MASCHINEだけでトラップのヒットチューンを制作|MASCHINE MK3チュートリアル

サンプリングからアレンジ、ミキシングなど、曲作りに必要な全てを備えたソフトウェアと、それらの機能をフィジカルに操作できるコントローラが一体となった「MASCHINE」。

ハードとソフトの統合による、直感的な制作ツールとして人気のMASCHINE は、第3世代の「MASCHINE MK3」で大きく変更されたUIデザインと、オーディオインターフェイスの搭載により、操作性と利便性が格段に向上しました。

今回は、このMASCHINE MK3を使用して、トラップのヒットチューンのリメイクにチャレンジ。Migosの大ヒット曲”Bad and Boujee”を手本に、MASCHINE の主要な機能を使って、トラップの製作方法を紹介していきます。

サンプルのロード

まずは、ドラムのパーツとなるキック、スネア、クラップ、クローズド・ハイハット、オープン・ハイハットのサンプルを各パッドにロードします。

ここで使用するサンプルは、すべてMASCHINEの拡張音源EXPANSIONSの”LAZER DICE“と”METEORIC RISE“から選択。MASCHINE MK3のブラウズ機能を使って、PCの画面を見ることなくハードウェアを操作して、目的のサンプルをロードします。

MASCHINEでは、プロジェクトやサンプルなどのファイルを、コントローラから直接検索してロードすることができます。特にEXPANSIONSなどのNative Instrumentsのサンプルキットは、ディスプレイに画像とともにカラーで表示されるので、視覚的に操作がしやすくなっています。

サンプルをロードして作成したグループは、オリジナルのキットとして保存することが可能で、いつでも他のプロジェクトでも使用できるためとても重宝します。さらにMASCHINEには、キットやプロジェクトがあらかじめ多数用意されているので、自分でキットを作らずともすぐに曲作りが行えます。

パターンの作成 1:キック&クラップ

それでは実際にビートを作っていきましょう。まずは、リアルタイム・レコーディング機能で、キックとクラップのパターンを作成します。

直感的に録音することができるリアルタイム・レコーディングは、繊細で微妙なグルーヴを作り出すことができます。また、クオンタイズすることで、グリッドに合わせて自動的に音を配置できるので、タイミングを補正しジャストなタイミングに整えることも可能です。

さらにMASCHINEには、50%クオンタイズという機能が搭載されており、この機能を使用することで、手動による入力とクオンタイズによるタイミングの補正の間をとった位置に、ノートを修正することができます。何度か50%クオンタイズを行うことで、理想とするノートの位置に、段階的に調整していくことも可能です。

パターンの作成 2:スネア

次にスネアのパターンを作成します。先ほど入力したクラップにスネアを重ねるように、リアルタイム・レコーディングを行います。さらにナッジ機能を使って、入力したスネアを若干後方へずらして、タメの効いたビートを作り出します。

動画のように、クラップとスネアを重ねるだけで、オリジナルのサウンドを簡単に作ることができます。2つ以上のサウンドを重ねてオリジナルのサウンドを作り出す手法は、広く用いられていますので、ぜひ試してみてください。このように、ちょっとした工夫で、曲の仕上がりは劇的に変わります。

また、スネアの位置をずらすことでグルーブが変化したように、各サウンドの微妙な位置調整がビートのグルーヴを決定します。好みに応じて各サウンドを前後に動かし、オリジナルのグルーヴを作り出してください。ここは作り手の個性が発揮されるポイントです。ハイハットだけクオンタイズして、その他のキックやスネアはラフな位置に配置したり、その逆の場合や、クオンタイズを使用しないなど、様々なスタイルがあります。

MASCHINEには、アンドゥ機能が搭載されており、このボタンを押すだけで、ひとつ前の状態にすぐに戻すことができます。よって各サウンドの調整など、間違いを恐れず積極的に試してみてください。

パターンの作成 3:クローズド・ハイハット

続いて、トラップでは定番の、クローズド・ハイハットのパターンを作成します。ここではノートリピート機能を使って、8分と16分を切り替えながら入力を行い、最後にドラムパターン全体にスウィングを加えて、躍動感のあるビートに仕上げます。

ノートリピート機能を使うことで、トラップの特徴でもある細かなハットを簡単に入力することができます。ステップ・レコーディングでは、音の抜き差しが簡単にできるので、パターンのバリエーションを色々と試すことが可能です。動画のようにスウィングやナッジを使ったハットの位置調整だけで、オリジナルのグルーヴを素早く生み出せるので、積極的にチャレンジしてみてください。

パターンの作成 4:新規ビート・パターンの作成

続いて、作成したビート・パターンをコピーして、簡単に新しいビート・パターンを作成します。

動画のように、コピーして作成したパターンに手を加えるだけで、簡単に新たなパターンを作成できます。この手法は、手間と時間を省くことができるので、とてもオススメです。

パターンの作成 5:ベース

トラップでは、ベースの代わりにTR-808系のキックが多用されます。ここでは、例にならって、TR-808系のキックからベースのパターンを作成します。ベースの録音には、キーボードモードを使用し、パッドで音階の演奏を行います。

ドラムのパターンはグループAで作成しましたが、ベースのパターンはグループBに作成していきます。楽器ごとにグループを分けることで、各サウンドをミュートしたり、個別にエフェクトを使用することが可能になります。

パターンの作成 6:ベース・パターンのエディット

作成したベースのパターンをエディットして、よりインパクトのあるベースに仕上げます。スマホやTVなど低域がしっかり聴き取れないデバイスにおいても、ベースの存在感を出すため、サチュレーターディストーションを加えて音の輪郭を出していきます。

エンベロープを使って、ベースのアタックを数十ミリ秒遅めにすることで、サイドチェインのような効果得ることが可能です。これにより、キックとベースに分離感をもたせ、キックがベースに埋もれてしまうことがないように配置しました。

サチュレーターやディストーションを加えるだけで、ベースの印象がガラッと変わります。これらのエフェクトを使用することで、今っぽいベースが簡単に作れるので、積極的に試してみてください。

パターンの作成 7:エレクトリック・ピアノ

今回の課題曲”Bad and Boujee”では、コードとメロディが使われています。はじめにコードモードを使って、コードをリアルタイム・レコーディングします。MASCHINEには豊富なスケールとコードが用意されているので、1つのパッドを押すだけでコードを演奏することができます。

ここでは、コードモードでエレクトリック・ピアノのパターンを作成し、さらにフィルターで高音域をカットして、音を少し曇らせ”ワルい”感じを出してみます。

コードモードを使うことで、コードの深い知識を必要とせずに、容易に音楽的な演奏が可能になります。フィルターは音色を素早く整えることができるので、積極的に使用してみてください。

パターンの作成 8:ベル

続いて、スケールモードを使って、メロディにあたるベル系のパターンを作成していきます。音源には、MASSIVEを使用します。

スケールモードを使用することで、スケールから外れた音が除外され、曲のキーに合った演奏が可能になります。

鍵盤での演奏に慣れている方は、MASCHINEとお持ちの鍵盤をMIDIケーブルで接続することで、鍵盤を使ったレコーディングも可能です。

シーンの作成

最後に、作成したパターンを組み合わせて、曲を完成させます。MASCHINEには、パターンの集合体シーンという機能があり、このシーンを順番に並べて、曲を構成していきます。

課題曲”Bad and Boujee”は、大きく分けて2つのセクションに分かれており、それぞれのセクションが、さらに2つのバリエーションに分かれています。したがって、ここでは4つのシーンを作成して、それぞれにScene 1、2、3、4と名付けます。

シーンモードは、あるセクションをコピーして別のセクションを作る場合にとても有効です。また、色々なパターンの組み合わせを試す場合にも、大変便利です。

ここでは、既存のシーンをコピーして、新たなシーンを作成。リアルタイムでシーンを切り替えて、演奏してみます。

MASCHINEは、リアルタイムでシーンを切り替えることができるので、ライブでの使用にもオススメです。

続いて、アレンジャーウィンドウにおいて、シーンを順番に再生する手順を解説します。例えば、シーン1をイントロ、シーン2をAメロ、シーン3をBメロというように作成して、これを順番に並べて再生させることで、曲の構成通りにシーンを再生することができます。

シーンモードでセクションを分けたことにより、曲に展開を作ることができました。シーンモードは、セクションの変更を直感的に色々と試すことができ、曲の展開や構成を考える上でとても役立ちます。

進化を遂げた最強のビートメイクツール

MASCHINE MK3に進化したことで、ソフトウェアとコントローラの統合がさらに進み、PC画面をほぼ見ることなくビートメイクが可能になりました。できる限りPC画面を見ずに制作したいという方も多いと思いますが、コントローラの進化により、ハードウェアを使用しているかのような制作環境を得ることができます。

また、MASCHINE MK3から、オーディオインターフェイスが装備されましたが、これは大きな進化です。別途オーディオインターフェイスを購入したり、持ち歩く必要がなくなったため、PCとMASCHINEだけで完結することができます。ライブや移動の多い方には、特に重宝することでしょう。

現在、Native Instrumentsのシンセやエフェクトが豊富に詰まったパッケージ”KOMPLETE 11“と、MASCHINEまたはKOMPLETE KONTROL Sシリーズ・キーボードがセットになったバンドルが、最大54,900円お得にゲットできるキャンペーンが行われています。KOMPLETE 11には、現代の音楽で使われている音源がたくさん用意されているので、音源やエフェクトを充実させたいという方はぜひチェックしてみてください。

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