Taurus Scott インタビュー Vol.1

2013年4月に自身のレーベルHellfyre Clubから1stソロ・アルバム「TAURUS SCOTT」をリリースしたロサンゼルスのビート・メーカーのトーラス・スコットが、代官山UNITにて開催されたLOW END THEORY JAPAN Summer 2013 Editionへの出演のために初来日。

DJ、プロデューサーだけにとどまらずエンジニアとしても活躍するトーラスの、制作とライブ・パフォーマンスの手法、その思考について迫ったインタビューを2回に分けて掲載。

Vol.1では、1stソロ・アルバム「TAURUS SCOTT」に込められたテーマやその制作方法について聞いてみた。

LOW END THEORYは創造的思考力を高めることができて自由な場所

あなたは現在プロデューサー、DJ、エンジニアとして活躍されていますが、現在に至るキャリアについて教えてください。

僕のすべてが始まったのはG-UNITだね。17歳から18歳の時にニューヨークに移住して、50 CENTやほかのアーティストたちと一緒に仕事をしたんだ。最初はエンジニアとして活動して、彼らとは2004年から2007年まで一緒に仕事をしたかな。僕は当時ニューヨークに住んでいたんだけど、もともとはアリゾナ州の出身なんだ。 やっぱり僕は西海岸の出身だし、時間が経つにつれ、ニューヨークの生活にも疲れてきて、アリゾナに戻ったんだよね。そしてアリゾナからLAに行ったんだ。そこで新しいことに挑戦したいと思ったんだ。もちろんプロダクションに集中したかったしね。LAに行ったらLOW END THEORYのシーンにハマちゃったよね。

G-UNITなどと仕事をしてきた中で、HipHopのカルチャーでは対局に位置するLOW END THEORYにハマった理由は何ですか?

一番の理由は、ラッパーとかと仕事をするのとは全く別で、唯一プロデューサーが自分自身の音楽を聴いてもらえる場だから。LOW END THEORYは、創造的思考力を高めることができて、自由な場所だよ。

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アルバムでは多様性を見せたかった

先日リリースされたアルバム「TAURUS SCOTT」では、HipHopとDubstepそしてJukeの要素も盛り込まれていましたね。これまでプロデュースされた曲からHipHopのイメージが強かったのですが、今回のアルバムではDubstepマナーの曲が多い印象を受けました。それぞれのジャンルがうまく融合していて多くのビートマニアに指示されるアルバムだと思いますが、今回のアルバムのテーマについて教えてください。

テーマはね、本当にたくさんあるよ。テーマをひとつだけに絞るのもいやだからね。多様性を見せたかったから、アルバムではDubstep、HipHop、Glitch、Juke Beats、エレクトロ・サウンドなんかがあるんだ。そして僕はいろんなシチュエーションにフレキシブルに対応できるんだ。ひとつひとつが違うし、DubstepのパーティーではDubstepに集中できるしね。今日のLOW END THEORY JAPANで僕が用意したのはDrum & BassSとJukeがメインかな。

なるほど。多様性が自身の特徴であり、この特徴が盛り込まれていることから、 アルバム・タイトルも「TAURUS SCOTT」と言うことなのですね?

これが「俺だ!」というのを主張したいからセルフ・タイトルにしたんだ。僕のデビュー・アルバムだし、トーラス・スコットのブランドを広めたいんだ。スタイルを変え、多様性があることが「僕」なんだ。

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オリジナルを作りたいと思って音楽をやっている

アルバムのジャケットには、Native InstrumentsのTRAKTOR KONTROL S4とMASCHINEが映っていましたね。これは現在メインで使用している制作機材と言うことですか?

もちろん!制作に関してはMASCHINEがメインだね。TRAKTORはパフォーマンス用でDJで使っているよ。

制作においてMASCHINEはどのような役割果たしていますか?

メイン・マシーンだね。

MASCHINEがメイン・シーケンサーと言うことですか?

そう、MASCHINEがメイン・シーケンサーだね。プログラミングも全部MASCHINEだよ。トラックの構築が終わったら、それをPRO TOOLSかABLETON/Liveに移してミキシングをするんだ。

MASCHINEのお気に入りのポイントをいくつか教えてください。

MASCHINEに入ってるサウンドは好きだね。あとは、いろんなサンプルを組み合わせてキットを作るのが好きかな。昔はMPCを使っていたんだけど、それに比べるとMASCHINEは本当に使いやすいね!MPCとMASCHINEは似てるけど、まあ、違いはコンピュータ・ベースだっていうところかな?そこが扱いやすいんだよね、僕にとっては。MPCとMASCHINEの共通点っていうのは…やっぱりパッドかな(笑)。クオンタイズ機能は、たまに使うよ。ドラムとかグルーヴにもよるけど、キーボードの楽器とかに関してはクオンタイズ機能は使わないね。MASCHINEでエフェクトはあまり使わないけど、KOMPLETEのエフェクトは使ってるよ。一番のお気に入りは、グリッチが入ってる”THE FINGER”だね。

では、アルバムのドラムのサウンドはMASCHINEのサンプルを使用されたのですね?

そうだね。少しだけMASCHINE EXPANSIONS(*MASCHINE専用拡張サンプル・キット)を使ったよ。True SchoolとHelios Rayをね。

キーボードはクオンタイズを使わないと言うことですが、これはあなた自身のグルーヴを大切にするためですか?

そうだよ。使ってる楽器やサウンドを最もナチュラルな状態に保ちたいからね。たまにビートがズレているのも味が出ていいんだ。

アルバムではMASCHINEの他にどのような制作機材を使用したのですか?

KOMPLETEは使っているね。あとは”CYCLOP”と言うネットで適当に見つけたソフトウェアなんだけど、カッコイイ音が出るんだよ(笑)!YouTubeでそういうソフトウェアを探して、使えそうだなって思ったらとりあえずダウンロードして使っているよ。

やはりKOMPLETEも使っているのですね。KOMPLETEにはたくさんのソフトウェアが同梱されていますが、主に使うものは何ですか?

最も使うのはREAKTORだね。

REAKTORのお気に入りのポイントを教えてください。

使い方さえ知っていれば、色んなサウンドがあるから、クレイジーな音楽を制作することができるんだ。REAKTORを使えば「創造的・クリエイティブ」になれるよね。エレクトロなサウンドは本当に好きだよ。

楽曲制作において、主な音源はシンセサイザーなのですか?サンプリングを用いることは少ないのですか?

自分のオリジナルを制作するのが好きだからサンプルはあまり使わないね。若いころから他のアーティストが自分でオリジナル・ビートを作っているところを見てきたからこそ、僕もオリジナルを作りたいと思って音楽をやっているんだ。

MASCHINEを使用した楽曲制作の流れを教えてください。

まずはドラムから始めるのが好きだね。なぜかというと、ドラムのビートが合っていれば他のビートも合わせやすいから。次に、シンセ。REAKTORをいじってカッコイイ音を見つけるんだ。それか最初からメロディーを作っちゃうね。

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この日もTRAKTOR KONTROL S4とMASCHINEを巧みにコントロールしてライブ・パフォーマンスを披露してくれたトーラス・スコット。
インタビューVol.2では、そのライブ・パフォーマンスにおける手法や、制作に対する考え方などを語ってもらった。

トーラスのアーティストとしての思考に迫ったインタビューVol.2はこちら

TAURUS SCOTT
独学でドラムとピアノを、音大でエンジニアの技術を学び、DEF JAM副社長マイケル“シャー・マネー”クレアヴォワに見出され、若くしてGユニット・レーベルのプロデューサー&エンジニアになる。その後ロサンゼルスに拠点を移して、Low End TheoryをはじめダブステップやエレクトロニカのイベントにもDJとして出演。ユニークなサウンドを作り出す新たな才能として注目されているプロデューサー/DJ/エンジニア。

Photo : HIDEO SEIKI
Interpretation & Translation : Saki Asami (Native Instruments Japan)