soundropeをご覧の皆様こんにちは!Dachamboのシンセサイザー担当CD HATAです。前回はCD HATAが使ってきた、カセットテープからデジタルまでのハードウェア・レコーダーの歴史を語りましたが、今回はCD HATAの使ってきたシンセサイザーの歴史を紐解いていこうと思います。
ギタリスト時代に芽生えた打ち込みへの欲求
現在のCD HATAは、Dachamboというサイケデリック・ジャムバンドのシンセサイザー担当していたり、生音は使わずシンセサイザーの音のみでアンビエントアルバム「Five Phases Theory」を作ったり、sondropeでもおなじみのKOYAS氏と打ち込みのインプロユニットCD HATA×KOYASをやったり、DJもパソコンを使い、その機能を活かしたプレイをするなど、電子音好きシンセシストとして活動しているわけですが、もともと音楽に入ったのはギタリストからなのです。
しかも、ギタリスト時代はエフェクターなんてもってのほか、男は黙ってシールド直だろ!的なブルースな時代もあったわけです。それが、今現在のピコピコいっているような人間性に移り変わるまでのストーリーを振り返ってみようと思います。
ギタリスト時代はギターで曲を作り、それをMTRに録音しデモテープを作っていたわけですが、当然そこにバックの音、つまりドラムやベース、キーボードなどの音が欲しくなってくるわけです。ギタリストとしてバンドをやっていた時代、一人でそれらの音も使って曲のデモテープを作り、メンバーに聴かせたくなったのです。そう、必要になるのは打ち込みです。
シーケンサーの名機「QY70」との出会い
しかし、その当時、頑固一徹、エフェクターも邪道だと思っていた偏屈男、何か簡単にできるものは無いかと思っていた所に現れたこの一台、YAMAHA「QY70」。
出典:YAMAHA
VHSビデオサイズというコンパクトな所も抵抗感なく入っていくことができました。しかし、そのサイズの中に、16トラックのシーケンサー、分解能も480あり、かなり複雑な打ち込みもできます。
また、519音色・20ドラムキットと一通りの音が入っているという優れもの。初期ファミコンの四角ボタンを彷彿させる白と黒の鍵盤ボタン、電池駆動もできるのでヘッドフォンをしながら電車の中でも作曲できちゃう!(さすがにそれはあんまりやっていませんでしたが…)
今でこそ、iPhoneアプリのようにコンパクトでありながら様々な機能が詰まった音楽制作ツールはいっぱいありますが、当時、このサイズにこれだけの機能が盛り込まれているものは、他では無かったのではないでしょうか?
スタイルシーケンサーという、組んだパターンにコード進行を割り当てていくと、そのコード進行に追従していく機能は面白かったです。音楽的に自然な展開をしつつも、たまに「えっそうなっちゃうんだ?」ということもあったのですが、自分のアレンジの発想にはない展開をしてハっとさせられることもありました。
自分的には、この機材からMIDIというものに入ったので、わけのわからないことだらけだったのですが、取扱説明書が比較的わかりやすくできていたので助かりました。もし違う機材から入っていたら、挫折して、全く別の人生を歩んでいたかもしれません?!
と、ここまで書いていて思い出したのですが、YAMAHA「QY70」を使いはじめる前にもリズムマシンは使っていました。たしか、Boss DR550を使っていたような記憶があります。
出典:Flickr
一応、ギタリストだったんで、定番コンパクトエフェクターのBossという、ブランドで選んだんだと思います。(先程も書いたように、そこまでエフェクターを使うタイプでは無かったのですが)
ちなみに、ギタリストが足で踏むコンパクトエフェクターの定番メーカー「Boss」ですが、社名の由来は、Boss=上司を踏みつけるような感覚を、という説と、もともとは「メグ電子株式会社」という社名だったそうなんですが、アメリカに輸出をする際に、メグでは女の子の名前みたいで、もっとロックっぽい男らしい名前をってことで「Boss」になったという説があるようですが、どうなんでしょう??
出典:Wikipedia
カセット4トラックのMTRにリズムマシンでドラムパートを録音し、ギターの低音でベースのパートを録音し、ギターのパートはもちろん、仮歌も自分で歌う勇気が無かった為、ギターでメロディーを入れてという、ギター三重唱的なデモテープ、今聴いたら新鮮かもしれません?!
当時を代表するシンセを色々と試してみるも. . .
さて、話が逸れてしまったので、シンセサイザーの歴史に戻ります。YAMAHA「QY70」にはドラム、ベース、ギター、ピアノやオルガン、ストリングズやホーンセクション、シンセサイザーや効果音も一通り入っていました。
しかし、いろいろ曲を作っているうちに、もっと色々な音色が欲しくなってくるというのが人間の欲望。幸いにも周りでキーボードを持っている友達が何人かいたので、いろいろ借りてみては触ってみました。
ざっと思い出せるだけでも、KORG M1、YAMAHA DX7、DX21、Roland D20、D50、JUNO106などなど、でもイマイチこれといって引かれる所がなかったというか、琴線に触れることがなかったというか…それぞれいいキーボードなのですが…
出典:musicradar
その当時は、なぜそこまで好きになれなかったのか考えたことは無かったのですが、今思い起こしてみると、おそらくその理由はいくつかあって、当時のキーボードはワークステーションタイプ(上記のキーボードでいうKORG M1、Roland D20、D50がそれにあたります)という、シーケンサーからエフェクターまで内蔵されたものが多かったのですが、シーケンサーはYAMAHA「QY70」で慣れてしまった為に、ワークステーションタイプのキーボードのシーケンサーを覚えることが億劫だった?!
まぁもちろんシーケンサーは、YAMAHA「QY70」を使い音源としてのみ、そのキーボードを使うという方法もあったのですが。と同時にPCM音源が好きになれなかったのかな?
PCM音源っていうのはザックリ言うとサンプラーみたいに、メモリに記録した波形を再生させることで音を出す方式。同じような方式だけど、サンプルプレイバックのソフトシンセで、最近発売されているやつなんかは、好きな音のものもあるんだけど、当時はまだメモリも十分な容量ではなく、ループさせたりいろいろ工夫して音色を作っているんだけど、音を劇的に変化させることが難しく面白みに欠けていたのかな。
YAMAHA DX7、DX21のFM音源は当時、自分では使いこなせてなかったんだろうなぁ。FM音源はYAMAHAがreface DXを発売したりとか今またアツイかも!!その他にもいくつか思い当たるのですが、つまるところ、自分が求めてたのってキーボードじゃなくてシンセサイザーなのよ!
出典:YAMAHA
って話になると、キーボードとシンセサイザーの違いとは、だったり、シンセサイザーの定義とはだったり(FM音源なんかはシンセサイズする革新的な方式だった)の話になると思うんだけど、もっと簡単に言っちゃえば、もうちょいアナログシンセっぽいのを求めてたんだろうな。
JUNO106は、その話の流れだと気に入りそうなもんだけど、きっと鍵盤が大きかったのが、ちょっと気負いを感じてしまったのかもしれません。缶ビールも350mlのやつは好きだけど、500mlのをそのまま飲むのは、なんかちょっと違うなっていうのと同じ感覚だと思います。(どんな感覚ww)
出典:Matrixsynth
ついに見つけた相棒「K-Station」
さて、相当、CD HATAの独自視点になってきましたが、好きなシンセサイザーはズバリ、コレ!novationのK-Stationです。
出典:Matrixsynth
バーチャル・アナログ・シンセサイザー・ブームという時代がありまして、Clavia NordLead、ACCESS VIRUS、Waldorf Q、Roland JP8000、YAMAHA AN1x、KORG MS2000など、さまざまなバーチャル・アナログ・シンセサイザー発売されていました。
出典:Wikipedia
その中でもK-Stationは「リキッドアナログサウンド」というキャッチフレーズで登場したヴァーチャルアナログシンセです。リキッドアナログの名前が表すように、キメ細かいスムーズなフィルターなどの音色変化が気持ち良く、2オクターブ25鍵という小柄なサイズも自分的にはちょうどフィットしました。
もう10年以上使っています。自分のやっているDachamboというバンドは、野外フェスやビーチパーティーなど機材的に過酷な状況も多く、今使ってるのは4台目、生産終了している製品なので、安く見つけるとストックするようにもしていたり。
バンドで使っている場合、曲に一番あう音色が決まってその音色で慣れてしまうと、違う機種の似たような音色で代用しようとしても、なんとなく違う感じがしてしまうんですよね。要塞のようにキーボードを組んでいる人もいますが、もしかしたら、そういう「この曲には、どうしてもこのキーボードのこの音じゃないと!」ってことで沢山のキーボードになってしまうのであれば、わからなくもないかもしれません??
多彩な機種が揃う現代。シンセはもっと面白くなる
現在、ソフトシンセのクオリティーアップと普及もありますが、モジュラーシンセをはじめ、まだまだハードウェアのシンセサイザーの人気もありますよね。昔は「いかに生楽器の音をリアルに再現できるか!」という方向で開発されていたキーボード、シンセサイザーもあり、現在でもその方向で突き詰められた製品もあると思います。
例えば、2011年 KORG KRONOSが発売された時、全鍵サンプリングの生ピアノの音には、みんな驚かれていました。(ワタクシも1:20くらいから登場します)
出典:YouTube
と同時に、最近は本物のアナログ音源のシンセも増えてきています。モジュラーシンセしかり、アナログシンセの良さはアナログの音の太さもありますが、単純に触っていて面白い!ということもあると思います。こんなシンセサイザーもありますね。(ワタクシ見切れてますが司会やってます)
この先、音色の発展も楽しみですが、インターフェース面でも、いろいろ新しいものが出てくることでしょう。現にMIDIコントローラーは様々なものが増えてきていますし、どんどん新しいものが出てくる予感があります。
なんでも、ヘルメットのようなものをかぶり、脳波から直接音をコントロールするようなのもあるという噂もチラホラ。そういったことも含め、まだまだハードウェアのシンセサイザーにも面白く遊べそうな未来があり楽しみですね!!!
さて、すっかり春も近づいてきました。普段は室内で電子音楽を作っていますが、気分転換に外に出ていってみるのも悪くない季節になってきましたね。ワタクシCD HATAは、こんなイベントに出演します。よかったら遊びにいらして下さい。
3/26(土)
『BELLY DANCE ATAMI』
CD HATA & NATACHA
http://doatami.jugem.jp/?eid=269
4/1(金)
『蜻蛉祭 第二十五夜 ~祭りa.k.aカーニバル~』
CD HATA
http://rubyroomtokyo.com/?p=10298
4/2(土)
『春風 2016』
Dachambo
http://harukaze.asia/2016/
4/2(土)
『Knock & Answer』
CD HATA Ambient Set
http://www.clubberia.com/ja/events/250304-Knock-Answer/
トップ画像出典:Flickr