Ableton主催のカッティングエッジな音楽とテクノロジーのカンファレンス【Loop訪問記 前編】

soundrope読者の皆さん、こんにちは。前回のターンテーブルの調整記事が好評で3200を超えるいいねを頂きました。マニアックな内容にもかかわらず反響があって嬉しい限りです。さて、今回は趣向をがらっとかえまして、10月下旬から11月上旬にかけて行ってきたベルリンの話です。Abletonが「Loop」という音楽制作者向けのカンファレンスを開催したので、僕もAbleton認定トレーナーの端くれとして行ってきました。濃密な内容で開催されたLoopの模様を2回に分けて紹介します。

Loopとは?

Loopは10/30から11/1にかけてベルリンで行われた、世界中のアーティストやエンジニア・プログラマーなど様々な参加者が集まり、ワークショップやトークセッションを行うカンファレンスです。その内容もフィールドレコーディングやレーベル運営から、調理で音楽制作するワークショップ/時間の使い方にまつわるディスカッションまで、音楽制作にまつわる多岐に渡ります。さらに夜はクラブで、音楽とアートのフェスを手がけるCTMによるアフターパーティーもあり、Loop参加者は無料で入ることができます。

このLoop、チケットも3日間で€250と安価ではないのですが、Abletonは敢えて目立ったプロモーションをせず、ピンと来た人だけ来て欲しいというスタンスでした。後から知りましたが実際は世界中から500名の定員を大幅に超える応募があり、簡単には参加できるものではなかったそうです。

僕は9月になってようやくLoopのチケットが取れたので急いで飛行機を押さえ10/28に出発しました。成田から飛行機に乗り、やたらお洒落なヘルシンキ空港を経由してベルリンまで14時間のフライト。ベルリンはこの季節にしては晴天が続き比較的暖かい気候でしたが、乾燥していてやたらのどが渇きます。湿度が低い方がビールを美味しく感じるので、ドイツ人がビール好きなのも納得です。

ベルリンで最初に飲んだ店。ビールの名前をよく見ると…笑

Loop1日目〜オープニング〜

Loopの会場となるRadial System Vは、有名クラブBerghainもあるOstbahnhof駅の近くにあります。このエリアはベルリンの壁の東側で、駅の向かいに廃墟と化したビルがあったり、その横が野外フェスのようなヤーマンなエリアだったり、ベルリンの壁の跡がアートギャラリーになっていたり面白いところです。

ベルリンの壁は現在アートギャラリーになっている
ベルリンの壁は現在アートギャラリーになっている

受付で登録を済ませ会場の中へはいると、バーカウンターと様々な機材の展示エリアがあって、飲んで談笑しながら機材を触るという光景が見られます。

オープニングセレモニーまで飲みながら遊んでいる人多数
オープニングセレモニーまで飲みながら遊んでいる人多数

このエリアではアナログシンセで有名な楽器屋=Schneider’s Ladenがモジュラーシンセの展示をしていたり、脳波で鳴らす楽器の展示があったり、大きな風船サイコロを延々投げている人がいたりして、海外ならではのカオス空間です。日本のこうしたイベントは、背広を着て紙袋をもったビジネスマンがいるか、お勉強ムードか強い印象ですが、もっとカジュアルというかFunの要素が強いです。

右端に環状線の標識があるとおり、この展示台はゆっくり回転していた

会場の横にはフードエリアと喫煙所があり、その横にはシュプレー川が流れています。ここは一種の社交場になっていて、沢山のAbletonの社員や認定トレーナーと出会いました。遠く海を隔てた日本にいるとなかなか感じられないのですが、ヨーロッパは飛行機で少し飛べば別の国に移動できるので、各国の認定トレーナー間のつながりが強く皆フレンドリーです。これだけ人の出入りが多ければEUも生まれる訳だなと納得しつつも、アジアにはこうしたネットワークが無い事に気づかされます。

世界中から色々なメーカーや認定トレーナー達が集まってくるのでここがたまり場所になっている。

しばらくして学校のチャイムらしきSEが入りメインホールに入るよう促されます。メインホールではKing Britt, Claudio & Gloria Justenによる20分の素晴らしいセッションが行われ、Ableton Liveの生みの親の一人Robert Henkeによるオープニングキーノートが始まります。「音楽を作る作業は一人で行うことが多く孤独なものである。だからこうして皆で交流できる場を作った。参加者同士でお互いのアイデアを共有して欲しい」という内容の話をしていました。素晴らしいオープニングもさることながら、会場もこれからクリエイティブな何かが起こりそうな雰囲気でした。

Abletonのドキュメント部門のトップ、Dennis DeSantis。「Making Music」の著者でもあり、Loopの期間中ずっとモデレーターとしてトークセッションをまとめていた
Loopの期間中モデレーターとしてトークセッションをまとめていた、Abletonドキュメント部門のトップDennis DeSantis。「Making Music」の著者でもある。

1日目のプログラムはオープニングなのでここで終了。夜のプログラムはBabylon CinemaというクラブでJames Holden等のコンサート(日本で言う「ライブ」をドイツではこう言います)がありましたが、僕はタイミング合わず行けませんでした…。

あっという間に1日目までの日程が終了したLoopですが、2日目以降から、いよいよ本格的なプログラムが開始されます。後編では、ハウスやヒップホップのトラックを手がけるアーティストのKing Brittによる音楽教育のディスカッションなどの注目のプログラムについて紹介しますのでお楽しみに。