CIAが絡んでいた?Run-DMCの前座も務めたシンセポップバンドのヒット曲に隠された真実

1983年から1984年の1年間だけ活動したニューヨークのシンセポップバンド「Dominatrix」。Dominatrixを代表するクラブヒット曲「The Dominatrix Sleeps Tonight」に隠された真実に迫り話題となった海外メディアCuepointの記事を紹介します。はたして80年代のクラブヒット曲にはどのような真実が隠されているのでしょうか?


1984年に、女優Mary Tyler Mooreの庭師をしていたStuart Argabrightが、Dominatrix(日本で言うSM嬢)という名義でThe Dominatrix Sleeps Tonightをリリースしました。SMをテーマにした歌詞も受け、Dominatrixはニューヨークのクラブを中心に流行し、ヒップホップの最重要グループRun-DMCのオープニングアクトを務めるまでになりました。

出典:YouTube

1977年、当時18歳だったStuart Argabrightは、ワシントンDCからバージニア州の自宅までヒッチハイクを行いました。この時に彼を乗せてくれた年上の女性と1年後にニューヨークで再会し、交際をはじめます。Stuart Argabrightは彼女との時間を過ごす中で、彼女の職業が金持ち相手のSM嬢だと知りました。彼女の客には音楽会社の役員や、彼女にハマりすぎて亡命や結婚まで考えるロシアの役人がいました。亡命を考えるロシア人の存在を嗅ぎつけたCIAは、彼女にCIAの協力者として役人との関係を続けるよう要請しました。彼女は仕方なく協力しましたが、Stuart Argabrightとの交際も続けました。Stuart Argabrightは、庭師を続けながらIke Yardというエレクトロニックバンドを結成し、イギリスのテクノ/ロックバンドのNew Orderなどが所属するFactory Recordsからアルバムをリリースしました。

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1983年には、ファッションショーへ向かっている途中に刺され、肺に穴が開く重傷を負ってしまいます。傷の癒えない状態でドイツへ移住したStuart Argabrightは、ベルリンで出会ったグラフィティアーティストのRammellzeeと意気投合します。2人はのちにDeath Comet Crewというバンドでコラボすることになります。
Stuart Argabrightがニューヨークに戻った際に、SM嬢の彼女と別れることになりましたが、彼女との思い出は心に深く刻まれていました。

The Dominatrix Sleeps Tonightは、ボーカリストのClaudia Summers、Public ImageのKen Lockie、Bow Wow WowのリミキサーのIvan Ivanにより、Tangerine DreamのPeter Baumanのスタジオで作られ、Uproarという小さなレーベルからリリースされました。そして、リリース後にこの曲を聴いたArthur Bakerにより、彼自身のレーベルStreetwiseからリリースされることになりました。

人々はThe Dominatrix Sleeps Tonightを聴きながら朝まで盛り上がっていましたが、この曲の本質は正反対のものでした。CIAの活動により素性も明かすこともできない女性が、その活動から解放される夜に、庭師と自宅でレコードを聴きながら静かな時を過ごす。実はそんな曲だったのです。


彼女がCIAの活動をしているなんて、現代ではあまり考えられませんが、アメリカとソビエトによる冷戦下においては、このようなケースも稀にあったのかもしれませんね。SM嬢の彼女については詳細が不明のようで触れられてはいませんが、CIAの管理下にありながらSM嬢を続けると言う、全く異なる2つの世界に身を置いた彼女への興味は増すばかりです。The Dominatrix Sleeps Tonightは、現代とは異なる時代背景が生み出したクラブヒット曲と言えるかもしれません。

引用元:Cuepoint