デジタルが作り出すアナログの世界。現代のアーティストの思考に応えるUNIVERSAL AUDIOのテクノロジーに迫るインタビュー

レコーディングスタジオの定番コンプレッサー「LA-2A」や「1176」を世に送り出してきた「Universal Audio」(以下UA)のプラグインエフェクター(以下プラグイン)「UAD」シリーズと、オーディオインターフェイス(以下オーディオI/O)「Apollo」シリーズ。UAは、これらのデジタル製品を統合させる『Apollo Expanded』とアナログ・ハードウェアの動作を再現する『Unison』で、スタジオのワークフローと完璧なアナログの世界を実現しようとしています。

この新たなシステムのベースとなっているUAの歴史と、このシステムが実現するデジタル制御によるアナログの世界についてUAのインターナショナル・セールスマネージャーのナガイ ユウイチロウ氏にお話を伺った。

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現代のレコーディングスタジオの形を作り上げたUA

ーーUAの製品はプロから高い評価を得続けていますが、製品の開発におけるコンセプトはどのようなものなのでしょうか?

UAが未来に行うことは過去から理解できます。UAは1950年代に設立されて長い歴史があり、現在のレコーディングスタジオの形を作り上げた会社の一つです。設立者ビル・パットナムは、初めて人工のリバーブを使った人物で、モジュール式のミキシングコンソールも彼が開発しました。スタジオのコントロールルームと言う概念もそうです。

UAの長い歴史を基に、アナログとデジタルの製品を作っていますが、これらの製品開発の一つの柱はアナログとデジタルのバランスです。UAのデジタルの考え方は「UAD」というシリーズに表されています。UADシリーズはスタジオで使われ続ける名機をデジタル化したもので、これを拡張したものが「Apollo」シリーズになります。

apollo-expanded-8出典:Universal Audio

ーーたくさんの名機がUADのプラグインとしてラインナップされていますが、これらはどのようにモデリングされているのですか?

毎年1万人程のユーザーからアンケートを取るんですが、そのフィードバックを基に製品化するハードウェアを選んでいます。製品化が決まったハードウェアは、ゴールデンユニットと言われる最も状態の良い実機を探し、パーツを替えたりして新品のような完璧な状態に戻します。この完璧な状態のハードウェアをモデリングのために使用しています。
最終的なテストとして、プラグインの開発者とオリジナルの製造メーカーのスタッフがそれぞれを聴き比べるんですが、何度試してもどちらがオリジナルなのか答えられないほどです。

ーーUADシリーズはプロの現場でどのように使われることが多いのでしょうか?

ハイエンドのプロは予算と時間と場所があれば、できる限りハードウェアのアナログ機材を使います。その理由はトラックで最も重要なサウンドがより際立つからです。このような現場で、同じハードウェアがもう1台必要と言う時にUADを使用するケースが多いですね。
しかし現在の音楽制作に対する予算やスケージュールはタイトで、ハードウェアを使用することができない場合もあります。そう言った理由からも、プロのエンジニアにとってUADシリーズは必要なツールとなっています。

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アーティストに必要な強い感情に応えるアナログの世界

ーー現在はソフトが主流ですが、ハードウェアの需要はいかがでしょうか?

大きなスタジオの需要は減っていますが、逆に個人などの小さなスタジオでの需要は増えています。現代のトレンドはデジタルとアナログのハイブリッドですが、小さなスタジオがハードウェアを1、2台所有するケースも多いですね。インプット側にはチャンネルストリップやコンプを、アウトプット側にはサミングアンプを使用して、あとはソフトウェアを使用すると言うのが主流です。

ピュアなデジタルサウンドは、みんな十分に味わって、あんまりおいしくないことを知っています(笑)。映画もそうですが、とにかくクリアなHD映像を見ても心を揺り動かされる程の感情は生まれません。アーティストには強い感情が必要だと思いますが、そう言う意味でも個人のスタジオ環境にアナログのハードウェアを導入するケースが増えているのではないでしょうか。

ーーUADのプラグインも使用できるオーディオI/Oの「Apollo Twin」は一般ユーザーからの注目度も高いと思いますが、どのような用途に向いているのでしょうか?

Apolloシリーズはスタジオのワークフローを実現でき、最高級のパーツで、ミュージシャンが興奮するようなサウンドを作れます。このようなワークフローとクオリティを求める全ての人にオススメできます。
例えば、エフェクトの掛け録りもいいですね。Apollo TwinではUADのプラグインを使用できますが、UADに含まれるエフェクターはわりと上品なものが多いんですね。エフェクトを激しく掛けた時はもちろんですが、微妙に掛けた時でもリアルなサウンドを表現できます。

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UAが描くデジタルコントロールアナログの未来

ーー先日NAMM SHOWで発表されたApollo Expandedはどのようなシステムなのでしょうか?

Apollo Expandedでは、ThunderboltでApolloシリーズのオーディオI/Oを最大4台まで接続して64イン/アウトと32DSPチップまで拡張できます。複数のオーディオI/Oを経由させるためにはクロックが必要になりますが、Apollo Expandedはマスターユニットとして設定したオーディオI/OからスレーブとなるオーディオI/OへThunderboltでクロックが送られるので、BNC端子は必要ありません。

ーーApollo ExpandedによりUAのデジタル製品が統合されるシステムが作り上げられた訳ですが、今後どのような進化を遂げて行くのでしょうか?

アナログとデジタルのコンビネーションによる最新のテクノロジー「Unison」と言うものがあります。これはチューブ/ソリッドステート・プリアンプをモデリングしたプラグインで、それらのインピーダンスやアナログ回路の挙動などを忠実に再現しています。

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このプラグイン・ソフトからApolloに搭載されているアナログ・マイクプリアンプを制御することができます。その証拠に、Console 2.0に挿入したUnisonのプラグインをオン/オフするとハードウェアのように「カチッ」という音がします。これはアナログの世界を操作しているからこのような音が出るんです。要するにUnisonは半分アナログで半分デジタルなんですね。今後はこのミキサーソフトConsole 2.0上で使用できるUnisonのプラグインもさらに増えていくと思います。

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今回のインタビューでは実際に、Apollo ExpandedとUnisonを体験することができましたが、特にオーディオI/Oでアナログ・マイクプリアンプの動作を再現するUnisonテクノロジーのクオリティには驚きました。デジタルでアナログを制御する製品はハードウェアシンセに多く見られますが、プラグインの世界においてこれを実現させたUAの技術力とアイデアには脱帽です。これはやはりUAのレコーディングにおける長い歴史により実現できたものだと改めて実感しました。このテクノロジーがさらに進化することで、ハードウェアと全く遜色ないプラグインが生み出される日が来るかもしれません。

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