アナログとモジュラー。楽器におけるトピックとしてここ数年よく耳にする言葉です。ドイツのメーカー「Doepfer」を中心に2000年頃から始まったモジュラーシンセの再ブームは、「Moog」、「Buchla」、「Tiptop Audio」の老舗メーカーや第三世代メーカーなど例年に比べ多くのモジューラーが発表された世界最大規模の楽器の展示会「NAMM 2015」からも、その注目度がさらに高まっていることが分かります。
シンセは聞いたことあるけど、モジュラーシンセって何?と言うのが一般的な認識だと思いますが、モジュラーシンセとはシンセサイザーに搭載されている機能の1つ1つをモジュラー化して、これを組み合わせて独自のシンセを構築すると言うとてもマニアックな世界です。
ある機能に特化したモジュールを組み合わせてシステムを構築して行くので、場合によっては凄く大きなシステムになってしまうこともありますが、どんなに大きなシステムだろうと独自のサウンドのためならそんなの問題ではないと言うシンセマニアが増殖中と言うことですね。
自転車好きの人が自転車を組んだり、車好きの人が車をカスタムしたりするのと同じように、シンセ好きがシンセサイザーのシステムを組むと言った感覚ですね。
そんな超マニアックなモジュラーシンセの世界に触れて頂けたらと、NAMM 2015で注目された製品を紹介します。
レトロフューチャーなデザインが注目を誘った「Buchla / 252e」
アメリカのシンセサイザーメーカー「Buchla Electronic Musical Instruments」は、モジュールに使用される大半のパーツを現地で調達するほどのこだわりを持つメーカーです。
出典:YouTube
NAMM 2015で発表されたモジュールの中でも露出度が高かった「252e」。円形のディスプレイが特徴的な252eは、ハイエンド・ポリフォニック、ポリリズム、ポリメトリック・ステップシーケンサーです。
出典:Buchla Electronic Musical Instruments
単体ではピンときませんが、モジュラーシステムに組み込まれるとこんな感じです。センターに組み込まれている252eは、この壮大なモジュール群の中枢を担います。
出典:Buchla Electronic Musical Instruments
252eとモジュールの組み合わせ「Buchla / LEM3 Spider」
単体では機能しないモジュールは、その他のモジュールと組み合わせることで初めてその機能を果たします。
上のシステムはたくさんのモジュールが組み合わされていて、要はたくさんの機能を搭載した豪華なシンセと言うことですが、もっと機能を制限する場合は「Buchla / LEM3 Spider」のように、「252e」と2つのモジュールの組み合わせでモジュラーシステムを構築できます。このように用途に合ったモジュラーを組み合わせてシステムを構築して行くのがモジュラーシステムの特徴です。
出典:Buchla Electronic Musical Instruments
「LEM3 Spider」は、252eとMIDI-CVインターフェイス、CV-MIDIコンバーターと言う2つのモジュールで構成され、フレキシブルなMIDIとUSBで、ユーロラックやその他のデバイス、DAWをコントロールするデスクトップタイプのポリフォニック・リズム・ジェネレーターです。
出典:YouTube
シンセとキーボードのモジュラーシステム「Buchla / LEM4 218 Snoopy」
出典:Buchla Electronic Musical Instruments
2つの独立したオシレーター、2つのLowpass vactrol-basedゲート/フィルター、2つのファンクション・ジェネレーターのモジュールとキーボードの「LEM 218」の組み合わせで構成されるシンセサイザー「LEM4 Snoopy」。合計6基のモジュールで1台のシンセを構成しています。
複雑なパターンを作るステップシーケンサー「Komplex Sequencer」
一見すると卓ミキサーかDAWソフトのコントローラにも見える、ドイツのシンセメーカーKOMA Elektronikの「Komplex Sequencer」。「Komplex Sequencer」はMIDIとCV /Gateによる接続で複雑なパターンを作り出す16ステップシーケンサーです。
出典:YouTube
それぞれのシーケンスチャンネルは、独自のスタートとストップボタンを搭載しており、クオンタイズ、ワンショット・モードと5つの異なるプレイモードで切替が可能です。KomplexはCV / GateまたはMIDIを受信できるほぼ全てのシンセサイザーやリズムマシンなどと互換性があるので、お手持ちのシンセやサンプラーなどを接続するとKomplexが複雑なパターンを作り出してくれます。
サウンドの切れが特徴的な「Boomstar Modular Modstar 」
とにかくベースが太くてパワフルなシンセサイザー「SE-1X」。このSE-1Xの製造メーカーStudio Electronicsが手掛けたモジュラーシンセ「Boomstar Modular Modstar 」。
Boomstar Modular Modstarは、14個のモジュールのリリースがアナウンスされていて、これらのモジュールを組み合わせたMODSTAR SEITOとMODSTAR SENSEIの2つのモジュラーシステムが用意されています。
出典:YouTube
NAMM 2015において特に気になるモジュラーシンセをセレクトしてみましたが、会場にはもっと多くのモジュラーが展示されていて、それぞれに個性的で優れたモジュラーがたくさん存在します。
YouTubeで「modular」を検索すると多くのモジュラーシンセの動画がヒットするので、もっと音の宇宙に触れてみたいと言う方はぜひチェックしてみてください!