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大定番マスタリングソフトの機能を理解してトラックを向上させよう!〜プラグイン『WAVES GOLD』の使いかた第2回

「必須」とまで言われる大定番プラグインバンドルWAVES GOLDの中身を見てみようのコーナー、第2回です。今回は以下の6製品をサラッと取り上げてみたいと思います。

  • PAZ リアルタイムアナライザー
  • S1 ステレオイメージャー
  • Q10 10bandイコライザー
  • C1 ダイナミックイコライザー
  • MaxxBass 低域補正プロセッサー
  • L1 マキシマイザー

今回は僕が思うに、ここを押さえてないとGOLDバンドルを楽しめないよ、というラインナップとしました。ではでは早速紹介してみたいと思います。

WAVES PAZ ANALYZER リアルタイム・アナライザー

スタジオなどと違って、自宅などでの「設備が整っていない環境での音楽制作」では、正確な音のモニターは困難です。しかし、どんな場所でも破綻しないバランスがとれたサウンドを生み出そうと思うと、今鳴っているサウンドのバランスを捉える必要があります。この困難な要望を実現してくれるのが、アナライザーです。

WAVES PAZ ANALYZER はオーソドックスなアナライザーで、使い方が難しいとかそういうものではありません。敢えて難しいというのであれば、描かれたグラフィックをどう見るか、という所でしょうか。ここでは、その部分について紹介してみたいと思います。

ではまず、DAWのマスターチャンネルに「WAVES PAZ ”Frequency” ANALYZER」を起動してみて下さい。次に、お気に入りのアーティストの楽曲をひとつ用意して、「WAVES PAZ ”Frequency” ANALYZER」に通してみてください。すると、オレンジ色の”ピーク”を表すラインが引かれていくと思います。これが「最大値」になりますね。

さて、このオレンジのラインを見るときに注目すべき事は、「黄色いラインが常にオレンジのライン付近を波打っているか、または、何小節目の何拍目など”一瞬だけ”でオレンジのラインが引かれているかどうか」ということです。

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音楽は時間経過と一緒に変化していくものですので、常時ピークライン付近を出し続けているのと、瞬間的にだけピークを出すのとは人間の耳にとって聞こえ方が違います。一瞬だけなら許容できるピークでも、常時出し続けられるピークでは辛い音になりがちです。そうした事を考慮して、ピークラインを見る方が良いでしょう。

ちなみに「Response」というパラメータは、解析する頻度(速度)を変えるパラメータで、値を小さくするほど波形の動きが俊敏になると思います。ピークに対してどれくらい出続けているのかを見るときに、このパラメータはなかなか役立ちます。

ところで、そのピークラインは平均して「横一直線」になっていないでしょうか。「全然バラバラ」という場合は、面倒ですがお気に入りのアーティストの楽曲に切り替えてみてください。そうすると恐らく、いくつかの楽曲での結果を平均すると、割と横一直線になっているかと思います。

これは、特別理由がない場合、なるべく横一直線になるようにミックスやマスタリングで整えるものだからです。所詮アナライザは「目安」でしかなく、最終的に耳でエディットしますから、誤差は出るのは当然で、むしろ「完璧に横一直線」というのが必ずしも良いとも言えません。ただ理想として、横一直線であれば様々な再生環境に対応できるバランスを持っているとも考えられるわけで、基本的には横一直線を基準にするというのが目安となるわけですね。

では、今度は自らの楽曲を「WAVES PAZ ”Frequency” ANALYZER」に通してみましょう。恐らく「低音側」や「16,000辺り」がやけに盛り上がってしまっているのではないでしょうか?この状況は、例えば低域の場合、ありのまま再生できる高品位な音響システムで再生すると、低域が高域をかき消すくらいの量感で出てしまい、場合によってはリズム感がバラバラになってしまうなど、思いもよらない状態になりやすいといえます。従ってキックやベースのバランスを見直した方が良いでしょう。

とはいえ素直にグッとレベルを下げると、迫力?とか重さ?とかが失われてバランスが悪くなったように感じる場合もあるかと思います。しかし、ミックスでの真骨頂は、こうした状況でも何らかの方法で「低音感」を作り出す事にあります。そうした「今自分がしないといけない事」を見つけるために、アナライザーはとっても役に立ちます。

WAVES S1 ステレオイメージャー

「ステレオ」というのは、2つのモノラルで成り立っているものです。つまり一つ一つのモノラル、という観点で見ると、片方に音を詰めすぎると音が団子になって見えなくなってしまいます。逆に、例えば、テトリスで言う所の「段」の並びがデコボコでなく、平坦になるようなイメージで左右に音を配置すると、それぞれの音が際立ち、レベルを上げたりしなくても引き立ってきます。そのために重要なのが、定位の調整(パンニング)ですね。

WAVES S1 ステレオイメージャーは、そうした定位を操るプラグインです。例えばモノラル音源(ボーカルやギターなど)であればDAWのPANで調整すれば事足りますが、シンセサイザー・パッドなど、空間を覆うような音の「広がり感」を調整したりするのに非常に重宝します。

使い方も簡単。Widthで広がりの程度を、Asymmetryで奥行き感を、そして全体のパンニングをRotationで調整するだけ。実際に聞きながら程度の良い所を見つけるような使い方で大丈夫だと思います。

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ちなみに僕の場合では、ボーカル・スネア・リードシンセやシンセパッドなどがセンターに詰まり過ぎている場合、ボーカル・スネアを僅かに左または右へずらし、それでも足りない場合に、このS1でリードシンセやシンセパッドの広がり感をコントロールしたりして使っています。

Q10 10バンドイコライザー

普通パラグラフィック・イコライザーとは4バンドや6バンドが一般的ですが、本製品はなんと10バンドも用意されたパラグラフィック・イコライザーです。ちなみにパラグラフィック・イコライザーというプロセッサーには「ゲイン、フリークエンシー、Q」というパラメータが用意されるのが一般的ですが、その「可変ステップや可変幅」によって個性を価値つける側面を持つ傾向があります。

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そういう側面からいえば、このQ10は非常に細やかに、さらに非常に幅広いエディット能力を持ち、万能的なイコライザーといえます。音質変異も極めて少なく、できるだけ原音に影響を与えず、わがままなエディットをすることを得意としています。特に10バンド全てで個別にフィルタータイプを選べるため自由度が高く、様々な場面で重宝するでしょう。僕個人的には悪く言えば面白みの無いEQ、よく言えばとても素直なEQ、って思います。

C1 ダイナミックイコライザー

ダイナミックイコライザーとは、イコライザーでフィルターされた特定の音域にのみコンプレッションができる、イコライザーとコンプレッサーのハイブリッドのようなプロセッサーです。例えば2MIXで、スネアとシンセが被っている状況だけどもスネアだけ、若干持ち上げたり落としたいときに、スネアの音域だけをフィルターでパスし、パスされたスネアにだけコンプレッサーをかける、というようなエディットを実現することができます。

またフィルターを利用しなければ一般的なフルレンジコンプレッサーとしても利用できるので、例えば楽器にはフルレンジコンプレッサーとして、バスやマスターにはダイナミックイコライザーとしてこの用途で何かと重宝する一品です。

本製品はエキスパンダー/ゲートとしての側面も持ち合わせています。例えばボーカルレコーディングにつきももの問題でもある環境音などの「微弱なノイズ」が乗り続けているテイクを使う場合に、エキスパンダー/ゲートを使ってあげるとノイズ成分を消す(抑える)ことができます。(正確には、消えたように見せかけることができるだけで、取り除ける訳ではありません)

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ゲートは、文字どおり「門」なので、スレッショルド”以下”なら門が閉じられる = 無音になります。エキスパンダーは、スレッショルド”以下”の音をコンプレッションするので、ノイズを目立たなくすることができます。

それともう一つ、C1は単なるコンプレッサーとしても素敵な特徴が。それは「非常に早いコンプレッサー」であるということ。アタックタイム(コンプが作動するまでの時間)を最大0.01msまで設定できるので、ドラムでの用途には非常に重宝します。

コンプレッサーの多く(特にアナログモデリング系)は、かかり始めるまでに時間がかかる物が多く、対象のアタックからコンプレッションしたくても使えない場合があるんです。(ハブォッ!みたいに変にひっかかる)なので、アナログモデリング系の色が欲しい場合でも前にC1を用いて誤魔化すには最適な訳です。

さて、そんな万能なC1ですが、注意点としてはレイテンシー。マルチトラックの中でC1を使う/使わないトラックでは若干レイテンシーの差が生じ、気になる場合があります。気にならない人も多いと聞きますが、僕はどうしても気になる。。DAWに自動レイテンシー補正などがない場合は注意するべきだと、僕は思います。

MaxxBass 低域補正プロセッサー

さて、ここまで我慢強く読んでくださった方のための御礼といいますか、ちょっと異種系(でも使ってる人は多い)プロセッサーMaxxBassのご紹介です。最初に紹介したPAZのくだりでお話した、「低域をグラフィック上では良い感じに慣らしたものの、物足りなくなってしまった」時にできる解決テクニックの一つを、このMaxxBassが担ってくれます。簡単に言えばMaxxBassは、ベースをリッチにしてくれるプラグイン。音のふくよかさというのは倍音との関係がなんたら、、、と雑誌などで見かけますが、つまりは、そういうようなものを”ワンタッチ”でベースに付加してくれるプロセッサーです。

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具体的な用途としては、元となるベーストラックにMaxxBassをインサートし、60hとか80hz辺りにあることが多い「ベースのフレーズがより引き立つ」帯域にセットして、あとは元となるベースとMaxxBassが生成した補強サウンドのバランスをとるだけです。つまり、家庭用のスピーカーやヘッドフォンでも十分再生できる帯域にベースの成分を生み出すことで、様々な環境でも”聞こえる”ベースを作るわけです。

PAZで低域が大きくなりすぎていたのは、低音成分の「山のてっぺん」が聞こえない帯域で、山の麓とか一合目に当たる部分が聞こえるところだったものですから、麓を基準にレベルを上げていけば当然てっぺんはトンデモなく高いところに。。という原理ですね。この原理が原因で低域が物足りなくなっている場合には、このMaxxBassであっさりと解決できるでしょう。

L1 マキシマイザー

始めて「WAVES」というブランドを耳にしたのが「L3」というマキシマイザーがきっかけで、という人は多いのではないかと思います。そのL3の礎でもある初代マキシマイザーが、このL1です。L1、L2、L3って何が違うの?というと、もう全然違うんですが「優秀にマキシマイズしてくれる」という点においては、全てに共通した特徴といえるとおもいます。

僕個人の感想としては、、、

  • L2はクリーン
  • L3もかかりはクリーンでL2以上に音圧を稼げるけど、バランスが変わったりする
  • L1はクリーンさではなく「パワー感」を持っている

という位置づけですので、L1はもっぱら「暴れた感じ」を作る為の音作りのプロセッサーとして使っています。

さて、使い方は簡単。まずは「Out Ceiling」を-0.3dbとか-2.0dbとかに設定します。これは「dbの天井」を決めるパラメータで、これ以上のdbが出ることはない、という設定を行います。

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その上で、Thresholdを下げていくと、、、音圧がどんどん上がっていきます。Thresholdを下げすぎると、だんだん歪んできます。嫌ならば戻し、もっとグチャッとしたい時はThresholdを更に下げれば良いでしょう。つまりお好みです。

多くの方は、こんな感じで利用していると思います。が、もうワンステップ踏み込んでみましょう。まずRELEASE。RELEASEはThresholdと相互関係にあるので、まずはThresholdを知る必要があります。

まずマキシマイザーはコンプレッサーの一種なので「あるレベルに到達した時点で動作を開始する」という動作をします。そのレベル値がThreshold。そしてレベルがThresholdを下回ると動作はオフになります。

ただし、急激に可変すると自然な効果が得られない為、ゆっくりと効果が弱まっていく、そのスピードがRELEASEです。ですから音数の多い/少ないで適切な値は変わってくるとも言える訳ですが、基本的には8.0ms辺りが妥当になるんじゃないかと思います。

次にDomain。不思議な話ですが、Ceilingで設定された値はデータ受け渡しの間では超える事がありませんが、不思議な事にアナログコンバートされると超えてしまう事があります。それを想定してバウンスするかどうか、という感じのパラメータです。

アナログコンバートしようが何だろうが、絶対にCeiling以下にレベルを抑えたい時はパラメータを「Analog」にしましょう。「Digital」にすると、そうした不思議な事が起こる可能性があります。

出典:YouTube

つぎはIDR。これは結構ややこしいので、覚悟してください。。IDRはバウンスする事を前提として人間の聴覚とか音響心理学的な事を取り入れて施される処理になりますので、僕のように音作りで利用する場合はOFFにするべきです。マスターに挿して使う場合は、オンにすると良いですね。

さて、そんなIDRですが、どんな事を基準に施すのか、を決めるのが次の3つのパラメータです。

Quantize

バウンス(書き出し)するBit値まで考慮にいれてIDRは動作するので、適切なBitを選択することで最も効率の良い結果が得られます。つまり書き出しファイルが24bitなら、Quantizeの値も24bitにすると良い、ということですね。

DITHER

例えば24bitから16bitに落とす場合、24bitで表現できるものが16bitでは表現できなくなります。その時に16bitでは「近似値」に置き換えたりするのですが、それだけだと不自然になるそうです。

そこで、近似値付近を「ぼかして曖昧」にして、聴感上の不自然さを消すのがDITHERです。通常はType1にするほうが自然な表現が得られると言われますが、楽曲によっては非常に小さいレベルの音に対してディザーが適応されノイズ感が気になる場合があるので、そんな時はType2を用いるのが良いでしょう。

SHAPING

DITHERで生じたノイズを目立たなくさせる為のパラメータ。ノイズが目立って良い事はないので、UltraかNomalに設定するのが一般的のようです。

というわけで、初回はこのへんで。次回もお楽しみに!

画像出典:Waves

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