新たなレコード製造方法『射出成形システム』。コスト削減や納期短縮などメリット多数と話題

オランダのCD製造会社Symconは、新たなレコードの製造方法を開発中です。一般的なプレス方式でのレコード製造では、PVC(ポリ塩化ビニール)の塊を約80℃のスチームで温めてプレスしますが、Symconが開発中の射出成形システムでは、予め温められた液体状のプラスチックをスタンパーに直接射出して、レコードを成形します。

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射出成形システムでは、多くのメリットが挙げられます。まずレコードに使用する材料を正確に計ることができるので、無駄な材料を排出しません。また大量のスチームを必要としないので、光熱費も65%ほど削減できます。またレコードの生産が増加している現在では、発注からレコード製造まで3~4ヶ月ほど掛かるといわれており、納期の遅れが問題となっていますが、射出成形の場合、約2週間程に短縮されるそうです。

そして、低い圧力でレコードをプレスする射出成形システムは製造段階でのダメージも少なく、レコードの溝がより正確に作られるので、音質も向上するそうです。

出典:YouTube

ここまでの開発は上手くいっているようですが、乗り越えるべき障害はまだあるようです。現状のプレス方式で作られたレコードに比べて射出成形で作られたレコードは耐久性で劣っており、35回ほど再生すると劣化が確認されます。この問題の解決のために、塩化ビニールの配合が研究されています。また、射出成形レコード1枚の原材料費は、現状のプレス方式の原材料費に比べて約10ユーロほど高いそうです。

更に品質管理に関する問題もあります。現在のアナログレコードの品質管理システムは射出成形で作られたレコードに対応していません。射出成形レコードの音質を調べるためには、新しいシステムの開発が必要となります。

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このような問題を解決して実用化に至ると、レコード産業は更に拡大するかもしれません。コストや製造時間の短縮は、特にインディーズのレコードレーべルに有益です。Symconの射出成形システム実用化への期待が高まります。

引用元/画像出典:Discogs Blog