カセットからデジタルまで。ハードウェア・レコーダーの歴史を辿る【100% CD HATA視点の音楽史 Vol.7】

soundropeをご覧の皆様こんにちは!Dachamboのシンセサイザー担当CD HATAです。前回はCD HATAが使ってきたDAW史でしたが、今回はCD HATAの使ってきたハードウェア史、その中でもレコーダーについて紐解いていこうと思います。

幼少のころテレビの音楽番組を見ていて、カセットテープレコーダーに好きな曲を録音し繰り返し聴いていた時代、おそらくその当時、テレビのライン出力やテープレコーダーのライン入力は無く(あったのかもしれないが、その使い方を知らなかっただけか?)、テレビのスピーカーから出てくる音をテープレコーダー内蔵のマイクで録音するという、いわゆるエアチェックの原始版ですが、途中で家族がしゃべりかけてきたりすると、その声も録音されてしまいガッカリという経験は昭和世代には、あるあるという思い出ではないですか?

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出典:Foter

カセットテープは今また見直されてきていますよね。当時、何百本も持ってたなぁ。

個人で録音をして再生するメディアの主流がカセットテープだった時代、当然車のカーステレオもカセットです。
女の子と車でデートする時に自分のお気に入りの曲を集めたカセットテープを若気の至りで作ってしまうわけです。

しかも洋楽とかを全く聴かない女の子に対して、コアな曲ばかりを集めた選曲をして、全然興味を持ってもらえず、場もしらけていしまい…といった経験が現在DJをやる上での選曲に対しての基準になっているのかどうかは定かではありません(笑)。

そんなカセットテープですが、80年代、4トラックのカセットMTRが手頃な値段になっていきます。TEACやらTASCAMやらPortastudioやらの時代です。

TASCAMの歴史をチェック

カセットテープにはA面とB面があって、それぞれ左右のチャンネルがあるから合計4つ。4トラックのカセットMTRというのは、その4つのトラックに多重録音できるって仕組みなわけですね。(のちに8トラックのカセットMTRも発売されました。)

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出典:amazon

速度も倍速にすることで、高音質を狙ってました。46分のカセットテープだと、A面B面あわせて46分ってことなので片面だと23分、それを倍速にするので13分の録音ができる仕組みです。

カセットテープって、46~120分の製品が多いのですが、90分以上のものになるとテープ自体が薄くなり、のびやすかったり、切れやすくなってしまうので、90分以下のものを使っていました。

使用されているテープの素材には、ノーマル(Type I/NORMAL)、クローム/ハイポジション(Type II/CrO2)、メタル(Type IV/METAL)という種類があって、カセットMTRではハイポジが推奨されてたかな。

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出典:SONY

また、ドルビーNR(ドルビーノイズリダクションシステム)というのがありまして、これまたドルビーAからC、SRやSなどの種類があり、テープ特有のサーというヒスノイズを低減させるものもありました。

ドルビーNRは簡単に言ってしまうと高音域をあらかじめ上げて録音しておき、再生する時にちょっとした処理をして高音域を下げることでサーというヒスノイズを目立たなくさせるというものでした。いろいろ工夫して音質向上が計られていましたね。

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出典:Logopedia

録音方法に関しても工夫をし、例えば、1~3トラックまでドラムのバスドラ、スネア、トップを録音しバランスをとり、それを4トラック目に録音する。その4トラック目のドラムにあわせ、1~3トラックにベース、ギター、ヴォーカルをダビングするというピンポン録音をして、4トラックだけどそれ以上の多重録音もしていました。

現在のように、マシンパワーの許す限り無制限にトラック数を増やせる時代からすると、後戻りのきかないこの作業はなんてスリリングだったんでしょう。

最終的な出来上がりも、カセットMTRからカセットレコーダーにミックスダウンをし、マスターが完成します。そしてそれをダブルカセットデッキで量産していました。フルアナログの為、カセットMTRからマスターのカセットテープになった時点で高音域の劣化があり、そのマスターからダビングして、皆様の手元へ届けるカセットテープになる時点でまた高音域の劣化が生じます。

それを見越してあらかじめイコライザーで高音域を持ち上げるために、ドルビーNRをONで録音して、それをドルビーNRをOFFで高音域を下げずに再生することで、ダビングされた音の方が自分好みの音になっているという、正しい使い方ではないのかもしれませんが、そんなこともやっていました。

カセットテープのインデックス(ジャケット)にアルファベットをこすって転写させるインレタ(インスタントレタリング)というのもありましたね。懐かしいなぁ~。80年代っぽいですね。

さて時代は90年代、デジタルの波が押し寄せてきます。デジタルのMTRが登場するのは、90年代後半頃。90年代前半、マスターのレコーダーがDATになります。まだ皆様の手元へ届くメディアはカセットテープの時代かな。でも、カセットMTRから作られるマスターがDATになったのは大変な音質向上です。

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出典:amazon

TASCAM DA-20 mkII を使っていましたが、このAD/DA(アナログの音をデジタル信号に変換したり、デジタル信号をアナログの音に変換するところ)の音が凄い好きでした。パソコンに制作環境が移行してからも、しばらくはオーディオ・インターフェイスのAD/DAよりも好きで、コアキシャルケーブルで繫ぎ、TASCAM DA-20 mkIIのアナログインからPCへ、PCからのアウトもTASCAM DA-20 mkIIのアナログアウトを使っていました。

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出典:TASCAM

その後、TASCAM CD-RW700というCDレコーダーが登場します。そう、遂に皆様の手元へ届くメディアがCDになるのです!
これは大きなことです。すぐにパソコンでCD-Rがライティングできるようになったので、活躍期間は短かったのですが、最終音質がカセットテープからCDになるというのは当時、画期的な出来事でした。

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出典:TASCAM

そして遂にMTRもデジタルになるのです。Roland VS-880がやってきました!8トラックのハードディスクMTR、8トラックといえどバーチャルトラックが8トラックあり、つまり「今の演奏は良かったけど、もう少しいい感じにできるかも?」と思った時に、それを消さないで、いくつかのテイクから良いものを選べるようになったり、8トラックで収まらない場合はピンポン録音もするのですが、バーチャルトラックを使うと元に戻ることも可能という、4トラックのカセットMTRに比べたら段違いの自由度。

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出典:Roland

エフェクターも2系統内蔵(初期型はオプション)、このエフェクターもRolandらしい造りで好印象でした。内蔵のハードディスクは540MBだったかな。バックアップはZIPドライブに保存していたり。そうか、Roland VS-880を使っていた時にAD/DAは、TASCAM DA-20 mkIIにしていたんです。

その後、VS-880から直接CD-Rにライティングできるようになったり、16トラックのVS-1680が発売されていったりするのですが、前回書いたように、CD HATAの制作環境はパソコンベースに移行していくのです。

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出典:Roland

今回はCD HATAが触れてきた、MTRなど民生機レベルのレコーダー類に絞り込み、歴史絵巻を展開していきましたが、これまで使ってきたシンセサイザーなどのハードウェアに関しても今後紐解いていければと思っています。

そうそう、まだまだ世の中では、カセットテープで音源をリリースしている人達もいます。

エレクトニカ・ノイズバンド「Mammoth」もその一つで、メンバーの中にラジカセのカセットテープを擦ってスクラッチをする人もいます。

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そんな彼らの2ndカセットテープ発売を祝して、そばと料理とお酒を堪能しながら奇天烈音楽を奏でるというイベントが1/30(土)に行われ、CD HATAも実験音楽を鳴らしにいきます。

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そしてデジタルな街といえば秋葉原。1/31(日)にはKIHIRA NAOKIさんらと秋葉原Cypherという場所のテクノパーティーに出演します。

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そしてそして秋葉原といえばラジオですが、LAのアンダーグラウンドのコミュニティを象徴するウェブラジオ「dublab」で、1/27(水)21:00-22:00 シタール奏者の伊藤礼くんと一緒のライブが放送されます。コチラで聴けますので是非チェックしてみて下さい。

三軒茶屋space orbitでリアルタイムで演奏してる様子が放送されるのですが、会場でもお楽しみ頂けるようになっています。詳しくはコチラ

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アナログとデジタル、どちらもその良さはあり、どのイベントも面白そうなので是非遊びに来て下さいね!