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モジュラー vs カッティングマシン!一発録りの極みダイレクトカッティングにチャレンジ

ダブプレートの制作方法の一つダイレクトカッティングをご存知でしょうか?ダブプレートの制作では、マスタリングまで終えたオーディオファイルを使用するのが一般的ですが、ダイレクトカッティングではライブ演奏中の音声信号をそのままレコードに刻んでいきます。レコーディングの手法に一発録りというものがありますが、ダイレクトカッティングの場合、一発録りするメディアがレコードというわけです。

昨年末にTokyo Festival of Modular(以下、TFoM)主催で開催されたCafe Deluxeで、モジュラーのライブ演奏をダイレクトカッティングしてみたのですが、ベストなカッティングとはいきませんでした。。そこで今回、TFoM主催のHATAKENさんを招き、再度モジュラーのダイレクトカッティングにチャレンジしてみました。

ここからはさすがのパフォーマンスを披露してくれたHATAKENさんに、ダイレクトカッティングやダブプレートについてお話を伺ってみたいと思います。

外ではカセット、家ではレコード

CUT&REC:HATAKENさんは、どんなレコードを聴かれてきたのですか?

HATAKEN:ロックとかパンクが好きだったので、その辺りですね。レッドツェッペリンやディープパープル、そしてジミヘンなど、よく聴いていましたね。

CUT&REC:初めて買ったレコードって何ですか?

HATAKEN:初めて買ってもらったのはゴダイゴのMagic Monkeyだったと思います。小学校5年生くらいですかね?西遊記というドラマのタイトル曲が入っていて、買ってもらった最初のLPでした。

実はその時、YMOの増殖(X∞Multiplies)の方が欲しかったのですが、なぜか却下され。。なので自分で買った最初の一枚は、YMOの増殖です。このYMO体験が色々な意味で自分の人生観を楽天的にさせてしまったというか、何かハマれるものを見つけてしまう最初の体験でした。

CUT&REC:その頃音楽を聴くメディアとしては、レコードが一般的だったのですか。

HATAKEN:そうですね。外ではレコードから録音したカセットテープを聴いて、家ではレコードを聴くというような感じでした。レコードは丁寧に扱うものと思っていたので、DJを見たときはカルチャーショックでしたね(笑)。

中学生の頃はレコードなんてそうそう買えるもんじゃなかったんですが、高校生か大学生の頃に輸入版が安く買える時代になって、そのおかげであらゆる音楽を聴くことができたり、カセットテープを友達に渡して録音してもらったり、日常茶飯事でしたね。

Youtubeなんてないから、全て音を聴いてそこから想像るする世界だったので、『レコードを聴く』ことだけに集中する時間が日常的にありましたからね。

CUT&REC:レコードに対してどのような印象をお持ちですか?

HATAKEN:レコードに対するリスペクトとして、CDよりも高い周波数帯域を収録できたり、環境によっては収録された空気感までをも再現できたりというところがあります。

モジュラーとカッティングマシンの共通点

CUT&REC:昨年末に開催されたCafe Deluxeでは、出演者の方々のライブをダイレクトカッティングさせてもらいました。イベント当日の現場でダイレクトカッティングすることが決まったので、思うようなカッティングができませんでした。。その経験から今回はリベンジマッチ的な意味合いもあり、それなりの準備をしてお待ちしておりました(笑)。今回使用されたモジュラーは、前回と同様のセットなのですか?

HATAKEN:以前はパフォーマンスごとにモジュラーを入れ替えてやっていたのですが、ここ1年くらいは落ち着いたというか、ほぼ同じセットでパフォーマンスしています。でも、新しいモジュールが出るとセットに導入したくなっちゃいますね(笑)。

CUT&REC:モジュラーって自分が好きなモジュールを組み合わせてオリジナルのサウンドを作り出していくと思うんですが、CUT&RECで使用しているカッティングマシンも同じなんですよね。ベストなクオリティのために、ターンテーブルやアンプ、そしてオーディオI/Oなどをチョイスして、カスタムしています。それらの要素によってCUT&RECの音が作り上げられています。

HATAKEN:確かに自分好みのサウンドを追求してモジュールをチョイスしていくモジュラーと同じですね。

空気感までも収録できるダイレクトカット

CUT&REC:ご自身のサウンドをダイレクトカッティングしてみて、レコードとモジュラーの相性ってどうですか?

HATAKEN:モジュラーシンセは低い周波数帯から高い周波数帯までレンジがとても広いんですが、CDなどに比べて高い周波数帯域も収録できるレコードは、モジュラーとの相性も良いと思います。それとテープでもデジタルでも、一度他のメディアに録音してしまうと音って変わっちゃうじゃないですか。それがダイレクトカッティングだと、空気感までもそのままレコードに収録できるので、ライブとの相性も良いと思います。

モジュラーでのパフォーマンスでは、突発的に高音が発振したりするので、レコードに収録するのはとても難しいと思うんですが、今日のようにきちんとセットアップされていれば、ダイレクトカッティングが一番理想的なレコーディング方法なのかなと感じますね。

CUT&REC:前回のCafe Deluxeでは、入力される音声信号のレベルもきちんと調整できていませんでしたし、入力チャンネルにリミッターも使用していませんでした。そのような状況ではモジュラーの醍醐味とも言えるダイナミクスについていけず、針が飛んだみたいな(笑)。今回はリミッターも使用してみましたし、問題なくダイレクトカッティングできました。

HATAKEN:Cafe Deluxeでは、スピーカーの横にカッティングマシンを設置していましたしね。環境的にはかなり厳しかったですよね。

Photo: Hiro Ugaya

CUT&REC:確かに振動が大敵ですからね(笑)。でもあの経験を経たからこそ、成長できた部分はありますね。今回はそのような経験を踏まえて、現在可能なベストのセッティングでダイレクトカッティングしてみました。実際にダイレクトカッティングしたダブプレートを聴いてみていかがですか?

HATAKEN:モジュラーのサウンドに比べても全く遜色ないですし、音のバランスと粒立ちも良いです。

CUT&REC:音の粒立ちの良さは、レコードならではなのかなと思います。デジタルだとこんなに音がパキッとしないですからね。今回改めてモジュラーの音と対峙してみて、やはり一つ一つの音にパワーがありますよね。そのモジュラーが持つパワーがそのままダブプレートに収録されていて、モジュラーとダイレクトカッティングの相性の良さを感じました。

HATAKEN:ダブプレートをマスターとして使用できそうですし、ダイレクトカッティングには探求の余地がありますね。

CUT&REC:その辺はもっと詰めていきたいですね。

HATAKEN:そうですね。自然なコンプレッサーを加えるためにテープに録音したりという手法もありますが、ダイレクトカッティングならそのような工程もいらなそうですね。音のディテールがはっきりしている分、コンプなどを使って音を持ち上げる必要もないですし、空気感っていうんですかね、それがすごく良いなと思います。

ダブプレート=一点物の絵画

CUT&REC:HATAKENさんとは2枚のダブプレートを制作しましたが、音源をレコードにする意味ってどこにあると思いますか?

HATAKEN:一発録りの緊張感の中でダイレクトカッティングするのは、すごくおもしろいですよね。緊張感から生まれる、たった一枚だけのダブプレートには、新しい価値観があると思います。

普段はデジタルファイルで録音した音源をアップロードしてシェアしていますが、それが自分にとって最も理想的な方法かというとそうではなく。。それよりも素の音に近い状態で、そのまま伝わる方が良いわけですからね。

CUT&REC:モジュラーでのパフォーマンスもダイレクトカッティングも、どちらも一発勝負だと思うんですが、そこのガチンコ感が、こちらとしてもおもしろいです。このような一発録りシリーズを世に出せるとおもしろそうですね。

HATAKEN:一発録りでレコーディングできて、マスターとしても活用できることを考えると、モジュラーでパフォーマンスするアーティストの多くが、興味を持つと思います。

CUT&REC:前回のCafe Deluxeに参加した際には、出演者の皆さんのダブプレートに対するモチベーションの高さを実感しました。現場の環境などを考えると片面20分までの収録が限界かなと思い、それを出演者の方々に伝えたら、元々25分だったライブの時間を20分にまとめていましたからね(笑)。

HATAKEN:モジュラー抜きにしてもアーティストは、レコードをリリースして初めて価値が認められるようなところもありますからね。それを意識しているアーティストも多いと思いますし、DJにも使ってもらえるような作品が作れたらすごくおもしろいと思います。一点物の絵画と同じノリですね。

Photo: Hiro Ugaya

CUT&REC:今回のリベンジマッチのおかげで、こちらの準備が間違っていなかったことも分かりましたので、改めてTFoMなどでご一緒させていただきたいですね。

HATAKEN:11月の18日と19日にRedbull Studios Tokyoと渋谷のクラブcontactでTFoMを開催します。Redbull Studios Tokyoでは、モジュラーの展示を行い、contactではゲストアーティストのライブを行います。11月のTFoMで絡めたらおもしろそうですね。

CUT&REC:モジュラーとダイレクトカッティングはパンチがありますからね。何かおもしろいことができないか考えてみます。今日はありがとうございました!

*ライブ演奏の音源がHATAKENさんのMixcloudにアップされていますので、こちらもぜひチェックしてみてください!

Side A:

Side B:

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