ギター業界を揺るがすローズウッド不足。ギブソンや世界最大の楽器店ギターセンターなどの経営不振の一因に

味のある木目と上質で深みのある音で、高級な木管楽器やギターに用いられるローズウッド。米メディアDigital Music Newsによると、ローズウッドの新たな規制により、ギターメーカーがその製造に必要とするローズウッドを確保することが難しくなっているそうです。

以前のワシントン条約では、特に希少とされるブラジリアン・ローズウッドのみ規制対象となっていました。しかし、2017年に導入されたローズウッドに関する新たな規制により、世界各国に生育している300種を超えるローズウッド全種に取引制限がかかり、そのような状況に陥っています。

しかしこれはギターだけに限った問題ではありません。国連薬物犯罪事務所の調査によると、野生植物の違法な国際取引量がもっとも多いのが、ローズウッドであることが確認されています。中国の家具業界などの需要の高まりにより、日常的に違法な伐採が行われている国も存在し、これが資源の枯渇に拍車をかけています。

このような状況に対して、ギターメーカーの見解は分かれているようです。

環境保護に取り組んでいるBedell GuitarsのTom Bedellは、ローズウッドの伐採量を規制する改正案に賛成しています。彼はギター業界が熱帯雨林に与えた影響は少ないとしながらも、AP通信に対して次のように話しています。

家具用の木材の取引量を制限するためには、全種類をリストアップする必要がありました。これからもローズウッドを使うのならば、これは非常に大切なプロセスです。

対して、200種類以上のアコースティックギターにローズウッドを使用しているC.F. Martin & Co.のCEO、Chris Martinは「とても憤っており、がっかりしています。」と語っています。

Music Trades誌によると、条約改正の余波を受けて、米国のアコースティックギターの輸出量は28%も減少しています。また、エレキギターも23%減少しており、小売業界では6000万ドル(約64億円)の損失が報告されています。

先日、明らかになったギブソンの破産危機も、ローズウッドの取引制限が一因となっており、世界最大手の楽器店「ギターセンター」も不況にあえいでいると伝えられています。

条約の改正により、今後も同様の状況が続くことが予想されるギター業界。時代に適した変革が求められそうです。

出典:Digital Music News