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アナログ・シンセのすすめ。コンパクト型の代表格『AS-1』と『monologue』を徹底比較

デスクトップサイズのコンパクトなシンセサイザーが多数販売されていますが、それらのシンセでは、果たしてどんなことができるのでしょうか?

今回はシンセ初心者の方の選択肢にも入るアナログ・シンセをコンセプトに、Pioneer DJの「AS-1」とKORGの「monologue」を、以下の項目に分けて比較し、それぞれのシンセがどのような用途に適しているのかを見ていきたいと思います。

  • 主な仕様(鍵盤・ノブ数・接続性)
  • 搭載プリセット・サウンド
  • サウンドのエディット能力
  • シーケンサー/演奏サポート機能

今回AS-1について語ってくれるのは、おそらくもっともAS-1を理解しているであろうアーティストの一人、子安さん。monologueは、鍵盤または音源として、曲作りの様々な場面で本機を愛用しているsoundropeの橋本が担当いたします。

同じタイプとしてカテゴライズされる「AS-1」と「monologue」ですが、果たしてどのような特性があるのでしょうか?シンセ比較対談のスタートです。

まずは見た目から。主な仕様をチェック

橋本:まずは外観から見ていきたいと思います。AS-1とmonologueを並べてみると、AS-1はmonologueのちょうど半分くらいの大きさなんですね。

子安:どちらのシンセも小さい部類ですね。monologueくらいまでが、気軽に持っていけるサイズでしょうね。

橋本:鍵盤の分monologueが大きいという感じですね。monologueには、minilogueやMS-20 miniと同じスリム鍵盤が搭載されていますが、AS-1はどうやって演奏するんですか?

子安:タッチパッド式のキーボードが搭載されていて、鍵盤と同じように白鍵と黒鍵にあたる部分をタッチすると音が発音します。タッチパッド式なので、キーボードをスライドさせて演奏できるのも特徴的ですね。

橋本:iPadの音楽アプリみたいな感じですね。タッチパッド式の鍵盤って馴染みがないんですが、使い勝手はどうですか?

子安:例えば、シーケンサーを再生している時にキーボードに触れるとキーをトランスポーズできるので、弾くというよりは、キーを合わせたり、トリガーとして使ったりできます。

橋本:ハードウェアの醍醐味といえば、直接触れるノブとボタンですが、AS-1のパラメータは、とってもシンプルですよね。

子安:シンプルですね。あえて出していないと言うか、必要なパラメータだけを配置しているという感じです。

橋本:もっとも効果的なパラメータだけが配置されているということですか?

子安:そうですね。おそらくですけど、AS-1はシンセに詳しい人よりも、シンセを使ってみようかなという人をターゲットにしていると思うので、このような仕様なんだと思います。

橋本:逆にmonologueは、全パラメータ・ノブがトップパネルに配置されています。ですが、一般的なシンセに比べてパラメータが多いわけではないので、多くもなく少なくもなくという感じで、自分的にはちょうど良いんですよね。

子安:僕はTB-303のパラメータ・ノブの数くらいが、シンセとしての最小限かなと思っていて、あれだけのパラメータがあれば、ある程度音を変えられるじゃないですか。AS-1もそれと同じですね。

橋本:AS-1は選りすぐられたパラメータ・ノブのみで、monologueはコントロール可能な全てのパラメータ・ノブを搭載。操作性は対極にありますね。AS-1には他のパラメータも搭載されているんですか?

子安:実はたくさんのパラメータが搭載されていて、上部のパラメータ・ノブとバリューノブで、それらのパラメータを操作できます。AS-1には、エディターソフトも用意されていて、そちらから全てのパラメータをコントロールすることも可能です。

橋本:次にリアパネルに目を向けて、接続端子を見てみましょう。ハードウェアでは、どんな機材と接続できるかも気になりますが、それぞれに、MIDIイン/アウトとUSB端子が搭載されていて、オーディオのアウトプットが1系統搭載されています。

子安:基本的には同じような仕様ですね。monologueにはvolcaシリーズなどとのシンクが可能なSYNCイン/アウトが装備されてますが、AS-1の場合Trigger Inがそれにあたり、クロックを受信して、他の楽器とシンクすることができます。

橋本:ということは、monologueのSYNCアウトから、AS-1のTrigger Inに接続して、シンクすることもできるんですね。

橋本:接続性についてはほぼ一緒ですが、唯一違いを挙げるとすれば、monologueに搭載されているオーディオ・インプットくらいですね。ちょっと上級者な使い方ですが、外部音源の音をmonologueに入力して、フィルターなどで加工できます。

子安:それくらいの違いですね。どちらも、一般的に必要とされる端子は全て備わっているので、接続で困ることはなさそうです。

どんな音が出るの?気になるプリセット・サウンド

橋本:続いては、気になるプリセット・サウンドについて見ていきましょう。AS-1には、どのくらいのプリセットが用意されているんですか?

子安:全部で495ですね。

橋本:多いですね。495プログラムの中でファクトリーとユーザーを管理するんですか?

子安:ファクトリープリセットが495で、同じ数だけユーザープリセットを保存できます。

橋本:凄いですね(笑)。monologueはファクトリープリセットが80で、最大100のプログラムを保存できます。ただ、ライブラリアン・ソフトが用意されているので、そちらを使って、100以上のプリセットを管理することもできます。AS-1にはたくさんのプリセットが搭載されていますが、どんなプリセットが用意されているんですか?

子安:これだけあるので、満遍なく幅広いサウンドが用意されています。

橋本:よく使うプリセットはありますか?

子安:バンク1のプリセット1に「Pro One」というプリセットがあるんですが、おそらくこれは、Dave Smithが手掛けた名機「Pro One」のサウンドだと思うんです。すごくベタなんですけども、これは良く使いますね(笑)。やはり、1番目のプリセットは、そのシンセを象徴するサウンドですし。

橋本:確かに。monologueのプリセットの1番は、Aphex Twinが手掛けたものですしね。そうすると、リード系のプリセットをよく使うんですか?

子安:現場だとベースが多いかもしれませんね。例えば、「Big Sub」というサブベースのプリセットがあるんですけど、このサウンドのフィルターを開くとホワイト・ノイズが加わるんです。そのような効果は現場で映えますよね。

AS-1は、キーボードにお気に入りの音色を最大13個まで登録できるので、すぐに呼び出せるんです。これを見てみると、ベースが4つで、あとはリードやパッド、、、。やっぱり満遍なく保存してありますね(笑)。

橋本:monologueのプリセットは、モノフォニックならではのリードとベースが中心で、特にリード系の存在感はトラックでも際立ちます。あとは、ドラムパターンも幾つか入っているんですけど、Aphex Twinを彷彿とさせる難解なドラムパターンだったりするんで、ライブなんかのドラムパートとしても使えますね。パラメータをいじって、ぐちゃぐちゃにするのも面白いです。

どんな音を作れるの?シンセの醍醐味エディット能力

橋本:次に、プリセットからどんな音が作れるのかということで、エディット能力について見ていきたいと思います。冒頭でも述べた通り、それぞれの操作性は対極にありますが、AS-1では主要な6つのパラメータだけで、エディットするんですか?

子安:おそらくAS-1の設計思想は、予め音作りをしておいて、パフォーマンスの際に、ローパス・フィルターやハイパス・フィルター、エンベロープなどの主要なパラメータを使って、音色を変化させるという感じなんです。

橋本:なるほど。仕込みはしておいてね的な、パラメータの配置なんですね。

子安:面白いのがスライダーで、7つのパラメータをアサインできるんですよ。

橋本:7つのパラメータから1つをアサインできるんですか?

子安:7つのパラメータを組み合わせられるので、複数のパラメータをアサインして、コントロールできます。

橋本:ソフトシンセに搭載されているマクロ・コントロール的な機能ですね。このスライダーは、ピッチベンドとしても使えるんですよね?

子安:どちらかというと、モジュレーション・ホイールが、もう少し高機能になったような感じです。2つのオシレーターのピッチを同時に変化させたり、エフェクトのかかり具合を変化させたりできます。スライダーの仕込みも大切なポイントで、スライダーを使いこなせると、AS-1の面白さがわかるんじゃないかなと思います。

橋本:monologueにも、ツマミ付きのスライダーが搭載されていて、ピッチベンドの他に、フィルターのカットオフやレゾナンス、オシレーターのピッチやシェイプなど、12個のパラメータをアサインできます。

AS-1のように複数のパラメータをアサインしてコントロールすることはできませんが、音に微妙なニュアンスを加えることができるので、特に演奏時には重宝しますね。AS-1のオシレーターは、どのような構成ですか?

子安:オシレーターは2VCOで、波形タイプはノコギリ波、三角波、矩形波の3つです。

橋本:monologueと同じですね。

子安:ただ、特徴的なのが、段階的に波形タイプを変えられるところですね。三角波とノコギリ波を切り替えるのではなくて、ノブを回して三角波から徐々にノコギリ波へ変えることができるんです。なので、三角波とノコギリ波の間の波形なんかを作り出すこともできます。

橋本:monologueは、3つの波形タイプを切り替えて使う仕様ですが、波形の幅を変えられるSHAPEノブがそれぞれのVCOに搭載されているので、細かな音のニュアンスを手軽に調整できて便利です。

VCO 2にオシレーターシンクとリングモジュレーターが搭載されているんですが、例えば、オシレーターシンクを使用した場合に、VCO 2に倍音が加わって複雑な波形を作り出せるので、リードのサウンドには特に有効的です。フィルターも気になるところですが、AS-1のフィルター具合はどうですか?

子安:AS-1には、ローパス・フィルターとハイパス・フィルターが搭載されていて、レゾナンスを上げていくと、ギリギリ発振してくれます。

橋本:結構、攻撃的なフィルターなんですね。

子安:そこまでエグいわけではなくて、ちょうど良いところまで暴れてくれる感じです。

橋本:monologueには、フィルターのカットオフとレゾナンスが搭載されていますが、カットオフで中高域あたりに設定して、レゾナンスを上げていった時の発振の仕方は、インパクトがありますね。

あとは、エンベロープ・ジェネレーターとLFOが搭載されていて、フィルターのカットオフにそれぞれの効果を加えることができるんです。そうすることで、カットオフに簡単に時間的な変化を加えられるので、今っぽいサウンドメイキングも考えられているなという感じです。

monologueにはオシロスコープが搭載されていて、波形の状況が視覚的にわかるので、操作しているパラメータの効果もわかりやすくて良いですね。AS-1には、エフェクトのオン/オフ・ボタンが搭載されていますが、エフェクトも豊富なんですか?

子安:2系統のエフェクトが用意されていて、同時に使うことができます。1系統目にはディレイ、ディストーション、リングモジュレーターが、2系統目にはコーラス、フェーザーが用意されていて、フェーザーは3種類も用意されています。

AS-1は良くできていて、シンセのエンジンはフル・アナログなんですけど、エフェクトだけデジタルなんです。エフェクト音をデジタルからアナログに変換して、アナログ信号に混ぜているんです。

橋本:monologueには、ドライブのみ搭載されていますが、最後にドライブという感じで、このノブを回すだけで簡単に歪みや倍音を加えることができるので、とても重宝しますね。

今っぽい機能も充実。シーケンサーと演奏機能

橋本:ここまでは、シンセのベーシックな部分を見てきましたが、ここでは、シーケンサーやスケール機能などの今っぽい機能について見ていきたいと思います。それぞれのシンセには、シーケンサーが搭載されていますが、AS-1には、どんなジャンルに向けられたパターンが入っているんですか?

子安:オールジャンルですね。AS-1では、495のプリセットの全てにシーケンス・パターンが含まれているので、ある種DJ的な使い方もできますね。

橋本:monologueも同じで、80のファクトリープリセットの全てにシーケンス・パターンが用意されています。なかには、Aphex Twinによるシーケンス・パターンも入っているんですが、傾向として、レコードレーベルのWarp Records系の難解なパターンが多い印象です。AS-1のシーケンスのステップ数は、何ステップですか?

子安:64ステップです。

橋本:長いですね。monologueは、潔く16ステップです。

子安:16ステップもあれば、こと足りますよね。

橋本:確かにそうですね。以前のシンセには、シーケンサーが搭載されていることもなかったわけで。

子安:昔だったらこれを、グルーヴギアと呼んでいましたからね。

橋本:最近のだいたいのシンセには、当たり前のようにシーケンサーが搭載されていますからね。逆に、シーケンス・パターンのクオリティが、一つの基準になっているところもありますよね。

子安:最近のシンセの性能は、どれも良いじゃないですか。そうなると次にどうやって差別化を図るかとなると、内蔵シーケンサーのクオリティということになりますよね。

橋本:確かに、いかに簡単に作れるか、即戦力かと言う部分で、シーケンスのクオリティが求められますね。AS-1では、どうやってシーケンスを打ち込むんですか?

子安:ステップ入力ですね。キーボードを使って、ステップごとにノートを打ち込んでいきます。エディターソフトだと、慣れ親しんだピアノロール画面で打ち込むこともできます。

橋本:monologueは鍵盤を使って、リアルタイムとステップでシーケンスを入力できます。鍵盤とその上にある16個のボタンを組み合わせて入力できるので、直感的にパターンを作れます。

あとはモーション・シーケンスですね。4つのパラメータの動きを、シーケンスに記録できるんですけど、音に時間的な変化を加えられて、パターンをどんどん変えていけるので楽しいですね。モーション・シーケンスの上書きや消去もすぐにできるので、即興性も高いです。作り込みはもちろんですが、できちゃった感を楽しむのも醍醐味かなと。そういう感じで、普段はワンフレーズを作ってる感じです。

最近のソフトには、スケールを外すことなく演奏できるスケールモードが搭載されています。この機能により、演奏に自信がない方でも音楽的な演奏ができるわけですが、AS-1にはそのような機能は搭載されていますか?

子安:21種類から選択可能なスケールモードが搭載されています。

橋本:monologueの場合、スケールモードとはちょっと違うんですが、マイクロチューニングという機能があって、この機能を使うとオリジナルの音律を作り出すことができるんです。マイクロチューニングでは、鍵盤ごとにピッチの調整が可能なので、設定によりスケール演奏も可能になります。

マイクロチューニングには、20のプリセットが用意されていて、それらのプリセットを使うことで、メジャースケールやマイナースケールなどの演奏が可能になります。なかには、Aphex Twinが手掛けたプリセットも用意されていて、面白いですよ。

子安:実はAS-1にもマイクロチューニング機能が搭載されているんですよね。鍵盤ごとの調整はできませんが、プリセットが17個くらい用意されています。

橋本:AS-1にもマイクロチューニングがあるんですね。スケールモードやマイクロチューニングなど、演奏をサポートしてくれる今っぽい機能が、どちらにも搭載されているので、初心者の方でも楽しめますね。

総評:こんな使い方にオススメ

橋本:最後に、ここまで比較してきた点を踏まえて、それぞれのシンセが、どのような用途に向いているのかを見ていきたいと思います。AS-1はサイズやUIを見ると、現場でのパフォーマンスに向けられている印象ですね。

子安:Dave Smith直系のサウンドなので、もちろんスタジオでの使用も考えられていますが、どちらかというと業務用ですね。現場での使用は、かなり意識されていると思います。

橋本:AS-1のプリセット能力が高いので、そのまま使えちゃいそうですしね。

子安:そうですね。自分もプリセットから使うことが多いですし、初心者でもすぐに使えると思います。

橋本:AS-1のパターンを録音して貼り付けるだけで、簡単に曲作りにも活かせそうですね。

子安:AS-1は、シーケンスを再生させながらキーボードを押すと、リアルタイムにトランスポーズできるので、曲作りの取り掛かりとなるモチーフ作りにも良いと思います。

橋本:確かにアイデアを得ることもできそうですね。多くのプリセットが用意されていても、結局それが、自分の曲で使えるかどうかが重要じゃないですか。AS-1のプリセットを聴いてみて、使えそうなプリセットが結構入っているなという感じがしました。なので、シンセの知識が少なかったり、演奏できないと言う人には、特にオススメできそうですね。

子安:シンセでの音作りを突き詰めるとか、そこまでマニアックなことは必要ないという人には、特に良いですね。

橋本:AS-1は手軽さがキーワードですね。monologueも手軽なシンセですけど、もう少しマニアックというか、シンセの音作りを楽しむ方向性かなと思います。

子安:こうして比べてみると面白いですね。同タイプのシンセでも、実は設計思想が違いますもんね。monologueは、どちらかというと自分で全てのサウンドを作りたい人向けですね。

橋本:確かにそういう部分はありますね。それなりの知識があるとさらに楽しくなるシンセではあります。

子安:以前にKORGの開発担当者さんと話した際に、音作りの楽しさを伝えたいと話していましたが、そのようなコンセプトを元に、monologueが作られているのでしょうね。

橋本:確かにmonologueで、音作りの楽しさを感じることができると思います。シンセの音作りを覚えるにはちょうど良いくらいのパラメータの数ですし、シンセでの音作りを始めてみたいと言う初心者の方にもオススメですね。

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