徹底比較!AKAIのMIDIコントローラ APC40 MK1 vs APC40 MK2

soundrope読者の皆さん、こんにちは。今回はAbleton認定トレーナーらしく、Ableton Live専用MIDIコントローラであるAPC40と、その後継機種APC40 MK2を比較検証してみたいと思います。僕は初代APC40(以下MK1)を発売直後から使っていて後に売却し、APC40 MK2(以下MK2)が発売されてからはそちらを使用して来ました。ところが、MK2を使ってライブしているうちに「ひょっとしてMK1の方が使いやすくね?」と思うことも増えてきて、最近中古でMK1を買い直しました。

その後、僕がInstagramにこの2台の写真を上げたところ、MK2よりMK1が良いとは何事だという突っ込みが入ったので、それならフラットな視点で両者を比較検証してみよう!という流れでこの記事を書くことになりました。紙媒体には書けなさそうな内容ですが、この記事によるフィードバックが今後の新機種開発への参考になれば幸いです。先に結論を書いておくと、メーカーに気を遣っている訳でも無く「どっちもどっち」です。自分に合いそうな方を選びましょう。

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APCシリーズ概要

APC40シリーズはAbleton Live専用のMIDIコントローラーで、MK1(写真左)は2009年発売。MK2(写真右)はユーザーからのフィードバックを反映してブラッシュアップされて2014年に発売されました。この2台、細かい差異はあるものの、機能面でできることはほぼ一緒です。

mk1-2本体には、10本のフェーダー・17-18個のノブ・90個以上のボタンなど操作子が大量に並び、これ一台でLiveのかなりの部分をコントロールできるにも関わらず、セットアップはUSBケーブルを挿すだけでほぼ完了する簡単さ。特にPushとの組み合わせは最強といえるでしょう。

APC40 MK1はAbletonとAKAI Professionalの共同開発で、APC40 MK2はAKAI Professionalによる開発/製造です。それでは両機種の違いを見てみましょう。

本体の薄さ/サイズ

ここ10年程度で機材はどんどん小型化しており、機材のサイズがセールスポイントになる時代。よく海外に行く知り合いからも、機材の薄さの重要性を説かれたことがあります。飛行機移動の場合は、スーツケースに機材を入れることが多いので、厚みがあると入らないのだとか。

IMG_7669-s

僕もMK1の巨大なサイズに不満を感じる声をよく聞きましたが、MK2はスーツケースに余裕で入る薄さです。欧米は飛行機移動が多いのでこうしたサイズ感は重要なのでしょう。一方、MK1の筐体は横から見るとアーチを描いた形状になっており、傾斜がついているので厚みがあります。

マルチカラーLED

APCシリーズは、セッションビューに並んだクリップをボタンでローンチすることができます。MK1は3色のLEDでしたが、5年後のMK2ではマルチカラーLEDを搭載し、見比べるとLEDの技術が飛躍的に進歩したことを感じさせます。

led-color

MK2ではクリップローンチボタンの色が、画面のクリップの色と連動するようになって視認性が向上しました。ただ、これらのボタンは横長になり隙間無く配置され、操作感が変わったため評価は分かれるでしょう。

電源

MK1の電源はACアダプター必須ですが、MK2ではUSBバスパワーで駆動します。ライブ等で持ち運びが多い方やモバイル環境で使う方にはバスパワー駆動は大きなメリットであり、この点については文句なしにMK2に軍配が上がります。

フェーダー

これは僕がMK2で不便を感じたところの一つです。フェーダーのストローク自体は同じですが、最大の違いはフェーダーのガイド。

faders

MK1では縦フェーダーの横にはガイドが振ってありますが、MK2は基本無地でよく見ると細い溝が切ってある程度。暗いクラブの中だとMK2のフェーダーの位置を把握するのは至難の業なので、僕は黄色いテープを貼っています。(下の写真の右側参照)。

音量のコントロールは音楽にとって重要な要素なので、ハードウェアのミキサーには必ずと言って良いほどガイドが振ってあり、MK2でガイドを無くしたのは謎です。また、MK1の筐体は厚みと傾斜があるのでハードウェアのミキサーのような操作感。こうやってみるとMK1のフェーダー周りは気合いを入れて作り込んでいる印象です。

palmrest

また、MK1にはフェーダーの下に手のひらを置くパームレストらしきものがありますが、MK2では小型化のためそれが無くなり、フェーダーと言うよりはスライダーを操作しているような感覚。フェーダーに関してはMK1に軍配が上がりますが、MK2もガイドがあれば大分違うと思うので、ステッカーとか作って欲しいものですね…

センドエフェクトの切り替え

これも僕がMK2を使っていて不満を感じているところ。MK1では、コントロールするセンドエフェクト3系統までを指一本で切り替えできます。

send control

一方、MK2では最大8系統までSENDを切り替えられますが、右手で「SEND」ボタンを押しながら、左手で1〜8のTRACK SELECTボタンを押す仕様。僕はライブ中にこの切替を結構頻繁に行うのですが、その度に両手が塞がります。個人的にこういった両手でボタンを押す操作は、演奏に支障をきたすこともあるので極力無くして欲しい部分です。

Live 9対応

Live 9とPushが発売されたのは2013年で、2009年に発売されたMK1はLive 8時代の製品。Live 9ではワークフローが「コントロールしたいトラックを選択する」ように微妙に変わったため、APC40とPushを併用する場合、選択するトラックを切り替えると両方とも同じトラックをコントロールしてしまいます。そこで役立つのがこのDevice Lock。MK2(写真右下)の6番で点灯している”DEV.LOCK”ボタンを押すと、他のトラックを選択してもAPC40 MK2のノブは現在コントロールしているデバイスを引き続きコントロールします。

live9

他にもMK2は、セッション録音ボタンとアレンジメント録音ボタンの両方を搭載する等細かい部分でLive 9に対応し、テンポチェンジ用のノブも搭載しています。とはいえ、これらの機能をAPC40 MK2でコントロールする必要があるかどうかは使う人次第でしょう。

ミキサー部分のボタン類

次はミキサー部分のボタン類を見てみましょう。MK1ではミキサーのミュート/アーム/ソロのボタンがLiveの画面と同じ配置でしたが、MK2ではクロスフェーダーのアサインも行えるようになり、ボタン類が2列になりました。Liveの画面と同じ配置の方が直感的に操作できますが、クロスフェーダーを多用する人はMK2の方が便利でしょう。

bottons

実際に使ってみて

さて、今年も野外テクノパーティーのrural 2016にお誘い頂いたので、今でもMK1がライブに使えるかどうか実践してみました。持ち運びとセッティングはやはりMK2の方が楽でクリップ等の視認性も良いのですが、操作感はmk1の方がハードウェアのミキサーに近く、不思議としっくりくる感じがします。特にフェーダーの位置が把握しやすいので、ミキシングの精度は格段に違いました。

人によってプレイスタイルやライブシステムが違うので、一概にどっちがどっちとは言えませんが、やっぱりテクノではフェーダーは重要なアイテムだと思います。

rural2016

まとめ

色々試した結果、僕の憶測ですがMK1はフェーダーを始め操作フィーリングを重視して開発したように感じられます。一方でMK2では小型化と高機能化にフォーカスした分、操作性が犠牲になっている部分も見受けられます。本編では触れませんでしたが、APC40 MK2にはソフトシンセやサンプル集等の音源が数多くバンドルされていますので、音源や音ネタを持っていない方には役立つのではないでしょうか。以前Pro Toolsに搭載されていた音源メーカーのAir Music Tech(その昔はWizooという名前でCubaseにバンドルされていました)のソフトシンセ”Hybrid 3″も収録されています。

なお、価格はMK1の中古相場は1万円台前半、MK2の新品は3万円台後半と結構差があります。ざっくりまとめると「操作性と価格のMK1」「可搬性と視認性+音源のMK2」という違いがあり、どちらを選べば良いかはプレイスタイルやライブシステムによって異なるでしょう。こうしてみると機材の開発というのは、ユーザーのフィードバックとマーケティングだけでは成り立たない難しい世界であることを感じます。

という訳で、長々と比較してみました。この記事で怒られたり炎上しないことを願ってまた次回!

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