名機のサウンドとデザインを現代的に再現した『ARP ODYSSEY Module』でアナログシンセの世界に浸る

2016年10月下旬にKORGから発売予定の「ARP ODYSSEY Module」は、同社が復刻した1970年代を代表するシンセサイザーのひとつ「ARP ODYSSEY」のモジュール版で、鍵盤付きのARP ODYSSEYよりもコンパクトなサイズ感が魅力です。

ここではARP ODYSSEY Moduleを、MIDIキーボードとステップシーケンサーと組み合わせて演奏し、そのポテンシャルを紹介したいと思います。またDAWと組み合わせて、豊潤なアナログサウンドを用いた曲作りの工程も紹介します。

名機のサウンドと操作性を継承するモジュール

ARP ODYSSEYは、同時期に活躍したシンセサイザーMoogよりもモジュレーションソースが多いので、繊細かつ多様なサウンドをシンセサイズすることができます。もちろんリード、ベースといった力強いサウンドも得意ではありますが、サンプル&ホールドといった多彩なモジュレーションソースを活用することで作り出されるサウンドは、Moogとは一線を画すものでした。

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さて、まず本製品で目を奪われるのは、重厚感のあるトップパネルです。頑強なスチールを採用しているので、圧倒的な存在感を放っています。物としての説得力。これもアナログ・シンセに重要なポイントですよね。次に目を引くのは、カラフルなツマミが付いたスライダーです。これはARP社製シンセの特徴で、現在の設定がとても見やすいところが素晴らしいです。その視認性の高さから、演奏時に操作するのも簡単です。

最後に左下の操作部分もARPならでは。ポルタメントの設定、音域の変更、ピッチダウン、ピッチアップ、ビブラートといったコントローラが一箇所にまとまっているので、演奏しやすいです。また、押し込んで操作するゴム・スイッチも独特の快感があります。

伝説のオシレーターシンク・サウンドを奏でる

まずはARP ODYSSEYの特徴的な音色の一つ、ギターエフェクターのファズをかけたようなオシレーターシンク・サウンドを演奏してみます。これはMinimoogでは原理上表現できないサウンドなので、ARP ODYSSEYユーザーとなった際には是非試して欲しいサウンドです。歪具合をADSRでモジュレーションして、さらに演奏中にはLFOの掛かり具合を調整することで抑揚を付けています。

本体左下に配置された白いゴム・スイッチもARP ODYSSEYの特徴で、押し込むことで音程を変化させることができます。ギターのチョーキングやビブラートのように、ここぞというところで押し込みましょう!

次の動画では、主にフィルターの開閉を操作しています。オリジナルのARP ODYSSEYには、生産時期が異なる3つのバージョンが存在しており、その最も大きな違いはフィルター回路です。

ARP ODYSSEY Moduleには、12dB/Octで鋭くパンチの効いたサウンドを作り出すTYPE Ⅰ(Rev1)、24dB/Octで太い低音が心地良いTYPE Ⅱ(Rev2)、そしてレゾナンスを上げても非常に効きが安定するTYPE Ⅲ(Rev3)の、3つのフィルター回路が搭載されており、スイッチ1つで切り替えることができます。ここではTYPE Ⅱを使って、演奏してみました。

フィルターの開き方をADSRで細かく調整することで、マリンバのようなサウンドからギターのようなサウンドまでシームレスに変化していることがわかります。フィルターによって幅広いサウンドを作り出せるのも、ARP ODYSSEYの特徴ではないでしょうか。

演奏中盤からはピッチをずらしてハーモニーを作り出しています。2つのオシレーターのピッチをずらすことで和音を演奏したり、分厚いデチューン・サウンドを作り出したり、シンクさせることで歪ませたりと、様々な使い方ができます。またADSRとARの2系統のエンベロープ・ジェネレーターがあり、フィルターやアンプ、ピッチといった様々な要素に変調を加えることができます。このモジュレーションの多様さもARP ODYSSEYの特徴ですね。

ステップシーケンサーと組合せて手軽にパターンを作る

本物のアナログ・シンセARP ODYSSEY Moduleは、CV(コントロール・ボルテージ)でコントロールすることもできます。次の動画ではKORGのステップ・シーケンサー「SQ-1」からCV信号でODYSSEYをコントロールして、TB-303のようなアシッド・サウンドを演奏しています。偶発的に生まれたフレーズを軸にサウンドを展開していくことで、陶酔感のあるシーケンスを作成することができます。

動画では、ARP ODYSSEYに搭載されているハイパス・フィルターを使って、不必要な低音をカットしています。またオシレーター・シンクを使用したり、ホワイト・ノイズを加えることでARP ODYSSEY独自のサウンドを追求しています。あとは、リズム・マシンを加えれば、延々プレイを楽しめそうです。

DAW環境にアナログサウンドを加えて楽曲を引き立てる

最後にARP ODYSSEYとDAWソフトのAbleton Liveを組み合わせて、クラブジャズ系の簡単なトラックを作ってみましょう。ARP ODYSSEY ModuleにはMIDI IN端子が搭載されているので、DAWからMIDI信号を送信してコントロールすることが可能です。

まずはDAWにベースラインの演奏データをMIDIで録音していきます。その後に、ベースのフレーズを再生させながらサウンドメイキングを行い、ARP ODYSSEYのサウンドをAbleton Liveに録音します。

ハードウェアならではの直感的なコントロールは、ソフトシンセでは味わえない楽しさがあります。

次にふわふわとした、笛のような、ベルのようなシーケンス・フレーズを追加しました。ポルタメントを少しだけ加えることで、可愛らしい感じにしてみました。

この際、コード(和音)を加えるためにAbleton Live付属のエレピ音源を使用しています。ストリングスやパッドなどの同時発音数が必要となる音色には、ソフトシンセを併用していくといいでしょう。

最後は、冒頭で紹介したオシレーターシンク・サウンドを使ったリードを弾き倒します。徐々に歪具合を調整していき、後半はシンク用のオシレーターのピッチを変化させることで倍音をコントロールしています。

これだけ抜けの良いサウンドなら、ライブで埋もれることはありませんね。

身近な本格派アナログシンセ

今回実際にARO ODYSSEY Moduleを演奏して感じた一番の特徴は、豊富なモジュレーション・ソースによって作り出すことのできるサウンドの幅だと思います。2機のエンベロープ・ジェネレーターは、アンプやフィルターだけではなくFMやPWMなど様々な要素に加えることができますし、他にもエンべロープの再トリガー方法やポルタメントなど、細部に渡って調整できるので、無限に音色を作っていくことができます。

またスライダー方式は、どれくらい値を動かしたかがよく分かるので、音色を変化させながら演奏したいという方にも最適な一台です。アナログのヌケの良いサウンドと、重厚感のあるデザイン、そしてリアルタイムのスライダー操作を可能にするARO ODYSSEY Moduleなら、会場のオーディエンスを魅了することができます。

これだけのサウンド・クオリティと機能を搭載して、この低価格。初めて手に入れるアナログ・シンセとしても、オススメの一台です。

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