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アナログシンセ『AS-1』一台だけでどこまでできるか?!DAWとエディターソフトを活用した制作術に迫る

Pioneer DJがDave Smith Instrumentsとコラボして産み出した同社初のシンセサイザー=TORAIZ AS-1。今回は音源にこのAS-1だけ使ってトラックを作ってみよ、とのミッションが下されました。果たしてこの一台だけでどこまで出来るのでしょうか?動画も交えながらその模様をお届けしたいと思います。

使用機材とセットアップ

ここまで読んで、単音しか出ないAS-1でトラックの制作は無理じゃないの?と疑問に思う方もいるでしょう。当然のことながら一度に全てのシーケンスを鳴らしながら制作する事はできないので、DAW(Ableton Live)に1トラックずつ多重録音しながら進めていきます。

セットアップとしては、同期やMIDIの通信用にコンピューターとAS-1をUSBで接続して、AS-1の音声出力は直接オーディオインターフェイスに接続しているシンプルな構成です。打ち込みにはAS-1内蔵のキーボードを使います。

また、AS-1本体だけでも全てのパラメーターをコントロールする事はできるのですが、流石にそれだけで音作りをするのは大変なので、コンピューター上で動作するAS-1のエディターソフトを使用します。このエディターソフトはこちらからダウンロード可能です。

一方でLive内部は、このスクリーンショットのようにAS-1など外部音源との連携にLive内蔵のExternal Instrumentsがロードされただけの状態から始めます。External Instrumentと同等の機能は他社製DAWにも搭載されている事が多いので、Liveを使っていない方でも同じような事は出来ると思います。

External Instrumentsの設定では、MIDIのルーティングを設定する”MIDI To”でAS-1のポートを選択し、オーディオのルーティングは”Audio From”でAS-1から音声が来ているポートを選択します。

次にLiveとAS-1のBPMやタイミングを揃えるため同期の設定をします。Liveの環境設定を開き、Link/MIDIのタブからAS-1の同期のスイッチをオンにします。AS-1の方ではGlobalボタンを押して6. MIDI Clockを”Slave“にしましょう。これでLiveを再生するとAS-1も追随して再生されるようになります。

セットアップは以上になります。正しく設定されていると、AS-1の内蔵キーボードを押すとLiveのミキサーから音が出てくるはずです。それではトラックメイキングを始めましょう。

AS-1でドラムの音を作る

それではまずドラムのサウンドを作っていきましょう。ここからの動画はキック・スネア・ハイハットの3点を、AS-1の素の音である”Basic Program”からエディターソフトを併用して音作りしていきます。

シンセでキックを作る時は、音の立ち上がり部分で急激に音程を下げてアタック感を出します。この動画ではローパス・フィルターのレゾナンスを目一杯上げて発振させた後に、FILTER ENVELOPEでアタック感を出したり余韻を調節しています。これを応用すればタム等のサウンドを作ることも出来るでしょう。

キックの次はハイハットを作ります。AS-1のオシレーターにはノイズ波も搭載されていますので、このホワイトノイズを使います。

当然のことながら、AS-1ではハイハットのクローズとオープンを別々に鳴らすことはできません。そのため、本体のDECAYツマミを動かしてクローズとオープンの鳴らし分けをしています。この手動感が逆に有機的なノリになったりします。

この時の音作りのキモもやはりエンベロープで、SustainハイパスフィルターのENV AMOUNTをマイナス方向に変えてもニュアンスが変わってきて面白いです。

シンセでスネアを作る場合は、スナッピーとなるノイズ波と皮鳴りの部分のオシレーターの2つの音を組み合わせて作ります。オシレーターは三角波を使い、キックと同様に立ち上がりの部分で少し音程を下げることでアタック感を出しています。

ここでも音作りのキモもやはりエンベロープ。シンセでドラムサウンドを作る時は、アタックや余韻の感じを出すための重要なパラメーターです。ここではAMP ENVELOPEのSUSTAINで余韻の感じを大きく変えています。

この3点だけだとビートとしてはシンプルすぎるので、AS-1のプリセット”F4 P-89 DR Steel Ribbons”を使い、パーカッション的なフレーズを足していきます。

プリセットのままループさせるのでは無く、本体のツマミを使ってアタックディケイを動かしたり、スライダーと併用したり音を変化させながら録音します。8小節よりも長い尺で録音する必要があるので、録音前にある程度ざっくりした構成を作っておきます。

シンセ・ベースを作る

次はちょっとアシッド感のあるシンセ・ベースを作ります。最初にLive上でシーケンスを組み、その後にベースのサウンドを録音します。

ベースの音作りは、エディターソフトを使って本体パネルには無いGLIDELFOに関する細かいパラメーターなどを設定していきます。

録音時に展開に合わせてベースのサウンドを変化させることで、単なるループの繰り返しでは無い有機的なベースになります。AS-1はこうしたリアルタイムの音色変化がしやすいので、1つのフレーズでも音色を変えながら引っ張っていくことが簡単にできます。

エディターソフトでリードのパターンを打ち込む

ここでいよいよ最後のパートのリードに取りかかります。このパートでは、シーケンスはAS-1内蔵のシーケンサーを使用し、打ち込みはエディターソフト上で行います。こうする事でAS-1内蔵キーボードを使ったダイナミックなトランスポーズが可能になります。

また、このパートではDave Smithのシンセでよく使われているポリモジュレーションを使った音作りをしました。このポリモジュレーションとは、オシレーターの波形と周波数を使用してサウンドを変調させるモジュレーションです。

こうすることでLFOよりも高速で複雑なモジュレーションがかかり、金属的な響きや過激なサウンドを生み出す事が可能になります。ちなみにこのポリ・モジュレーションを組み合わせて音作りするのがFM音源です。

このリードでは比較的大人しめのポリ・モジュレーションにしていますが、スライダーを上げると変調幅が増えて過激になっていくのがわかると思います。

アレンジ・ミックスをして仕上げ

さて、いよいよ全パートの打ち込みと録音が終了しました。このまま書きだして終わり…の前に、全体を少し整えて仕上げをします。

例えば、展開が変わる前に前振りが何も無いと、唐突にトラックが展開してちょっと違和感が出る事があります。そのため、ドラムのフィル他の楽器でオブリガートを入れたりしますが、今回は既にオーディオに録音されています。

そういうときはそのオーディオ素材を加工・切り貼りしてフィルなどを作ってもよいのですが、ここでは一部のトラックをミュートして音数を減らす「音の引き算」で前振りを作っていきます。

また、楽器毎の音量のバランスを取ったりセンドエフェクトなどを使って簡単な仕上げをしていきます。こうして完成したのが上のスクリーンショット。一通り終わったらステレオファイルに書き出して完成です。

トラックメイクを終えて

今回は「AS-1一台でトラックを作る」というテーマに挑戦しましたが、取りかかるまでは果たして可能なのか不安にもなりました。実際やってみるとAS-1は意外とどんなスタイルにも対応出来るキャラクターで、エディターソフトのお陰でフルエディットもできるので、音作りしやすく楽しい作業でした。

シンセでドラムの音を作ると、「いかにも」な軽い音になったり音圧が低かったりしがちですが、AS-1の場合はしっかりローエンドまで出るし、ゴツい音も繊細な音も出せてAS-1一台とは思えないサウンドに仕上がったと思います。

また、普段制作している時は、「音源にシンセ一台だけ使ってトラックを作る」という制約があるケースはなかなかないと思いますが、今回テストした感じではこの制約を乗り越えるところが面白い試みでした。読者の皆さんもお持ちのシンセで一度試してみてはいかがでしょうか?シンセの勉強にもなるし、自分が使っているシンセについて奥深く知ることができると思います。

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