2017年世界における音楽市場動向:ストリーミングの売上増に伴い3年連続の成長も、収益は15年連続で減少

国際レコード連盟(以下、IFPI)の発表によると、2017年の世界の音楽市場の売上げは8.1%の伸びを見せ、3年連続の成長となりました。また、ストリーミング音楽の収益が、CDなどのフィジカル・メディアの収益を初めて上回ったことも報告されました。IFPI発行のGlobal Music Report 2018によると、音楽ストリーミング・サービスの売上高は前年から41%増え、66億ドル(約7195億円)に上り、そのシェアは、音楽市場全体の38%を占めています。

対して、フィジカル・メディアは前年比5.4%減の52億ドル(約5669億円)、シェアは市場全体の30%となりました。さらに、ダウンロード販売の売上げの落ち込みは激しく、前年比20.5%減の28億ドル(約3052億円)となっています。この穴を埋めるような形でストリーミングによる売上げが伸び、デジタル音楽メディア(デジタル+ストリーミング)による売上げが全体の54%と、過半数を超えました。

1999年から2017年にかけての音楽市場の売上げと、音楽メディアごとの割合

3年連続の売上げ成長も、収益は15年連続で減少

音楽ストリーミングサービスの急成長と言う、音楽市場にとって嬉しいニュースはありますが、その収益は過去最高だった1999年の68.7%にすぎません。

また2017年と2016年の前年からの増収は、それぞれ19億ドルと同じ増収額となっており、成長率で見てみるとほぼ変わっていないことがわかります。1人が年間を通して音楽に費やした金額は、2017年平均が37.50ドル(約4100円)で、月平均3.13ドル。対して2016年は、年間42ドル(約4600円)で月平均3.5ドルでした。

ストリーミングサービスの売上げが増加しているにもかかわらず、年間で音楽に費やす金額が減っているのは、サービスのディスカウントや、利益率の低いファミリープランの利用が多いことが挙げられそうです。

2013年から2017年にかけての音楽ストリーミングサービスの売上げ成長率

音楽/動画ストリーミング・サービスごとの売上げ

ユーザーアップロードサービスの最大手YouTubeは、アーティストやレーベルへの支払いがもっとも悪いサービスとして名前が挙がることもしばしばですが、米メディアDigital Music Newsによると、IFPIの報告においても、これらのサービスが音楽業界にとって最大の問題であると伝えています。

Spotifyにおける1ユーザーあたりの売上げが20ドルなのに対し、YouTubeは1ドルにも達していません。合計ユーザー数が3億人にも満たない音楽ストリーミングサービスの売上げが56億ドル(約6105億円)なのに対して、13億人ものユーザーを抱えるYouTubeなどの動画ストリーミングサービスの売上げは、わずか8億5600万ドル(約933億円)です。

2017年のオーディオと動画ストリーミングサービス別のユーザー数とその売上高

IFPIの報告によると、動画ストリーミングはオンデマンドのストリーミング時間全体の半分以上に上る55%を占めています。うち46%をYouTubeが占めており、有料ストリーミングは全体の23%、広告付きストリーミングが全体の22%となっています。

アーティストやレーベルの著作権を侵害するコンテンツが多数含まれるYouTubeなどの動画ストリーミング・サービスが多くのユーザーに利用されている現状について、IFPIは世界中で法制化するよう働きかけるべきだと提案しています。

ストリーミングサービスごとのオンデマンド・ストリーミング時間の占有率

地域別の音楽市場動向

アジアとオーストラリアの音楽市場における売上げは5.4%増加し、米国と同様に3年連続で成長しています。デジタルダウンロードの売上げは7.5%ダウンしたものの、ストリーミングによる売上げが38.2%増加し、デジタルメディア合計としての売上げは22.4%増となりました。

なかでもその成長著しいのがインド(60.8%)、韓国(47%)、フィリピン(24.3%)です。アジア最大の音楽市場を持つ日本は3%の減少となっています。これは米国とは異なり、デジタルによる売上げ(8%)が、フィジカルフォーマットでの売上げ(-6.1%)をカバーできていないことが理由として挙げられます。対して、中国ではストリーミングによる売上げが26.5%上昇、音楽市場全体でも35.3%の成長を遂げています。

ラテンアメリカではストリーミングによる売上げが48.9%も上昇しており、もっとも高い成長率を見せています。また、音楽市場全体の売上げも17.7%増となっており、右肩上がりの成長を見せています。米国と同じように、フィジカルメディアの売上げが下落した分(-41.5%)をストリーミングで補っています。ペルー(21.7%)、チリ(14.3%)、コロンビア(10.5%)、メキシコ(7.9%)がそれぞれ堅実な成長を見せています。また、ラテンアメリカ最大の音楽市場を持つブラジルの売上げは、2016年に3%減少したものの、2017年は17.9%の増加に転じています。

2016年の成長率が9.1%だったヨーロッパですが、2017年の成長率は4.3%と、鈍化傾向にあるようです。その音楽市場全体の43%を占めるデジタルメディアによる売上げは17.5%増加。なかでもストリーミングサービスによる売上げは30.3%増加し、デジタルメディア全体の70%を占めています。他の地域と同様に、ドイツ(46.2%)、英国(41.1%)、フランス(24.1%)の音楽市場におけるストリーミングサービスの売上は成長し、フィジカルメディアによる売上は7.4%、デジタルダウンロードによる売上は21%減少しています。

画像出典:IFPI