アーティストが教える音楽制作術 Vol.2:『TORAIZ SP-16』と『AS-1』だけでヒップホップ・トラックの制作にチャレンジ

最近の曲作りと言えば、PCでDAWを使っている方が多いかと思います。私、yorokobeatsも主にPCで曲作りをしていますが、曲を作り始めた頃は、ハードウェア・サンプラーで、昼夜を問わず制作していたのを思い出します。

さて今回は、Pioneer  DJの楽曲制作機材=TORAIZシリーズだけで、曲作りするメイキング企画の第2弾として、TORAIZシリーズの機能を活かしたヒップホップの制作方法を紹介します。ヒップホップの原点とも言えるサンプルベースの制作術を、実際の制作工程に沿って紹介していきます。

SP-16搭載のサンプルからビートを作る

まずはビートパターンを作成します。特にヒップホップでは、ビートで曲の印象が大きく左右されるため、とても重要な工程です。ここで制作するビートには、SP-16に内蔵されたサンプルから、好みのキックやスネア、ハイハットなどを選りすぐった、オリジナルのキッドを使用します。

最初にステップ・シーケンサーでハットのパターンを録音して、次にリアルタイム・レコーディングでキック、スネア、クラップを加えていきます。

ビートに厚みやヨレ感を加えるために、クラップとスネアの位置を少しずらしてみました。また、ステップ・シーケンサーでハットをグリッド上に配置し、リアルタイムでキックとスネアを録音することで、ヒップホップ特有のビートのヨレ感を出しています。

これだけで、独特のグルーヴ感を持つビートを簡単に作ることができましたが、これはステップとリアルタイムの両方の入力装置を装備した、SP-16ならではと言えます。

エフェクトを使ってビートをブラッシュアップ

ビートのパターンが完成したら、いくつかのトラック(音色)にエフェクトを追加して、ビートの雰囲気を調整します。まずは、ついつい首を振りたくなるように、スネアにコンプを挿入してサウンドを前に出します。次に、ビートをより重い感じに鳴らすために、キックに”Lo-Fi”というエフェクトを挿してスモーキーな音色にします。

動画での操作のように、各トラックに対してタッチディスプレイから簡単にエフェクトの追加や、パラメータのエディットを行えるのもSP-16の魅力の一つです。

作成したビートから手軽に新規パターンを作る

次に作成したパターンを複製して、新たなビートパターンを作成する方法を紹介します。ここでは、先ほど作成した2小節のビートパターンを複製して、パターンの長さを4小節にします。そして、4小節目に新たな音を追加して、ビートパターンに展開を加えていきます。

動画のように、素早くパターンの複製が可能で、ディスプレイ上ではパターンの配置を視覚的に確認することができます。これらの機能性により、ビートパターンのエディットを分かりやすく、容易に行うことが可能です。

AS-1とSP-16を同期させてリード・パターンを作成

次に、AS-1を用いてリード・パターンを作成していきます。ここでは、SP-16のトラック・タイプを”TORAIZ AS-1”に設定し、SP-16のパッドからAS-1のアルペジエーターを演奏して、パターンを作成します。

SP-16にはスケール機能が搭載されており、各種スケール・タイプの選択やRoot Noteの変更が簡単に行えます。トラック・タイプを”TORAIZ AS-1”に設定した状態でスケールやRoot Noteを変更すると、AS-1もその設定に追従するので、操作で迷うこともなく、スムーズに演奏することができます。

AS-1はフィルター類の効きがとても良く、音色を劇的に変えられるパラメータ・ノブが、シンプルに配置されています。このような仕様により、初心者の方でも、ノブを回せば音が変化するという、シンセ本来の醍醐味を味わうことができます。

スケールモードを活用してベース・パターンを作成

次にベース・パターンを作成していきます。ここでは、SP-16に内蔵されているベースのサンプルをスケール機能を使って演奏しました。先ほどのリード・パターンの場合もそうですが、スケール機能を使うことでスケールアウトせずに、音楽的な演奏を行うことが可能です。

iOSアプリからお気に入りのフレーズをサンプリング

ヒップホップの曲作りにおいて、”サンプリング”は外せません。ヒップホップ創世記は、レコードからサンプリングしたサンプルを使って、曲作りが行われていましたが、ここでは今っぽく、iOSの音楽アプリからお気に入りのフレーズをサンプリングして、トラックに使用してみたいと思います。今回使用するのは、イギリスのレコードレーベル”Ninja Tune”が提供する”ninja jam”。

ninja jamには、有名アーティストの楽曲のパラデータが含まれており、それらを演奏してSP-16へサンプリングし、サンプルのスライスと、パターンの入力を行います。

サンプリングには、”Live sampling”機能を使用しており、この機能を使うことで、ホーム画面から簡単にサンプリングを行うことができます。”Live sampling”は、アイデアを思いついたら、すぐにサンプリングできるので、とてもありがたい機能です。また、サンプリングしたサンプルは、スライス機能を用いることで瞬時にスライスして打ち込みを行うことができます。

SE/ボーカルを追加してトラックに厚みを持たせる

楽曲への味付けとして、SP-16内蔵音源よりいくつかのSE音とボーカルのサンプルを入力していきます。このような音を追加することで、曲の厚みを増すことができたり、飛び道具的に打ち込むことで、聴いていて飽きのこない、面白いトラックに仕上げることができます。

SP-16の内蔵音源には、多彩なSE・ボーカルサンプルが入っているので、きっとお気に入りのサウンドが見つかるはずです。SEを加えるだけで、トラックの印象が大きく変わるので、ぜひ色々と試してみてください。

パターンを並べてトラックを完成させる

ここまで来たら後はトラック全体の構成を作るのみ!その方法は人それぞれかもしれませんが、自分の場合は、ひとまず全ての音色が入ったパターンを作って、そこから各音色を抜いて新たなパターンを作り、それらを並べて曲の展開を作っていきます。

ここではSP-16のアレンジャー機能を使用して、これまで作ってきたパターンをコピーし、ビートとSEを抜いたパターン、SEだけを抜いたパターンを作成します。

SP-16では、作成したパターンをアレンジャー画面で並べるだけで、簡単にイントロからの流れを作ることができるので、とても簡単に曲を構成することができます。

ハードだからこその分かりやすさと楽しさ

SP-16とAS-1を使ったヒップホップ・トラックの制作工程は、いかがでしたか?動画で紹介した通り、難しい手順を踏まずに、簡単にヒップホップのトラックを作ることができました。

SP-16、AS-1ともに、ボタンやノブなどが、分かりやすく配置されているので、作業においてつまずくこともなく、ストレスを感じることもありません。DAWでは細かな調整も行えますが、機能過多でどこから手をつけて良いのか、作業迷子になってしまうこともしばしばです。そこはやはり、専用機ならではの直感的な操作性を有するハードウェアだからこそと言えます。

またSP-16に搭載されたフィルターも見逃せません。シンセサイザーを代表する”Dave Smith Instruments“との協業により誕生したフィルターの効きは素晴らしく、これを通すだけで、トラックの雰囲気を劇的に変化させることが可能です。TORAIZシリーズには、これらのライブパフォーマンスを意識した機能も多数搭載されており、ラッパーをフィーチャーしたライブでも存分に威力を発揮してくれることでしょう。

久しぶりにハードウェア主体で曲作りをしましたが、楽しさとともに、とても興奮を覚えました(笑)。PCでの制作を諦めた方や、次のステップに行きたいクリエイターは、ぜひTORAIZシリーズをチェックしてみてください!

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