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FEATURE

クラブイベントの新しい形。テクノロジーと音楽を融合した体験型アートエキシビジョン『ex:theory』

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テクノロジーと音楽アートをコンセプトに渋谷PLUGで開催されたアートエキシビジョン「ex:theory」。ex:theoryは、サイケデリック・ジャムバンドDachamboのメンバーでもあるCD HATAが主催したイベントで、昨年リリースされた彼自身のアンビエント作品「Five Phases Theory」の集大成として、テクノロジーを組み合わせた一般的なライブイベントとは異なる形式で開催された。

このex:theoryは前編と後編に分けられ、前半ではLittleBitsのシンセサイザーのデモンストレーションや、ハイレゾ音源に関するトークセッションが行われた。そして後半の本編では、CD HATAのアルバム「Five Phases Theory」を軸に、SATORU、KOYAS+VJ tajif、Matsusaka Daisuke+fishu、CD HATA+VJ TONTONによる音と映像のセッションが行われた。

テクノロジーと音楽アート。soundrope読者なら気になるであろうキーワードが掲げられたこのex:theoryに潜入し、主催者のCD HATA氏にインタビューを行った。

ex:theoryは「Five Phases Theory」の一つの集大成

ーー ex:theoryでは「テクノロジーと音楽アート」がコンセプトとして掲げられていますが、なぜこのようなコンセプトでイベントを開催されようと思われたのでしょうか?

渋谷PLUGが音響面、映像面に力を入れ改装するという計画を聞いていて、改装した際はそこで何か面白いことをやって欲しいと相談されていました。改装後のレセプションにお邪魔した時、この設備をフルに使ったイベントをやりたいなと思い、イメージを膨らませていきました。

いわゆるパーティースタイルの方向にもって行くと、その場の快楽性に比重がいってしまうので、そういうのも非常に好きなんですが、今回は座って観てもらうようなスタイルで魅せたいと思ったんですよね。

昨年、自分のアンビエント作品「Five Phases Theory」をリリースしていたので、それを軸にFive Phases Theoryの一つの集大成、そこにテクノロジーを組み合わせた、通常のライブイベントとは一味違ったアートエキシビジョン、新しいライブハウスでの表現をしようと思いました。

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ーー ex:theoryでは、前半はlittleBitsのシンセサイザーのデモンストレーションとハイレゾ音源に関するトークセッション、後半はライブセッションと2部構成で開催されていましたが、このような形態で行われるイベントはとても珍しいと思います。なぜこのような形態でイベントを開催されようと思われたのでしょうか?

このイベントは、CD HATAを中心にゆかりのあるクリエイター達でプロデュースしました。Five Phases Theoryをリリースしたレーベル「psymatics」の主催者KOYASくん、野外キャンプイン・アンビエントイベントなどもやっている「Off-Tone」の主催者Matsusaka Daisukeくん、「Sunset The MARINA」や「The CAMP」の主催者SATORUくん達です。通常のライブイベントとは違ったアプローチをしたいなと思い、みんなでいろいろアイデアを出し合いました。

例えば、ガジェット系アイテムの展示スペースをつくったり、演奏者のセッティングの入れ替えは無くやれることが見えていたので、各自10分程度を何セットか、細切れのような演目にするなどアイデアも出ていたのですが、展覧会的な方向にはさせたくはなく、オープンから終演までが、一つの物語になっているようなイメージで考えていったんです。

前半のトークやデモンストレーションも講演や説明会というよりは、演劇を観るような感覚で楽しめるように意識したので、司会にはほそかわゆみちゃんに手伝ってもらったり、前半から後半に向けて、NATACHAさんのベリーダンスで導いてもらったりといったストーリーで組み立てました。

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ハイレゾは大きなお皿に余裕を持って盛りつけられるようになった感じ

ーー 近年では誰でも気軽に楽しめるlittleBitsのようなガジェット的なシンセサイザーのリリースが目に付きますが、このようなシンセのどのあたりに注目されていますか?

音楽的な知識が無くても楽しめる所や、普通の楽器にはない刺激ですかね。ルックスが面白かったりも大事な要素だと思います。

ーー ガジェット的なシンセの中でなぜlittleBitsを選ばれたのですか?

littleBitsは楽器にもなるんですが、自由に組み立てて新しいものをつくることができます。今回のイベントのテーマの一つでもあった、新しいことへの挑戦にもマッチしていたと思います。

KOYASくんと共に、齊藤くん、森谷くんという、日本に5人いるAbleton Live認定トレーナーのうち3人が揃ってデモンストレーションをやってくれました。認定トレーナーだけあって、知識はもちろん、トークスキルも高いので、話も面白かったですよ。

また、その面白さを引き出していた、ほそかわゆみちゃんの司会も最高でした。littleBitsという子供も遊べる大人のおもちゃに真剣にたわむれている3人を従えた女王様みたいでした(笑)。

ーー ガジェット的な楽器はユーザーに何をもたらしてくれるとお考えですか?

セオリーに縛られない自由な発想。時として予測していなかったことが出てくるようなワクワク感もありますね。

ーー 近年の音楽制作機器においてはハードウェアへ回帰傾向にあると言われていますが、ハードウェア機器の魅力はどこにあるとお考えですか?

触った感覚がストレートに伝わる安心感。これしかできないけど、これをやらせたら他には負けないよ!という不器用かもしれませんが、その分の強みもあると思っています。

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ーー ハイレゾ音源に関するトークセッションも行われていましたが、ハイレゾ音源の需要は高まっているのでしょうか?

新しいフォーマットというのは常に産み出され、求められていると思います。それが効率的な圧縮という方向だったり、データ量が多くても、通信速度の高速化や、記録ディスクの大容量化でストレスなく取り扱えるようになってきたというのもあって、ハイレゾ音源も浸透していっていると思います。

ーー ハイレゾ音源の魅力はどこにあるとお考えですか?

単純に言うと高音質ということだと思うんですが、音質というのは突き詰めると個人の好みの問題ということになると思います。ただ、まるですぐそこで演奏しているように感じるくらい良い音で音楽を聴くと感動しますよ。ハイレゾ音源はそういった感動を産み出せる存在だと思います。

ーー 現場レベルでは、ハイレゾ音源に対応するために、これまでの楽曲の制作やミックス・マスタリングの方法に変化などは出てきているのでしょうか?

今までは、CDの規格に落とし込む為に、例えて言うなら、小さなお弁当箱に多少無理して詰め込むようにしていたものを、大きなお皿に余裕を持って盛りつけることが出来るようになった感じですかね。

ハイビット、ハイサンプリングで制作していたものも、最終的にCDフォーマットに変換しなくてすむので、無理していたことを無理せずそのまま出せるようになった感じでしょうか。無理に変化させていたものを自然に出せるようになったのかもしれませんね。

アナログレコードがカッティング技術者のテクニックやノウハウで音質が変わったり、CDも黎明期よりノウハウの構築で音質の向上があったと思うんですが、ハイレゾ音源ならではの聴かせかたという部分では、この先ノウハウが構築されていくことで、よりクオリティーは上がってくると思います。

面白いことやる人はどんな道具を使っても面白い

ーー イベント後半のライブセッションでは最先端の機材を使用されていましたが、どのような機材を導入されていたのでしょうか?また、それらの最新機材は、ライブセッションにおいてどのように活用されたのでしょうか?

映像に関しては、渋谷PLUGに導入された4Kのプロジェクターでのマッピング、フロア側面の横幅を活かした、プロジェクター3台を横並べに使ったマッピング。この設計は、teamLabがやったそうなんですが、今回のイベント用にカスタマイズした部分もあります。

音響に関しては、デジ卓(Digico SD9)の導入によりクリアな音質になったので、それに合うチューニングもしっかりやりました。また、フロア後方にスピーカーが足されたので、それを利用したサラウンド的な(厳密なサラウンドとはちょっと違うんですが)、音遊びもやってみました。

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ーー 子安さんのライブでは、手の動きによってコンピュータの制御が可能なデバイスのLeap Motionを使用していましたが、実際にはどのようなコントロールを行っていたのでしょうか?

今回は、Leap Motionの上で手を動かすとサウンドが変化し、それにあわせて映像も変化するようにセットアップしました。Leap MotionからGeco MIDIというLeap Motion用アプリを経由して、Ableton Liveをコントロールしています。

Live内ではシンセWaldorf RocketとドラムマシンAKAI Rhythm WolfにインサートしたマルチエフェクターSugarBytes Turnadoを制御していて、Leap Motionの上で手を動かすとRocketのフィルターが動いたりTurnadoのエフェクトが変化したりします。

こうやって変化させたサウンドをセンドエフェクトでVJ TajifくんのPCに送り、opticious Modul8で入力された音声信号をトリガーにして映像のパラメーターを変化させています。

ーー テクノロジーはまだ見たことのない表現を可能にしたり、その実現を簡略化してくれる反面、その簡易さからオリジナリティを持った作品が生まれにくい状況にもなり得るかと思います。CD HATAさん自身はテクノロジーとの関わり合い方やその優位性についてどのようにお考えですか?

発達したテクノロジーも道具の一つなんで、結局は使う人間次第ですよね。ツールのバリエーションが増えることはいいことだと思います。

面白いことやる人はどんな道具を使っても面白いことやりますし、ただ自分は新しいおもちゃ好きなんで、どんどん新しいおもちゃが出てきて、その新しいおもちゃで遊んでいけることは喜ばしい事だと思います。

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ーー 今後テクノロジーの進化は音楽と映像においてどのような影響を与えるとお考えですか?

作り手側の視点としては、ホログラムだったり、VR、AR、MRなど面白そうなテクノロジーの中で、音楽で遊べそうな話題がどんどん出てきそうですよね。

受け手側は、そういった新しい遊び方を一人で楽しむのもいいんですが、共感性っていうんですかね、ライブハウスやクラブ、フェスに行って、現場からしか得ることができない楽しみに、価値を見い出されていくと言われていますよね。

作り手、受け手の垣根が無くなるくらいの遊び方、インタラクティブ性がテクノロジーの進化で発展していくことには興味をもっています。

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ーー ex:theoryのようなイベントは新たな体験を与えてくれる前衛的なイベントだと思いますが、今後はどのような活動を予定されているのでしょうか?

ex:theoryでは、アルバム「Five Phases Theory」の曲を、各アーティストが一曲づつ、Remixのように解体・再構築して演奏したんですが、それを音源化させたものを企画盤として配信販売する予定です。

ライブ録音をしたライブ盤とも少し違った、ライブからインスピレーションを受けて制作した音源とでも言いますか。ハイレゾ音源としての配信販売も考えています。情報がまとまったら、psymaticsのホームページで発表しますのでチェックしていて下さい。

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通常のクラブイベントと言えば、DJがクラブミュージックをプレイしてオーディエンスを踊らせるタイプがほとんどだ。しかし、オーディエンスのクラブ離れが進んでいる現状において、ex:theoryのような体験型のイベントは、これまでクラブに縁がなかった人がクラブに足を運ぶきっかけにもなるのではないだろうか。

音楽を軸に映像やテクノロジーなどの要素をミックスしたex:theoryのような幅広いイベントはもっと増えていいと思う。このような特別なコンセプトを持ったイベントはそう多くはないが、新しい体験を得られる貴重な場であることは間違いない。

soundrope読者のみなさんも、このような体験型のイベントに出会う機会があったらぜひ足を運んでみて欲しい。

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