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音楽の未来を作る『サンプリング』

曲作りをする上で、サンプリングは目新しい手法ではありません。むしろ、音楽シーンの中でイノベーションの余地がある数少ない分野になりました。一方で、サンプリングを盗作だと感じる人もいて、サンプリングを行うミュージシャンは、訴訟の可能性やオリジナリティについて考えます。

しかしサンプリングは、飽和した現代の音楽において発展の余地がある、貴重な手法の一つなのです。他のアーティストに言及したり、オマージュを捧げたり、時代を超えてコミュニティを築く方法でもあります。

サンプリング自体は新しいコンセプトではありません。ジャズミュージシャンは他人の曲のリフを借りて、お互いに「引用」してきました。ヒップホップはサンプリングから作られます。ハウスミュージックも然りです。そして近年では、ポップスからEDMまで、数多くのジャンルで同じようにサンプリングが用いられています。1950年代のミュージック・コンクレートのパイオニア達でさえも既存の音楽で実験していました。

サンプリングは今どのような状況にあって、どこに向かっているのでしょうか。そして何より、サンプリングが果たす役割とはどのようなものでしょうか?

もはや新しいギターの音は存在しない

私たちはフォノトグラフ発明以来156年もの間、音を記録し続けています。156年経った今、楽器を録音する新しい方法は残されているでしょうか?部屋の形やマイクなどのバリエーションにより、ギターやピアノの音が全く新しい音に聴こえたりするでしょうか?ギターはどのように手を加えてもギターに聴こえますし、ピアノはピアノの音がします。これから一生部屋に籠り、ピアノの「完璧な音色」を追求したとしても、それはただ過去の繰り返しで、昔からの音楽の作り方に倣っているに過ぎません。

誤解しないでほしいのは、私はペダルやエフェクトを使ってギターの音を可変させることは好きなのです。そしてペダルやエフェクトを使った手法が、唯一最良の実験だった時期もありました。しかしサンプリングに比べて、ギターをマイクで録音する方法には限界があるように思えるのです。

思い出を呼び起こすサンプリング

近頃開催されたASCAP(American Society of Composers, Authors and Publishers)主催の音楽制作に関するパネル・ディスカッションで、プロデューサーのHarmony Samuelsがヒット曲”The Way”の裏側について語りました。彼はAriana Grandeにこの曲を書きプロデュースしました。


出典:YouTube

Big Punの‘Still Not a Player’(1998)でサンプリングされたことで広く知られようになった、Brenda Russellの‘A Little Bit of Love’(1978)が、この曲にも使われています。ミュージック・クリエイター志望の数百人の聴衆を前に、Samuelsはサンプリングのビジネスロジックについて次のように説明しました。

私は皆の記憶を思い起こすような曲を作りたかったのです。サンプルとは、思い出として忘れられないものなのだと思います。

子供の頃に聴いた音楽は記憶に刻まれるものです。今回私はサンプリングをサンプリングしようと考えました。ヒットソングから生まれたヒットソングで、新たにヒットソングを作るということです。 – Harmony Samuels

すでに二度ヒットしている曲は、またしても売れたのでしょうか?

この曲はアメリカ国内で230万枚を売上げ、トリプル・プラチナムレコードになりました。Brenda Russell、Big Pun、Ariana Grandeによりステータスを得た曲は、今後もヒットを生み出す可能性を秘めています。驚くことに、38年間にも渡り成功を収めているのです。

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サンプリングの楽しみ方

サンプリングは、生演奏などとは異なる楽しみを与えてくれます。原曲の珍しい切り取られ方を見つける楽しさだったり、どの曲が使われているかを当てる楽しさもあります。誰かの曲をサンプリングすることは、プロデューサーとリスナーの両方のコミュニティが広がるのです。聴き方ですら変えてしまいます。

WhoSampledは、誰の曲が使われているか知りたいという人々の欲求が、ウェブサイトの人気を後押ししています。そこには原曲を知る喜びがあります。テクノやヒップホップなどジャンル別に分けられたコミュニティで、膨大な量のサンプル情報がシェアされています。

ある意味サンプルはハイパーリンクのようなものです。曲と曲をリンクさせ、予想もしていなかったところへ連れていってくれます。そしてその曲の歴史もついて回ります。

サンプリングを楽曲制作に取り入れるミュージシャンなら、その曲がこれまでどのような使われ方をしてきたのか、これからどのように使うべきなのかを考えます。これまでの歴史を知ると、より良い音楽を作ることができます。サンプリングは過去へのオマージュでもあり、未来への一歩でもあります。

音楽の未来マイクロサンプリングの登場

マイクロサンプリングは音楽の未来です。マイクロサンプリングとは、ワンショットの音の断片で、短すぎて脳がほぼ認知できないレベルのサンプルのことを指します。このトレンドが進むにつれて、サンプルの長さはますます短くなり、曲全体がたくさんのカラフルな粒でできているかのように感じます。あるアーティストの曲は、別のアーティストの異なる視点から再び生まれ変わります。

Ableton LiveのSimplerや、その他のサンプラーデバイスにより、このプロセスは簡単に行えるようになりました。Abletonブログのインタビューで、Daft PunkのThomas BangalterがクリエイティビティーとDAWについて、次のようにコメントしています。

ラップトップでメモ帳代わりに使ったり、音楽のアイデアを色々試したり、パソコンゲームとして楽しんでいます。他のビデオゲームよりこちらの方が面白いです。-Thomas Bangalter, Daft Punk

Oneohtrix Point NeverSophie などアンダーグラウンドのプロジェクトからEDMフェスティバルまで、マイクロサンプリングは至るところで見受けられるようになりました。メインストリームのラジオでも同様で、Mike Posnerの‘Took a Pill in Ibiza’ Seeb RemixやJustin Bieberの‘Where are Ü Now’でも使われています。

次の動画では、DiploとSkrillexがJustin Bieberの声をマイクロサンプリングして、インストゥルメントとしてトラックに使用したことを紹介しています。(5:37あたり)

出典:YouTube

サンプリングとマイクロサンプリングの面白いところは、ピッチシフティングやエンベロープを変えることで、アーティスト側がどれだけリスナーに元の素材をシェアするか決められる点です。これはリスナーが、サンプルを当てたいという欲求にもつながります。

テクノロジーが進化した現代の音楽では、元のサンプルはわからないようになってきました。プロデューサーがどのように編集したのかを説明しないとわからない程です。ここで疑問なのが、もしもYouTubeから音の断片を拾ってきて、細かく切ったりして色々と手を加えた場合、これはサンプリングしていると言えるのか、それとも全く新しい音を作っているのか、どちらなのでしょうか?

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“私達は音楽的な時代ではなく、音速の時代に生きています。” -Harmony Samuels

サンプリングはヒップホップの誕生から現代のポップミュージックに至るまで、常に形を変え、新しい音楽を生み出してきました。別の曲にオマージュを捧げたり、サンプルを細かく切り刻んで新しい音として作り直すのも、全てタイムラインの一部と見做されるのです。

法的な問題や盗作の話から、クリテイティビティやテクノロジー、音楽の歴史へと話を移しましょう。サンプリング・テクニックは、音楽や音楽テクノロジーと共に発展してきました。テクノロジーと音楽は、相互に作用して進歩を続けてきました。

“道具はある。しかしどう使うかを考える必要がある。” –Laurie Spiegel

サンプリングはギターやピアノと同等の地位を獲得し、今では多くの才能あるミュージシャンのメイン・インストゥルメントとして使われています。もしかしたらここに人々が熱くなる理由があるのかもしれません。ミュージシャンである意味を根本から革新できるからです。

新しいアートとは、ゼロから作り出すことではありません。既存のカルチャーを新たに作り直すことなのです。すでに存在するアートを、あなたはどのように進化させますか?

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Rory Seydel: ミュージシャン、ライター、父親であり、世界をツアーで周るのとレコード制作が好き。LANDRブランド・コミュニティマネージャー
記事ソース:Landr

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