先日、2013年にリリースされ全米1位を記録したファレル・ウィリアムス(Pharrell Williams)のプロデュースによるロビン・シック(Robin Thicke)のヒットシングル「Blurred Lines」。このBlurred Linesが、1977年にリリースされたマーヴィン・ゲイ(Marvin Gaye)の「Got To Give It Up」の盗作で著作権を侵害しているとして、マーヴィン・ゲイの遺族に対して740万ドル(約9億円)の賠償金支払いを命じる判決が下されました。
この判決について本国アメリカでは、音楽の専門的な知識のない陪審団による決断だったこともあり、この判例によって作曲や制作におけるクリエイティビティが萎縮し産業全体が停滞するのではないかと物議を醸しています。
Blurred Linesについてファレルは、「譜面を読むとまったく違う曲だと分かる。一方はマイナー・コードで、もう一方はメジャー・コード。音の高さすら違う。Blurred LinesとGot To Give It Upはフィーリングを意識したため雰囲気が似ているように聞こえるが、雰囲気が似ているのは著作権の侵害にはあたらない。」と主張しています。
出典:YouTube
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この判決を受けて2人の弁護士は、次のように控訴することを宣言しました。
「私たちは世界中の作曲家のために、この判決が正当ではないということを明確にする責任があります。この2曲が類似していると考えているのは8人の陪審員だけなのですから、我々はあらゆる手続きを行使してでも、この判決が正しくないことを証明しなければなりません。これは恐ろしい判決であり、新たな音楽の創作活動における様々な状況に影響することになります。」
さらにマーヴィン・ゲイの遺族側は、今年のグラミー賞の2部門を受賞したファレルの「Happy」においても、マーヴィン・ゲイの「Ain’t That Peculiar」に酷似していると考えているようで、新たな訴訟に発展する可能性もあるかもしれません。
出典:YouTube
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Happyは、Ain’t That Peculiarに楽曲のスタイルが似ていることから、2つの曲をマッシュアップしたYoutubeもアップされていました。
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過去の判例では「著作権者の権利は譜面上に記載されたものだけに限られる」とメロディラインやフレーズに限定されてましたが、Blurred Linesのように曲を構成するサウンド要素やアレンジスタイルも著作権に含まれたことが今回の判決の最大のポイントと言えます。
この裁判は本国アメリカでも注目度が高いようで、音楽に関して素人である陪審員がこの判決を下したことへの批判や原告がマーヴィン・ゲイ本人ではなく遺族であることの違和感、全てのオマージュ作品も盗作にあたってしまうのではないかという疑問などこの騒動が抱える問題点は想像以上に大きいようです。
アーティストへのリスペクトを込めた「オマージュ」とリスペクトを度外視して私欲を優先する「盗作」の境界線を他人が判断することは容易ではありませんが、より具体的な基準を設けなければ、それは音楽の継承を否定する残念な状況を作り出すことにもなりかねません。
音楽制作に関わる全ての人間に関係するため、この訴訟の今後の展開が注目されます。
参照:
FACT Magazine
Entertainment Music News