これぞ元祖デジタルスクラッチ!レコードブームに湧いた95年に開発された世界初のDVSと巧みなDJプレイ

今でこそDJの一般的なスタイルとして認知されているDVS(デジタル・ヴァイナル・システム)ですが、これが定着したのはDJの歴史においては比較的最近のことです。しかし、レコードブームに沸く95年に、DVSによるスクラッチを可能にしていたDJツールが存在していました。

パソコンにインポートしたデジタルファイルをターンテーブルでコントロールするDVS は、N2IT社により開発された「Final Scratch」の登場でDJシーンに浸透し始めます。これが2000年代初頭のことになりますが、当時はパソコンのスペックも低かったこともありプレイ中のトラブルも多く、まだまだ実用的なシステムとは言えませんでした。

それより以前の95年に、安定したDVSでスクラッチを可能にしていたのがWhirlwind Replicator(以下WWR)と言われるDJツール。WWRは、レコードなどからサンプリングしたサウンドをターンテーブルでコントロールするシステムで、おそらくこれが人類初のDVSです。ターンテーブルにセットされたシステムの一部により若干操作しづらそうな感じがしますが、それでもWWRを巧みに操ってグルーヴを外さないスクラッチを披露するDJのスキルはかなり高いですね。ターンテーブル上の動きをMIDIデータとしてサンプラーに送ることでDVSを可能にしているようですが、その安定感に驚きです。

出典:YouTube

WWRは、サンプラーの代名詞MPCで言うところのドラムパッドに似たような16個のボタンを押して、取り込んだサンプルの再生位置を選択しています。このボタンを押しながらレコードをコントロールすることで、DVSを可能にしているようです。レコード全盛の95年にDVSでデジタルファイルをコントロールしようという発想に至るのがすごいですね。

そしてこちらは、2001年に開催されたヨーロッパ最大の楽器の展示会ミュージックメッセでWWRが展示された際の動画です。動画の冒頭では、後にDMCの世界チャンピオンになるDJ Rafikが楽しそうにスクラッチをしている様子も映し出されています。

出典:YouTube

紹介したどちらの映像もDJの歴史を語る上ではとても貴重なものです。WWRは若干早すぎた感もありますが、このようなDJツールの存在により、現代のDJシステムが確立されたのですね。いつの日かDVSも懐かしのシステムになる訳で、その時にDJはどのようなシステムでプレイしているのでしょうか。今後まだ見ぬ革新的なDJ機材の登場が楽しみです!