれを使うかとても迷いました。しかし、逆に考えてみると曲の作り始めやアイデアに煮詰まった時にとりあえずAS-1内蔵のシーケンスを色々鳴らしてみる、というDJ的な使い方もできると思います。

また、ここまでの動画を見るとDAWでも同じ事ができると思う方もいることでしょう。確かに可能ではあるのですが、DAWは汎用性がある分結線などのセットアップやコントローラの設定などが煩雑になり、実際に音を出して制作するまでの時間がかかります。また、視覚的情報が多い分「もっと何か出来るんじゃないのか…」と振り回されることもあります。

SP-16とAS-1の組み合わせはセットアップが簡単で、DAWほど色々なことができない分、制作にフォーカスできるのもメリットです。僕も老眼が入ってきてPCの細かい画面が見辛くなってきたのもありますが笑、敢えてDAWを使わない制作はPC周りのストレスにも悩まされず、純粋に音を出す楽しさを味わうことが出来るでしょう。

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