最近すっかり涼しくなって夏も終わりムードです。僕は前回ライブの話を書いておきながら、今年の夏は真鍋大度さんとHIFANAのKEIZOmachine!さんをゲストに呼んだAbleton User Meeting Tokyoの1周年アニバーサリーイベントにかかりっきりでした。その模様は、soundropeでもレポートして頂きました。
このイベントで印象に残ったことは、出演者のLiveの使い方が良い意味でバラバラだったことでした。今やLiveは、ダンスミュージックだけでなく音効やメディアアート・医療機関といった様々な用途に使われているので、その使い方も様々。ソフトウェアにも、現代社会のキーワードである「多様性」が求められてきます。今回のテーマは、Liveの多様性を象徴する機能=”Max for Live”とその背景にあるユーザーコミュニティという、現代社会を反映しつつもマニアックな内容です。
そもそもMaxとは、アメリカのCycling ’74社が販売している音楽やマルチメディア向けの開発環境です。モジュラーシンセのようにオブジェクトを並べてつないでパッチを作ることで、音声・映像の加工や照明やドローンなど機器の制御が可能なり、マルチメディアに向いています。ただ、MaxにはタイムラインやミキサーといったDAW的な機能がないので、例えば音楽にあわせてドローンを飛ばしたい場合は、何かしらのDAWを使います。
そこに目をつけたのがAbletonで、2009年にリリースされたバージョン8から、Live上にMaxで作ったパッチを立ち上げる機能「Max for Live(以下、M4L)」を追加。Maxで作ったパッチをLiveで開けるようになり、連携がシームレスになってLiveの機能を拡張・カスタマイズすることも可能になりました。この時は別売品でしたが、バージョン9からSuiteユーザーにもライセンスが付与されました。
出典:Ableton
このM4Lは、講師をやっていても受講生の関心の高い分野なのですが、難解なものと敬遠されがちです。オリジナルで全てを作ろうと思うと大変な世界ですが、出来合いのものを使う分にはそうでもありません。僕自身、Maxユーザーというわけでもなく、基礎知識も大してありませんが、以前PICnomeというmonomeの互換機を使っていた時に、ソフトウェアがMaxで作られていたのでその文化に触れることができました。Maxには作成したパッチをユーザー同士で共有して改良する文化があるので、出来合いのものを自分に合わせてカスタムできたりします。
monomeとは、2006年に登場した元祖グリッドコントローラーとも呼べる存在で、8×8のボタンがグリッド状に配置されているミニマムなインターフェースが特徴。プログラムのソースコードや回路図はすべて公開されているオープンソースのハードウェアです。monome用ソフトウェア(大半が無償)を変えることで、monomeがステップシーケンサーになったり、サンプルをリアルタイムでチョップしたり、アルペジエーターになったり、色々な演奏が可能です。monomeはDIYな世界なので組み立てキットを個人輸入して自分で組み立てる人が多いですが、PICnomeは日本国内で購入できます(写真のモデルは販売終了)。
これはmlrというパッチ。ループを自動的にスライスして、ボタンでステップシーケンサーをコントロールしています。ボタンで一番上の列はトラックのオン/オフ等を表示しており、その下の列で右に向かって動いていく光がステップシーケンサーです。これだけでいいじゃん、と思える楽しいパッチです。
出典:YouTube
こちらはアルペジエーターのpolygome。ボタン押しているだけでそれっぽいフレーズを奏でてくれますが、Pushのインストゥルメントモードと使用感が近く、僕もPush導入以前はライブで良く使っていました。
出典:YouTube
ところでこのmonome、8×8のボタン配列という統一したインターフェースなど、見ていて何かに気づきましたでしょうか?
そう、Pushです(笑)。実際に使用していても、全く同じではないものの、近いコンセプトを感じます。
出典:Ableton
このmonome、2013年にPushが発売されてからは下火になっていきます。というのも、PushにはツマミやLCDディスプレイがあり、M4Lを経由すればLiveのミキサーに立ち上げられて、セットアップも簡単です。というわけで今度はPushやMIDIコントローラーをM4Lでカスタマイズするようになります。
M4Lの聖地ともいえるmaxforlive.comでは、そういったM4Lデバイスが無償で配布されています。ハードウェア音源好きな方ならmaxforlive.comで自分の所有してる音源の機種名(VolcaとかAirbaseとか)で検索をかけるのも一つの手。音源のエディターソフトや、KORG Volcaシリーズ等をPushでコントロールするデバイスなどもあります。また、WaveDNA Liquid Rhythmも、M4LでPushがLiquid Rhythm専用コントローラーに変身します。
このようにM4Lは、LiveとMaxの2つのソフトウェアが手を結ぶことで、ユーザー同士の交流により新たなケミストリーが生まれた面白い事例といえるでしょう。DAWと開発環境を統合するのは、今っぽくてユニークですね。
さて、ここまで散々「ユーザーコミュニティ」と言ってきましたが、最後にお知らせです。冒頭で紹介したAbleton User Meeting Tokyoが、10月27日から”Ableton Meetup Tokyo”としてリニューアルして開催します。
Meetupという言葉は最近よく使われるようになってきましたが、「同じ趣味/目的の人達が集う」というカジュアルな意味合い。友人とビール飲みながらLiveを使ったプレゼンテーションをみたり、食事をしながら機材の情報交換したり、そんなライトなノリでAbletonユーザーが集まれるような場所作りを目指しています。ご興味のある方は是非三軒茶屋Space Orbitまで足をお運び下さい。
Ableton Meetup TokyoのFacebookページをチェック
Ableton Meetup Tokyo
10/27(火) at Space Orbit Open: 19:00
Presenter:
Josh Bess (Ableton認定トレーナー/dubspotインストラクター)
「ステムを使ったLiveセットの構築と演奏」
岡崎 ぜったろう (Mammoth)
「実験音楽とAbleton Liveの親和性 ~Ableton Liveはなんでも許してくれる~」
reona
「フィンガードラムのTips紹介/abletonでリアルドラマーに差をつけろ!」
DJ: 蜻蛉
Ableton Meetup Tokyoのイベントページをチェック
トップ画像:川畑 淳平