DJ機器の先駆的メーカーVestaxの優れた製品達

12月10日、とても残念なニュースが飛び込んできました。
日本のDJ機器メーカーVestaxの破産。。

筆者が高校生の頃にバイトしてやっとこ揃えたDJセットのミキサーがVestaxのPMC 05Aで、それまで何の趣味もなかった自分に火をつけてくれたブランドの一つとして、個人的な思い入れも強いメーカーです。

Vestax製品にお世話にならなかったDJはいないと断言してもいい程だと思いますが、世界に誇るDJ機器メーカーVestaxの名をみなさんの心の中に刻んでおいていただけたらと思い、簡単ではありますが、Vestaxについてまとめてみました。

Vestaxは1977年11月に(株)椎野楽器設計事務所として設立され、ギターなどのプロ用楽器の設計販売を行っていました。

その後はエフェクターやプリアンプ、マルチトラックレコーダーなどを製造し、1987年に社名をVestaxに変更。ここからDJ向けのミキサーやターンテーブルなどの製造販売を開始します。

1991年には、PMC-20がヨーロッパ ベストミキサーオブザイヤーに選ばれ、その後1993年まで3年連続でPMCシリーズがベストミキサーオブザイヤーに選出されました。

この頃の多チャンネル・ミキサーは横長のボディで、フェーダーの左右に搭載されたトランスフォーマー・スイッチが特徴的でした。

PMC-40

4チャンネル+MICチャンネルを搭載したPMC-40

トランスフォーマー・スイッチを押すと、音が途切れて、トランスフォーマー・スクラッチと言うスクラッチの技と同様の効果が得られました。

1994年にはターンテーブルの販売が開始されました。

筆者がちょうどDJ機材を購入する時期にVestaxのターンテーブルの発売がアナウンスされて、Thecnics SL-1200 MK3とどちらをかうか迷ったのを思い出します。

1997年にはPDT-5000がヨーロッパベストターンテーブルオブザイヤーを受賞。この頃のターンテーブルのデザインはいけてます。

PDT-5000

 Vestax最初のターンテーブルの1つ PDT-5000

そして1998年頃からシャンパン・ゴールドのボディが印象的だったPMC-07 PROやPMC-46などの優れたDJミキサーが続々と発売されました。

PMC-07 Pro

ハイグレードなスクラッチ向けミキサー PMC-07 PRO

おそらくVestaxがリリースしたDJミキサーの中で、シャンパン・ゴールドのボディのミキサーが一番クオリティが高かく、サウンドもノブの感じもとても素晴らしいものでした。

この頃にはクロスフェーダーの耐久性も改善され、スクラッチ向けのクロスフェーダーも別途用意されていました。

1999年には、アナログレコード製作用のカッティングマシンVRX-2000が発表されました。

VRX-2000の販売価格は100万円程度で、Vestaxのショールームに音源を持ち込むとカッティングを行うことができたと記憶しています。

VRX_2000

カッティングマシーン VRX-2000

2000年には、ウルトラピッチと言われるSL-1200などに比べて大幅なピッチ変更機能と、リバース再生機能が搭載されたターンテーブルPDX-2000が発売されました。

PDX-2000

多機能なターンテーブル PDX-2000

AKAI MPC2000 XLを購入してレコードからのサンプリングだけで音楽制作を行っていた筆者にとっては、レコードが止まりそうな程に遅くなるウルトラピッチとリバース再生の魅力に引かれて即購入したのが懐かしいです。

レコードを遅くし過ぎるとノイズが目立ちすぎて、結局サンプリングには使用できなかったと言う残念な結果でしたが、スクラッチにどはまりしたのもこのターンテーブルがきっかけでした。

2004年には、スクラッチ界の生きる伝説DJ Q-Bertとのコラボにより、ミキサーとターンテーブルが一体化したQFOを発表しました。

このような斬新な製品を作ってしまうのがVestaxの魅力でもあり、当時はQFOをクラブに持ち込んでプレイするバトルDJも少なくありませんでした。

QFO

 スクラッチのために開発されたQFO

2006年には、デジタルDJコントローラ VCI-100を発表しました。当時TRKTOR DJには専用コントローラがない時代で、TRAKTOR用のコントローラとして人気を集めました。

VCI-100

PC DJコントローラの先駆け VCI-100

VCI-100以降もVCI-300、VCI-400、Spin、Typhoonなど多くのコントローラをリリースし、PC DJの広がりを後押ししました。

その他の製品としてエフェクターなどがありますが、なかでもDCR-1200、DCR-1500はとても優秀なアイソレーターでした。

DCR-1200

特定の周波数帯をカットするアイソレーター DCR-1200

筆者もFDG-1と言うハーフラックサイズのアイソレーターを使用して、MPCへのサンプリング時に使用していました。

ここまでVestaxの代表的な製品を取上げましたが、これらはほんの一部で、その他にもたくさんの製品がリリースされており、それらの製品は多くのDJに愛用されてきました。

こうして見てみるとDJ機器において、他社に先駆けた新たな製品を数多くリリースしていたことが分かります。

残念ながらVestaxはなくなってしまいましたが、これらの優れた機器は忘れられることはなく多くのDJの心に生き続けるはずです。