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Double Clapperzがのめり込むグライムの歴史と音楽性、そしてレコードへのこだわり

雹まで降る大荒れの天気のなか開催されたNative Meetup: Tokyo Vol.2で、グライムの制作術を披露してくれたDouble Clapperz。ここでは、彼らがのめり込むグライムの歴史や音楽性、そしてレコードへのこだわりについて聞いてみました。

制作からPRまで全てをこなすグライムユニット

ーーお二人はDouble Clapperzという名義で活動されていますが、どのような活動をされているのでしょうか?

Sinta:UKDとSintaによるグライムのプロデュース/DJユニットで、2012年から東京を中心に活動しています。トラック制作とDJ、あとは「Mo’fire」というイベントを主催しています。

ーーそれぞれが担当する役割はあるのですか?

Sinta:UKDがトラック制作とDJを行い、僕はDJと共に、リリース関連やプロモーションなどの戦略的な部分も担当しています。なので、世界中のラジオDJに自分たちのトラックを送ったりするのも、自分の仕事ですね。

ーー世界に向けたセルフプロモーションとは今っぽい感じですね。作品はどのような形でリリースされているのですか?

Sinta:SoundCloud上でトラックを公開しつつ、2016年に初となるEPをアナログでリリースしました。10月には、セカンドEPをアナログでリリースします。

ーー8月に開催したNative Meetup: Tokyoでは、ワークショップの講師を務めていただきましたが、会場の雰囲気などはいかがでしたか?

UKD:全然硬いノリじゃなくて、こっちも話しやすいというか、とても気楽にできましたね。グライムのこと全く知らない人が来るんだろうなと思っていて、そういう人たちにも伝わりやすいように、グライムのことを噛み砕いて説明しようと考えていたら、逆に自分を見つめ直す良い機会にもなりました(笑)。

突然変異で生まれたグライムの歴史

ーーお二人が制作されているグライムとは、どのような音楽なのでしょうか?

Sinta:ロンドンで生まれたラップミュージックです。2000年初頭に誕生して、15年ほどの歴史があります。

ーーダブステップが誕生するよりも前ってことですね。どんな音楽から派生しているのですか?

Sinta:UKガラージから派生しているんですが、Pay as you go cartelクルーのWileyというアーティストが、UKガラージみたいなチャラいことはやらないぜ、みたいな感じで生み出したのがグライムです。

ーー自分もUKガラージにルーツがあることは知っていたのですが、全くその要素を感じないですよね?

Sinta:そうですね。UKガラージからグライムへ移り変わっていく間の音楽ってなくて、突然変異的にWileyが出てくるみたいな。

ーーでは、Wileyが、グライムを作り上げたと言っても過言ではないのですか?

UKD:そうですね。ただ、グライムという名前自体は、後から付けられたものです。Wileyの初期作品にWhat do you call it(日本語訳:この曲をなんて呼ぶ?)という曲があるくらいで、Wileyがシーンに登場したときは、まだグライムとは呼ばれていませんでした。

初めてグライムという言葉を使ったのは、UKガラージのDJ”DJ EZ”だと言われています。当時ダークなグライムをやっていた人たちは、自分たちの音楽がグライムと呼ばれることにすごく嫌悪感を抱いていたようです。

出典:BCC

ーーグライムを象徴するアーティストといえば、Wileyということになるのですか?

Sinta:Wiley、Dizzee Rascal、Kano、P Moneyくらいまでが、初期の代表的なアーティストですね。2012年以降にグライムの人気が再燃してからのスターは、StormzyとSkeptaになります。

世界におけるシーンの現状

ーーグライムはどの世代に支持されている音楽なのですか?

Sinta:10代と20代前半の若者に支持されています。

ーーグライムのイギリス国内での認知度はいかがですか?

Sinta:ジャンルの名前はみんな知っているし、Stormzyの名前もみんな知っています。Stormzyはメジャーアーティストですね。

出典:YouTube

ーー日本で言えば、タモリの横に座ってるみたいなレベルってことですね(笑)。イギリスでは一般的にも認知度が高いジャンルということなんですね。

Sinta:Dizzie Rascalのファーストアルバム「Boy In Da Corner」がマーキュリー賞(その年のイギリスとアイルランドで最も優れたアルバムに送られる)を受賞したこともありますし、イギリス国内での認知度は、高いと思います。

ーーアメリカでの人気はどうなんですか?

Sinta:詳しくはわかりませんが、ヒップホップの人気が絶大ですからね。ヒップホップとの距離感、例えば、訛りだったり音楽性だったりという部分で、かっこ良いと思われているようですが、なにせUSヒップホップ黄金時代なので(笑)。

逆にアジアやオーストラリア、カナダなどの、USのポップミュージック以外も聴きたいというリスナーからの支持が高いように感じます。

ーー日本のグライムシーンはどのような状況なのですか?

UKD:グライムを軸に活動するアーティストは少ないですが、他のジャンルとグライムをミックスしてプレイする若手のDJはたくさんいますね。

グライムミュージックの音楽的特徴

ーーこれはよく聞かれることかもしれませんが、グライムとダブステップはどこが違うのでしょうか?

Sinta:ダブステップのグルーヴはベースラインのうねりとスネアにより作られているように感じますが、グライムはキックとハットでグルーヴが作られています。グライムは、ダブステップで使われているようなサブベースではなく、中低域あたりのベースが使われていて、サブベースは必須ではありません。

UKD:むしろ変わった鳴りをするベースの方がかっこ良いという感じです。

Sinta:最近は、ダブステップとグライムの中間くらいの音楽が盛り上がっているので、違いが分かりづらくなっている部分はありますね。

UKD:僕たちは、ベースの鳴るグライムをコンセプトに制作しています。

ーーサブベースが使われていないトラックもあるってことですか?

Sinta:むしろ、そっちがメインですね。

ーーヒップホップと近いんですね。

UKD:インストの曲になると、サブベースが入ってきますね。

Sinta:より音楽的な要素にフォーカスしたインストグライムというジャンルがあって、これがグライム人気再燃のきっかけにもなりました。Big Dadaというレーベルからリリースされた「Grime 2.0」というコンピなどの流れから、自分たちが制作しているようなインストゥルメンタルのグライムが派生しています。

ーーBig Dadaの名前が挙がりましたが、現在グライムを代表するレーベルはありますか?

Sinta:ほとんどのMCは自主レーベルを立ち上げてリリースを重ねています。自主レーベル以外では、XL Recordingsですね。インストゥルメンタルのグライムでは、BoxedOil Gangが有名だと思います。

ーーお二人も自主レーベルを立ち上げてリリースされていますが、そのようなグライムの流れに基づいてという部分が大きいのでしょうか?

UKD:特にそういうことではなく、興味を持ってくれる人が少ないから、自分たちでやるしかなかったという感じですね。

Sinta:自分たちが求めるスタイルで音楽を続けるには、インディペンデントでやるしかないと思ったし、やっていくうちにだんだんとできるようになっていったという感じです。

デジタル世代が持つレコードへのこだわり

ーー作品はアナログのみでリリースされているとのことですが、プレスはどちらで行われたのですか?

1枚目のEPは、東洋化成でプレスしています。今月リリースする2枚目のEPは、フランスのMPOでプレスしました。

ーー音楽メディアとしては、デジタルファイルが主流ですが、なぜレコードにこだわるのですか?

UKD:単純にレコードというメディアが好きだからですね。フィジカルなメディアとしてはCDという選択肢もありますが、CDにぐっとこなくて、どうせだったらレコードでリリースしたいというのがあります。

あと、自分が好きなブリストルのレーベルBandulu Recordsは、レコードでしかリリースしていないんですが、その影響も強いですね。UKでは何も書かれてない白ラベルのレコードが流通していたりもするんですが、そういうのを日本では誰もやっていなかったので、そういうことをやりたいなという気持ちから、レコードでのリリースにこだわっています。

Sinta:リリースする側からすると、気合の部分も大きいですね。レコードでのリリースは、デジタルに比べてコストの面でリスクも大きいですが、やはりテンションが上がります。

買ってくれた人が、作品に対して愛着を持ってくれるんじゃないかというところもありますね。

ーーちなみにお二人は、レコードを通られてきたんですか?

Sinta:ディスクユニオンでヒップホップのレコードを買ったりしていました。ただ、DJを始めた頃に音楽ファイルが主流になってPCDJが出てきたので、レコードが主体というわけではありません。

UKD:逆に自分はレコードを通ってなくて、ここ2,3年で買い始めました。それまでレコードに全然興味がなかったんですが、グライムやダブステップなどのベースミュージックを追うようになってからですね。レコードでしかリリースされていない音源って多いし、自分はPCDJだからレコードを買わないというのはもったいないなと。そう思って1枚買ったら、そこからハマってしまって、それまで自分の中で守っていたものが崩壊してしまいました。

ーーイギリスと言えばダブプレート大国ですが、グライムシーンでもダブプレートをカットしているアーティストは多いですか?

UKD:多いですね。

Sinta:特にDJがカットしています。アーティストから受け取ったトラックをダブプレートにカットするというケースが多いですね。お金がかかるものですし、ダブプレートに対するステイタスが高いというのはあると思います。

ーー自分の音楽をレコードにする意味はどこにあると思いますか?

UKD:ダブプレートをカットするのはタダじゃないわけで、自分で稼いだお金でダブプレートをカットするのは、その音楽に対して、信頼と自信がなかったらできないじゃないですか。音楽を作っている時もそれを考えるし、自分の音楽を信頼できるというところに意味があると思います。

ーーセカンドEP楽しみにしています!本日はありがとうございました。

-Double Clapperzプロフィール-
UKDとSintaからなる、グライムのプロデューサーチーム。東京を中心に活動を続け、ソウルやロンドンのクラブでもゲストDJとして招待された。Boiler Room、NTS Radio、Radar Radio、block.fmなど国内外のラジオ局にゲスト出演し、国内外の知名度を上げている。2016年には200枚限定の「VIP (12inch)」をリリース、現在限定盤は入手困難となっている。また、SONPUB, TT the Artist, Swimfulなどのオフィシャルリミックスを手がけ、幅広いジャンルの感性をミックスしている。

Bandcamp : https://doubleclapperz.bandcamp.com/merch/get-mad-12-vinyl
Disc Shop Zero : http://dsz-intel.tumblr.com/post/163902497283
Dubstore : https://www.reggaerecord.com/jp/catalog/description.php?code=523085
Disk Union : http://diskunion.net/jp/ct/list/0/80850560

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