ビートのスウィング感が心地いいヒップホップトラックで人気のプロデューサー RAS G のゆるーいスタジオツアー

みなさんはHip Hopと言われたらどのような音楽を思い浮かべるでしょうか?今でこそメジャーな音楽として広く認知されていますが、1990年代にプロデューサーでMCで、ファッションデザイナーで、俳優で・・・と、なんでもこなすショーン・コムズの登場以降進化を続けたHip Hopは、現在ではその原型をとどめないほど変わり果て、すでに筆者が知っているHip Hopとは遠くかけ離れた音楽となっています。日本においてはラップ調で歌ってさえいればHip Hopとカテゴライズされてしまう始末。

この短い期間にこれほどの進化を遂げた音楽も珍しいですが、マイノリティでも筆者が大好きだった1990年代のHip Hopのスタイルを貫くアーティストが存在します。

そんなアーティストの1人が、ロサンゼルス出身のプロデューサーRAS Gです。

RAS Gの音楽スタイルは、The UmmahとしてQ-Tipなどと多くの名曲を生み出し、その後はSlum Villageの一員としても素晴らしい曲をリリースし続け、2006年に他界したデトロイト出身のアーティストJ Dillaに大きく影響されています。

RAS Gのようにずれたビートと浮遊するような気持ちいいシンセ音が特徴的なHip Hopスタイルは、今もアメリカの西海岸を中心に脈々と受け継がれており、J Dillaの音楽を愛した人々に指示され続けています。

J Dillaを知らない方は、是非こちらのDJ/プロデューサーとして素晴らしい活動を見せるJ.RoccによるJ Dillaのトリビュート・ミックスを聞いてみてください。

https://soundcloud.com/world-famous-beat-junkies/get-live-with-it-the-j-dilla-2×4-tribute-mix

出典:SoundCloud

話をRAS Gに戻しまして、このJ Dillaのスタイルを受け継いでいるアーティストの中で最もクオリティが高いアーティストの1人RAS Gのゆるーいスタジオツアーを紹介します。

出典:YouTube

RAS Gでかいし、レコードまみれ。いかにもHip Hopなスタジオで好感が持てるスタジオです。

使用機材は、サンプラーとシーケンサーとしてAKAI/MPC 2000XL、もう1台のサンプラーのRoland/SP-404、シンセサイザーはAKAI/MINIAK、これらのサウンドを最終的に取り込み、曲を構成するソフトウェアは何とGarageBand。機材がホコリまみれで、モノがたくさん乗っているDJミキサーの感じはRAS Gの人となりを表しているような気がします。

今ではこのようなセットは少なくなりましたが、このジャンルのプロデューサーのセットとしてはかなり一般的なセットで制作を行っていますね。ひたすらにレコードからサンプリングして、MPCとSP-404でほぼほぼ完成させてしまうと言ういさぎいいスタイル。

このようなシンプルな機材セットで良い音楽を生み出すRAS Gを見ていると、やはりセンスとアイデアで機材は二の次と言うのがよく分かります。あれもこれもと言う訳ではなく、同じ機材を極めるまで使い続けることが大切なのですね。

このゆるーいスタジオから今後もJ Dillaイズムを継承する良い作品が生まれ続けることを期待します。リスペクト!

参照:FACT Magazine