• このエントリーをはてなブックマークに追加
ARTICLE

これから再評価の波が来る…かも?グルーヴギアの世界

soundrope読者の皆さん、こんにちは。前回のハードウェア・サンプラーの記事に大きな反響を頂きありがたい限りです。そこで、今回も過去を振り返りながらこれからのトレンドを占いたいと思います。

今回のテーマは「グルーブギア」 。これは90年代終わりから2002年頃まで流行したDJ向けのハードウェア機材で、グルーヴ・ボックスとも呼ばれます。大半の機種が「これ一台でトラック制作が完結」できるように音源/シーケンサー/時にはエフェクターも内蔵しており、有名な機材としては1996年に登場したRoland MC-303やその翌年に発売されたKorg Electribeシリーズ、Akai Professional MPC2000などがあげられます。

元祖グルーブギア=Roland MC-303

まずは、グルーブギアがどういう機材なのか、MC-303のプロモ動画をご覧下さい。僕も初めて見たのですが、初っぱなから「あの頃」のキラキラした映像にやられました。笑

出典:Youtube

“Groovebox”と銘打たれたMC-303は、コンパクトな筐体にTR-909/TB-303/Juno-106/Jupiter 8などRoland名機のサウンドを収録した音源と、それを鳴らす8トラック・シーケンサーにエフェクターを内蔵。これ1台でテクノやヒップホップ〜ジャングルまで作ることが出来る!という触れ込みで登場しました。

また、背面にある”Low Boost”ツマミで低音をバッコリと強調することが可能で、ライブ向けにツマミでリアルタイムに音を変化させるRealtime Modify機能を搭載し、今でも商品コンセプトは魅力的だと思います。価格も6万円を切る当時としては衝撃の価格で人気を博しました。このグルーブギアの特色については、2002年9月号のサウンド&レコーディング・マガジン誌の特集「クラブ・ミュージック制作はこれ1台でOK!注目グルーブギア16機種を大紹介」で上手くまとめられています。

・LEDや光るパッド、ツマミ/スライダーを豊富に装備した操作性重視の作り
・ダンス・ミュージックに特化された”旬な音”満載の音源部
・音楽スタイル別に多数用意された内蔵プリセット・パターン
・ツマミによる簡単操作で強力効果のエフェクター
・パッドの並びで直感的にフレーズ生成できるシーケンサー
・トラック制作に幅を持たすことができるサンプリング機能

なんと、今時の機材ではごく普通のことばかりで、グルーヴギアのDNAは現在でも脈々と受け継がれていることがわかります。当時と比べて音源部分がPCになったりフルアナログに行ったりと変化もありますが、この「一回りした」感、もしかしたらグルーブギア再評価の波が来るかもしれません。

ただ、かくいう僕もMC-303を一時期所有していたものの、あまり使わないまま手放してしまいました。というのもMC-303のインターフェイスは、当時としてはコンパクトな筐体に機能を詰め込みすぎで、1つの操作子に様々な機能が割り当てられています。そのため、何をするにしてもボタンを連打して(もちろんお家芸のShiftキーもあります)操作する機能を切り替える必要がありました。プロモ動画をよく見ていると、ツマミよりも本体中央部のボタンとダイアルを触っています。

しかし、機材は使う人のセンス次第。スペインで90年代から活躍するBran Lanenは、MC-303だけでカッコイイパフォーマンスをしています。そのサウンドは流石に時代を感じますが、独特のチープさが逆に今ならアリかも?とも思えます。今のヤフオクの落札相場は5,000円前後。狙うなら今がチャンスです!笑

出典:Youtube

RolandはこのGroovebox路線を踏襲し、1998年に登場したMC-505は、音源を強化してフェーダーやD-BEAM(テルミンのように手でサウンドをコントロールする機能)やフェーダーを搭載しヒット製品となりました。その後Rolandはどんどん機能を盛り込む方向に進み、新機種の度に装備が増えサイズも大きくなり、マスタリング機能を搭載した2002年発売のMC-909を最後にGrooveboxという名前もなくなっていきました。

機材も多様化?グルーヴギア百花繚乱

さて、このグルーヴギアは1997〜2002年前後をピークに様々な製品が発売され、珍機種も紹介しきれないくらい数多くありました。この頃はクラブミュージックが大流行してDJブームとレコード・バブルが起こり、渋谷のレコード屋の入荷日には開店前から行列が出来ていた時代です。

中でも特にユニークかつレアなのが、Vestaxがグルーブギア後期の2003年に発売したFader Board。SHING02が開発に関わったDJ向けのシンセサイザーです。鍵盤の代わりにフェーダーで演奏する構造で、Ableton Pushのように音階はキーとスケールを指定できるので、楽器の弾けないDJでも演奏することが出来ます。ただ、演奏を見ているだけではその魅力はよくわからず、真の実力は触ってみないとわからない…この難解なコンセプトと10万円を超える定価で、稀少機種となっても仕方が無いという感じはします。笑

僕も知り合いがFader Boardをノイズ生成機のように使っているのを見たことあるのですが、よくわからないながらもぶっ飛んだ音の出る機材の一つでした。なんと、soundropeにも寄稿しているOTAI RecordのようすけさんがこのFader Boardを解説している動画もあります。

出典:Youtube

グルーブギアその後

さて、このグルーブギアは2003年あたりから急激に失速します。理由は色々考えられますが、当時DJブームが一段落した影響や、コンピューターが高性能になりソフトウェア音源が普及した影響もあるでしょう。また「これ1台で完結!」と謳った巨大なグルーヴギアでも、ワークフローや作れるサウンドの幅の広さを考えると結局は様々な機材を揃える必要があります。そうなってくるとコストもかかり設置場所も増え、結線やらMIDIの設定もややこしくなり、結局行き着くところは「コンピューター使った方が楽」になってしまったのです。

ところが歴史は繰り返すもので、2011年発売のNative Instruments Maschineや、その後のKorg Volcaシリーズあたりから、グルーブギア再来ともいえる製品が登場してきたのは面白い流れです。そのためグルーブギアも再評価されて良さそうなものですが、いまのところその気配はありません。これらの機材にプレミア価格がついているものは少ないので、中古を掘ってみるのも楽しいと思います。僕も書いていて、近所のハードオフで5年間在庫になっているFader Boardが気になってきました。笑

さて、最後にトーク&ライブセッションのお知らせです。5/27(金)に恵比寿Liquid Roomの2F「Timeout Cafe & Diner」で行われるDifferent Directions (:D) というパーティーに出演します。東京のエレクトロニックミュージック・レーベル=moph recordsのmergrimくんオーガナイズのパーティーで、オールナイトでは無く18時から24時までです。

僕がAbleton Linkを使った「セッションやろうぜ」的なトークセッションをして、実際にLinkを使ったセッションを行います。一緒にセッションするのは、会場の音をサンプリングしてリアルタイムにビートを組むBervatraと、ホーメイ奏者の笠原夏樹さんというAbleton Meetup Tokyoに縁のある2組。エクスペリメンタルな組み合わせだけにどう転ぶか想像がつきません。エントランスも安いので興味のある方は是非ともよろしくです!

Different Directions (:D) #15 FaceBookイベントページをチェック

この記事をSNSでシェア!